浚渫船 葉山嘉樹

 今日は、葉山嘉樹の「浚渫船」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
quomark03 - 浚渫船 葉山嘉樹
  私は行李を一つ担いでいた。
 その行李の中には、死んだ人間の臓腑のように、「もう役に立たない」ものが、詰っていた。
 ゴム長靴の脛だけの部分、アラビアンナイトの粟粒のような活字で埋まった、表紙と本文の半分以上取れた英訳本……。quomark end - 浚渫船 葉山嘉樹
  
 という文章から始まる、プロレタリア文学です。いったいなんの物語が始まるのか、興味を惹かれる小説でした。

0000 - 浚渫船 葉山嘉樹

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  浚渫船というのは水底の土砂を整備する船のことで、主人公たちは工事現場で働くために船に乗っていたのでした。作中の「セコンドメイト」というのは二等航海士のことです。主人公は、何の役にも立たない、大きな行李を川底に投げ捨てます。文体や構造が、デヴィットリンチの映画作品のように混沌としていて、怒りや呪いの正体が見えがたくなっているところが、一般的なプロレタリア文学とは異なる魅力を生じさせているように思いました。「死んだ人間の臓腑のよう」なものだけがつまった自身の「行李」を川底に捨て去って沈みゆき、「私」は「足の傷」を抱えたまま歩きつづけたため、「患部に夥しい充血を招い」て化膿してしまっているのでした。
「懲戒下船の手続をとられた」私は、心身共にボロボロになりながらも働くしか無い、と考え、自身が長らく乗っていた船が港を去るのを見送り、一人歩きはじめるのでした。

 

秋の瞳(41)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その41を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 八木重吉の詩は、単純な語を積み重ねたものも多いのですが、この言葉をはじめに言ったのは、八木重吉がいちばん最初だったのでは、と思えてくるような、原初の感性を描きだす、短い詩でした。
  

0000 - 秋の瞳(41)八木重吉

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 

級長の願い 小林多喜二

 今日は、小林多喜二の「級長の願い」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 厳しい貧困にみまわれている家の、お話しでした。国費から消え去るお金を、貧困対策に使うことができれば、まったく働けなくなった「人たちをゆっくりたべさせることが出来るんだ」ということを熱心に語っている、物語でした。
 

0000 - 級長の願い 小林多喜二

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  侵略の被害を受けた人々はいったいどうしたら良いのか、考えさせられる短編小説でした。「戦争が長くなればなるほどかゝりも多くなるし、みんながモット〳〵たべられなく」なるという小林多喜二の文章が印象に残りました。

賢者の贈り物 オー・ヘンリー

 今日は、オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはオー・ヘンリーの代表的な短編です。デラとジム青年という2人の男女が、貧しいながらもクリスマスに良い贈り物をしようと、特別な思いを抱きあい、不思議な事態に至る、ほんの1日だけを描きだした、聖夜の物語でした。

0000 - 賢者の贈り物 オー・ヘンリー

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約12頁 ロード時間/約3秒)
 
追記  近日中に本作を読み終える予定の方は、先に本文を読むことをお勧めします。ジムにすてきな贈り物をしたいのにほとんどまったくお金を持っていないデラは、自身の美しい髪の毛を売ってしまって、なんだか無作法に切られてしまった髪型のせいで哀れな姿になってしまいます。そのうえジムは、彼女の髪にあう、すてきな櫛を買っていたのでした。行き違いと貧しさからくる苦労はあるのですが、二人はかけがえのない心温まる時間を過ごすのでした。愚かな失敗はあっても、なんだか、よく分からないけど人間的な思いを贈りあう、そんな二人の、若い夫婦の物語なのでした。思いやりか愛情さえあれば、失敗は克服できるのだ、ということを感じさせるクリスマスイブの物語でした。本文の終わりのところで、この物語の顛末として「二人は愚かなことに、家の最もすばらしい宝物を互いのために台無しにしてしまったのです」と記載しているのですが、そのすぐあとにこの二人こそが賢者なのだと書くのでした。「世界中のどこであっても、このような人たちが最高の賢者なのです。」そうしてその賢さの正体については、とくに明言していないところがなんだか、すてきな文学作品なのではと思う短編でした。

細雪(89)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その89を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 妙子はついに退院をして、幸子の家に出入りできるようになりました。
 シュトルツ一家はヒトラーの居るドイツで酷い戦争に加担しはじめている可能性があって、ロンドンの郊外に居るロシア人カタリナ婦人は、せっかく富豪と結婚できて大邸宅に暮らせるようになったのに、大空襲に曝される可能性がある、という噂を聞く蒔岡一家なのでした。
 ナチスの加害性にのみこまれた人々に対する観察として「祖国の輝かしい戦果に酔うて一時の家庭の寂寥せきりょうなどは意に介していないでもあろうか」ということを記しています。谷崎は戦時中に、源氏物語の新訳と「細雪」のこの2つのみを中心的に創作していました。文化的価値があり、特別高等警察からの悪影響を受けない方針が「家と寂寥について考える」ということだったのではと思いました。
 谷崎文学は娯楽作品としても一級のものだと思うんですが、細雪ではとくに日本を観光するところが雅に描きだされるのが魅力だと思います。今回も、芦ノ湖や富士山や、あるいは奈良のホテルについて記していました。ほぼ一世紀前の世界なので、南京虫の騒動や、もろすぎるガラス製食器や電球が、ちょっとした震動で勝手に割れてゆく描写など、今ではめったにお目にかかれないことが起きるのも、なんだか読んでいて楽しめるところではありました。
 強いようで弱い、人間のありさまがさまざまに書きあらわされる、細雪後半の物語描写なのでした。
 

0000 - 細雪(89)谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 

書道と茶道 北大路魯山人

 今日は、北大路魯山人の「書道と茶道」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 陶芸と料理を極めた魯山人が、茶人のことを論じています。抹茶を入れる技術のことを「点茶」と言うのですが、茶道はもっと広く礼法や茶室など全体をかまえるところまでやっている、という話しから、宗和の号で知られる金森重近や、尾形光琳の落款について論じていました。
 尾形光琳の「燕子花図」の絵画の右下部分に「法橋光琳」という四文字の落款が入っているのですが、この文字の入れかたの美的なところを論じています。魯山人や多くの茶人は、こういう国宝になるような風雅な仕事を理想としていたのでは、と思いました。
 魯山人は、どうも上手く創作が出来ていない人の特徴を捉えていて「技巧で飾る」ことになってしまっていて「実質以上になんかうまく見せるようなふうの癖が誰にでもついて」しまっているのが良くない、という指摘でした。尾形光琳の絵や文字は、そういう迷走から抜けだしているのだ、というように思いました。
 

0000 - 書道と茶道 北大路魯山人

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記 今回、論じられていた「法橋光琳」という文字に関しては、じつは「法橋」はのちの時代の誰かが書き加えた可能性があるそうです……。