今日は、寺田寅彦の「球根」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
寺田寅彦と言えば科学の研究が本業で、学問にかんする知的な随筆を書く作家なのだと思うのですが、今回は、純粋に小説を描いていて、20世紀後半の純文学のような静かな構成の文学作品になっていました。「堅吉の宅」に差出人不明の「小包郵便」が届くところから物語が始まります。
「何かの球根らしいものがいっぱいはいっている」堅吉には「西洋草花の球根だろうと思ったが、なんだかまるで見当がつかなかった」…………。
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追記 堅吉の病と欠勤と心情、それから差出人不明の小包の顛末について、事細かに描きだされてゆきます。「差出人の不明な、何物とも知れぬ球根の小包」を受け取った堅吉は、なんだか悩んでしまうのでした。おそらく手紙と小包を別々に送ってしまったのではないかと考察するのですが、これもどうもちがったようです。手紙はちっとも届かないので、謎めいた事態になってしまったのでした。
そのあと堅吉は、この球根についていろいろ調べてみるのですが、これがどうもフリージアの球根だということが判明した。差出人もほぼつきとめることができた。問題は解決したように思えるのですけれども、そのあとに、なぜこれを無言で送りとどけたのかが、分からなくなってきて、その解明というのはもはや不可能であることが分かるのでした。
追記2 自身が所属する軍部の謎について直接書けないがために文学作品をあまたに記した森鴎外と、科学の謎を追ううちに、科学の領域の外の随筆文学に大いなる関心を抱いた寺田寅彦には、作品の構成に共通項があるのでは、と思いました。