風 壺井榮

 今日は、壺井榮の「風」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 関東大震災の3年後、修造という青年は、ふるさとの幼なじみである茂緒という女性を東京に呼びよせます。貧しい二人はそこから突然の新婚生活をはじめるのでした。仕事も無い、家も無い、家具も無い、ツテも無いというところから二人で貸家を探しはじめるところから物語が始まります。なんだか公共放送の朝の連続ドラマのような、朗らかな二人暮らしが描写されてゆきます。洗濯するための道具さえなくって汚れを落とすことができないくらい貧しい暮らしのなかでも自由に生きて交友を続ける男女の姿が活写される、秀逸な小説に思いました。壺井榮は生活史の細やかな描写がみごとで、当時の貧しい世帯がどのように引っ越して、どうやってお金を工面して、どう暮らしたのかを丁寧に描きだしています。
 それから、東京の新しい文人たちがどのように生きてどういう交際を繰り広げたのかが記されてゆきます。
 

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記 wikipediaにも載っている、黒色青年連盟の起こした壺井繁治襲撃事件のことも記されていました。

都会の中の孤島 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「都会の中の孤島」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 アナタハンの女王事件というのはこれは戦後すぐにたいへん話題になった事件で、現代でも映画になったりしている、戦後日本を代表する怪事件で、wikipediaにもその詳細が載っています。今回はこの問題を坂口安吾が論じつつ、戦後都市で起きる事件を記しはじめます。
 多くの人間が集まって、王女をめぐって独自のルールが造成されて諍いが起きて怪事件に発展するというのは、現代の都心でもふつうに起きるんだよ、という恐ろしいことを宣言しつつ「ミヤ子」と「グズ弁」と「右平」の3人の物語が展開します。
 

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記   孤島化というかガラパゴス化した人間関係というのはどうしておきるのか、自分にとって不都合なことはまったく見ないようにしていると、こういう事件が起きやすい、という安吾の警句が印象に残りました。ミヤ子は男の素性というのをまったく調べずに、男のお金にだけ目をつけているのでした。そのために羽振りだけが良い、怪しい男とだけ関係を深めるようになってゆき、歪な三角関係が展開します……。
 以下、ネタバレ注意なので、近日中に読み終える予定の方はご注意ください。グズ弁がスパナで武装するようにミヤ子からそそのかされて、その通りにスパナを握りしめて暮らすようになったところ、近くでスパナを使った殺人事件が起きてしまう。とうぜんいつもスパナで武装していたグズ弁が殺人犯の濡れ衣をきせられてしまった。グズ弁はいくら無罪を主張しても誰もそれを信じなかったのでした。犯人はミヤ子のヒモ男が金欲しさに殺人事件を行ったのでしたが、じっさいにはミヤ子が殺人をするようにそそのかし、さらに無罪男のグズ弁が逮捕されたという、おそろしい事件の真相が語られるのでした。

秋の瞳(25)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その25を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今までの八木重吉の簡潔な詩とは異なっていて今回の「痴寂な手」は近代独特の困苦が描かれた、重々しい詩なのでした。「しづかなる空を 白い雲を」という詩の言葉が印象に残る作品です。

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(総ページ数/約3頁 ロード時間/約3秒)
 

一河の流れ 杉山武子

 杉山武子さんのエッセイ「一河の流れ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。

(一) 砥石
(二) 月の光
(三) 島原の夏草
(四) さびた記憶
(五) 東京で考えたこと
(六) ナオさん
(七) 照る月
(八) 母の日
(九) 義父の遺した古書
 

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(総ページ数/約15頁 ロード時間/約5秒)
 

若返り薬 夢野久作

 今日は、夢野久作の「若返り薬」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回の童話は、夢野久作の独特さがよく現れている作品で、幼子向けの作品なのでちょっと荒唐無稽な場面もあるのですが、勧善懲悪が過剰になって世界が捲りかえるさまが描きだされ、悪夢の変転する様相がみごとな短編でした。こんな怪作をつくるのは夢野久作だけなのでは、と思う暗黒の童話でした。
 

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追記  恐怖を好んで描いた夢野久作は、なぜだか、童話を好んで描いたんです。読んでみるとたいてい、親と子というのがクローズアップされています。童話も、大人が幼子に読み聞かせるもので、この親子間の謎めいた関係性に、夢野久作は圧倒的なこだわりがあるようなのです。そういえば日本三大奇書の「ドグラ・マグラ」も父親によって病棟に閉じ込められた男と、それから胎児が中心的に描かれていました。

細雪(73)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その73を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 幸子はたんに姉なのですが、今までずっと、父の代わりになって、雪子と妙子という妹たちのお見合いや暮らしぶりのめんどうを見てきました。そのために、親代わりとしての心労というのを幸子が担っています。古くて裕福な家柄だった幸子ですから、雪子たちが良い婚姻に至ることをとても重大視してこの十年以上さまざまなお見合いの手配や、仕事の援助というのをやって来ました。それがほとんど全て失敗に終わって、大きな年忌法要のあつまりに妹たちを連れてゆくということになったのでした。本家や幸子が悪いから、雪子が結婚できない、というようなことを言われかねない状態、なのでした。
 それから四女の妙子(こいさん)は、結婚の約束をした板倉が亡くなってしまってガックリきていたところなのですが、その後の妙子は……浮気者の奥畑啓坊とどうも再び縁づいてきた、という事実が出てきました。
 本文こうです「妙子は板倉の事件以来奥畑を見限ってはいたものの、全然手が切れていたのではないのであるし、まして板倉がいなくなった現在、二人がたまたま連れ立って歩いていたとしても、何もそんなに驚くには当らない」
 幸子は、奥畑啓坊と復縁したかどうかをそれとなく、聞いてみます。妙子の返答としてはこうでした。「啓ちゃんは母親に死なれて始めて世間と云うものが分ったとか、勘当されたので眼が覚めたとか、いろいろ殊勝らしいことを云っているけれども、自分はそんな言葉を真に受けてはいない、ただ啓ちゃんが独りぼっちで放り出されて、誰にも相手にされないのを見ると、自分としてはそう不人情な扱いも出来ないので、附き合ってやっているのである、自分の今の啓ちゃんに対する気持は、恋愛ではなくて憐愍である」
 今回は、お勧めの章というわけではないんですが、物語の後半の要点がかなり書き記されているので、細雪の全体像をざっと総覧してみたい人なら、ちょうどいい章に、思います。次回に続きます。
 

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(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)