秋の瞳(42)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その42を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
「草に すわる」という詩がなんだか好きになる作品でした。
  

0000 - 秋の瞳(42)八木重吉

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追記  宮沢賢治の手帳でも、賢治は同じ言葉を繰り返すときに、句読点や空白に変化を持たせることがあったんですが、八木重吉も、同じ言葉を何度も使うときに、そこで少しだけ変化を作りだすのが印象に残りました。いつか八木重吉の生原稿も、自分でじっさいに見てみたいなあと思いました。

細雪(90)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その90を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 物語の終盤に関する内容を書いていますので、こんご細雪の全巻を通読する予定がある方は、本文の第一章から読んで、以下の文章は読後に読むことをお薦めします。
 自由闊達な妙子には、これまでいろんな不幸が襲いかかってきて、啓坊の悪影響もあって、妙子はほとんど死にかけてしまったわけなのですが、ついにいろいろなところが快復して、やっと第一章のころの妙子の魅力が復活してきたのでした。
 当時の時代の不幸が襲いかかる小説なんだろうと思っていたのですが、ここに来てだんだん良い展開になりつつあって、いよいよ終盤に近づいてきたなと思って読んでいます。作家は既に敗戦後に到達しているのですが、作中の時代ではまだ戦争が激化する場面ですので、不穏な気配はいろいろあるのでした。啓坊の渡航計画もこの後の5年間の歴史を思うとずいぶん不味い内容なのでした。
 それから妙子が、不倫と窃盗をやっていた恋人啓坊に対して、どのように思っているのか、そのことが明確に書き記されていて、ちょっと驚く内容なのでした。
 3女の雪子が、ふだんはまったくものを言わない人柄であるのに、4女の妙子に対しては、しっかり大事なことを話すところも印象に残りました。
 人生の岐路について、いよいよ真剣に話しあわねばならず、やむを得ぬ姉妹喧嘩が起きてしまって、妙子が泣いてしまう場面もありました。本文こうでした。
quomark03 - 細雪(90)谷崎潤一郎
  妙子の眼にはいつの間にか涙が潸然さんぜんと浮かんでいた。それでも妙子は、相変らず無表情な顔つきをして、頬を流れる涙を意識していないかの如くであったが、やがて、突然立ち上ると、バタン! と、部屋じゅうが震動するほど荒々しくドーアを締めて廊下へ出て行った。quomark end - 細雪(90)谷崎潤一郎
 
 あと11回でこの長編文学は完結します。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
  
追記  妙子が不幸になった原因について案じている雪子と幸子なのでした。「自分達にも一半の責任があることを思い、出来るだけ温かい愛情を以て、この変り種の妹の心を和げるように」という記載があって、姉妹の妙子に対する心情描写が印象に残る章でした。
 

手帳より 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「手帳より」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは、宮沢賢治の手帳に書き記された文学的メモや、詩の断片を電子書籍化したものです。判読しやすい、意味が理解しやすい箇所のみを収録してみました。
 紫式部もこの名を愛用した「末摘花」に関するメモや、おそらくウィリアム・ジョージ・アストンの「文語文典」に関するメモもありました。
 

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追記 「明かりの本」ではお正月期間のため、更新を数日間ほどお休みします。再開は1月7日からです。

細雪(88)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その88を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 あと十数回でこの長編小説は完結しますので、こんご細雪の全巻を通読する予定の方は、本文の第一章から読むことをお薦めします。
 妙子こいさんは四姉妹のなかでもっとも独立心があって、姉妹の中でただ一人だけ仕事をしっかりやって稼いでいる女性で、95年前というか百年前の世界ではもっとも自由な生きかたができた現代的な女性なんだと思っていました。
 ところが、物語の本筋としては、どうもそういうわけではなかったようです。
 啓坊の婆やとしては「啓坊と云うものが純真の青年のように映る」しその連れである妙子こいさんは「不良な女で」「妙子が一箇のヴァンパイアとして映ったばかりでなく、妙子の背後にある家庭までが不健全なものに映った」
 妙子が、啓坊から金をむしり取って遊んでいる、というように見えたそうです。
 さらに問題があったのは、親密で信頼しあっているはずの、幸子と妙子のあいだで、「欺く」行為があったわけで「啓ちゃんの金などは一銭一厘もあてにしない」と言っていたのに、けっきょくは啓坊から金を拝借していたという実態が見えてきて、幸子は自分自身の過失を感じるのでした。
 妙子は元婚約者の米やんとしっかり生きてゆくための計画をして、それに向けて進歩的に働いて、自立していました。ところが婚約者が居なくなってからは、働く目的も無くなって、腐れ縁の啓坊とずるずる暮らしているうちに、親の物を盗んだ奥畑啓坊と二人で生きるようになったのでした。「奥畑の母や兄が奥畑と妙子との結婚に飽くまで反対している」という状態で、結婚も出来ないし、働くことも出来ないし、縁を切ることも出来ない、という状態になったのでした。
 それで姉の幸子としては……
「責められるべきは妙子よりも、むしろ彼女にうまく円められていた、余りと云えば世間知らずの」自分たちが悪かったのでは、というように、考えるのでした。本文こうです。
 
「みんなあたしが悪かったんやわ、………あんまりこいさんを信用し過ぎたのんが。………」
「そうかて、信用するのんが当り前やないの。………」
 雪子は幸子が泣き出したので、自分も眼をうるませながら云った。
 
 幸子の夫は「妙子の暗黒面が大体分っていた」のに、姉としては「身びいき」があって負の問題を見ないことにしていたのが、どうも「おめでたいのでなくてずるい」考えだったというように考え直したのでした。
 それでは、幸子としては、今後どうやって妙子のことを考えるのかというと、妙子を結婚させてやりたい。幸子と雪子でこの問題を、相談をするのですが、妙子の行く末を決定づける一文が以下にこう記してありました。
 
「やっぱり婆やさんの云やはるように啓坊と一緒にすることやわな、啓坊のためにも、こいさんのためにも」
「それより外に二人を救う道はないやろ思うけど。………」
 
 妙子の元婚約者だった米やんに、死ぬほど嫌がらせをしていた奥畑啓坊と、自由闊達だったはずの妙子が、結婚をするわけがないじゃないか、とずっと思って読んできていたのですが。奥畑啓坊は、生活費が足りないので親の金を盗んででも妙子といつまでも同棲しようとしていたし、伝染病で危ない状態の妙子を裏切ったりしなかったわけで、こうなってみると、二人で生きたほうが、正しい道のりなんだろうなあと、思いました。
 はじまりの妙子はもっと、ぜんぜんちがう、自由で快活な人だったのに、と思って衝撃の章でした。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 
追記  伝染病がようやく治りかけてきた妙子は残念ながら、毎年恒例の京都観光はできず、妙子ぬきで、蒔岡姉妹たちは平安神宮を見てまわったのでした。本文こうです。
quomark03 - 細雪(88)谷崎潤一郎
  今年は時局への遠慮で花見酒に浮かれる客の少いのが、花を見るにはかえって好都合で、平安神宮の紅枝垂べにしだれの美しさがこんなにしみじみとながめられたことはなく、人々が皆物静かに、衣裳いしょうなども努めて着飾らぬようにして、足音を忍ばせながら花下を徘徊はいかいする光景は、それこそほんとうに風雅な観桜の気分であった。quomark end - 細雪(88)谷崎潤一郎
 

球根 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「球根」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 寺田寅彦と言えば科学の研究が本業で、学問にかんする知的な随筆を書く作家なのだと思うのですが、今回は、純粋に小説を描いていて、20世紀後半の純文学のような静かな構成の文学作品になっていました。「堅吉の宅」に差出人不明の「小包郵便」が届くところから物語が始まります。
「何かの球根らしいものがいっぱいはいっている」堅吉には「西洋草花の球根だろうと思ったが、なんだかまるで見当がつかなかった」…………。
 

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追記  堅吉の病と欠勤と心情、それから差出人不明の小包の顛末について、事細かに描きだされてゆきます。「差出人の不明な、何物とも知れぬ球根の小包」を受け取った堅吉は、なんだか悩んでしまうのでした。おそらく手紙と小包を別々に送ってしまったのではないかと考察するのですが、これもどうもちがったようです。手紙はちっとも届かないので、謎めいた事態になってしまったのでした。
 そのあと堅吉は、この球根についていろいろ調べてみるのですが、これがどうもフリージアの球根だということが判明した。差出人もほぼつきとめることができた。問題は解決したように思えるのですけれども、そのあとに、なぜこれを無言で送りとどけたのかが、分からなくなってきて、その解明というのはもはや不可能であることが分かるのでした。

 
追記2 自身が所属する軍部の謎について直接書けないがために文学作品をあまたに記した森鴎外と、科学の謎を追ううちに、科学の領域の外の随筆文学に大いなる関心を抱いた寺田寅彦には、作品の構成に共通項があるのでは、と思いました。
 

細雪(87)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その87を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 あと十数回でこの長編小説は完結しますので、こんご細雪の全巻を通読する予定の方は、本文の第一章から読むことをお薦めします。
 鶴子と幸子が、妹の妙子こいさんを案じ、良かれと思って、「妙子と啓坊」という不穏な関係から遠ざけるためにやったことが、逆に妙子と啓坊を追いつめてしまってかえってこの2人が寄り添って生きるしかなくなってしまったようです。その実態が、「婆や」たちによって語られるのでした。
 妙子は、元婚約者の米やんを経済的にもしっかり支えるために、裁縫と人形作りを学んでこれを仕事にしたのですが、鶴子が古い考え方でこれを辞めさせるように動き、さらに1930年代後半の時世が、女性の独立心を阻むところもあって、妙子はフラフラしているだけの日々になって、恋人も病で失ってしまい、親の金だけ持っている啓坊と深く関わるようになってしまいました。さらに啓坊はもっと妙子を遊ばせるための金が欲しくて実家の大切なものを盗み出して勘当されてしまい、外部に外部に追いやられてブラブラしている状態の2人が、共に暮らすようになってしまっていたのでした。
 放蕩をさんざんやってしまったのも、妙子の元婚約者にさんざん嫌がらせをしたのも、実家の親のものを盗んだのも、すべて妙子こいさんにたいして「今も昔に変らない純真な感情を持っている」からこそやってしまったことなんだと啓坊の「婆や」は力説したのでした。次回に続きます。
 

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「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)