今日は、葉山嘉樹の「浚渫船」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
私は行李を一つ担いでいた。
その行李の中には、死んだ人間の臓腑のように、「もう役に立たない」ものが、詰っていた。
ゴム長靴の脛だけの部分、アラビアンナイトの粟粒のような活字で埋まった、表紙と本文の半分以上取れた英訳本……。
という文章から始まる、プロレタリア文学です。いったいなんの物語が始まるのか、興味を惹かれる小説でした。
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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
追記 浚渫船というのは水底の土砂を整備する船のことで、主人公たちは工事現場で働くために船に乗っていたのでした。作中の「セコンドメイト」というのは二等航海士のことです。主人公は、何の役にも立たない、大きな行李を川底に投げ捨てます。文体や構造が、デヴィットリンチの映画作品のように混沌としていて、怒りや呪いの正体が見えがたくなっているところが、一般的なプロレタリア文学とは異なる魅力を生じさせているように思いました。「死んだ人間の臓腑のよう」なものだけがつまった自身の「行李」を川底に捨て去って沈みゆき、「私」は「足の傷」を抱えたまま歩きつづけたため、「患部に夥しい充血を招い」て化膿してしまっているのでした。
「懲戒下船の手続をとられた」私は、心身共にボロボロになりながらも働くしか無い、と考え、自身が長らく乗っていた船が港を去るのを見送り、一人歩きはじめるのでした。







