人間否定か社会肯定か 小川未明

 今日は、小川未明の「人間否定か社会肯定か」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 小川未明は児童文学の中に社会批評性をとりいれた特別な作家だと思うんですが、今回は完全に大人向けの評論を記していました。本文こうです。
quomark03 - 人間否定か社会肯定か 小川未明
 人間は、希望と光明を持てばこそ、はじめて、幾多の辛酸を凌いでも、前へ、前へと進んで来たのである。人間が、年若くして、人生を美しいと思った。その信念には、間違いがない筈であった。自然は美しく、大空はかくの如く自由であると考えた。quomark end - 人間否定か社会肯定か 小川未明
 
 現代社会や現代思想と比較するとどうも古めかしいところがあるのですが、氏の作品と共通項のある評論に思いました。
 

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追記  小川未明は「人間性」を選択するか「社会性」を選択するかという二者択一をせまっているわけではありませんでした。人間的なことと社会的なことが対立してしまう状況を例にだし、どちらの必要性も説いている批評を展開していました。「社会が、人間を悪くするのであったら、いかにしてそれを改めなければならぬかについて考えなければならない。」という小川未明の指摘が印象に残る作品でした。

ジョン・ブル ワシントン・アーヴィング

 今日は、ワシントン・アーヴィングの「ジョン・ブル」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ジョンブルというのは典型的イギリス人あるいは、古い英国の国家像を擬人化したものなんだそうです。
 そのジョンブルの滑稽さや、ジョンブルの老いたる生きざまのことを描きだした短編です。ジョンブルは……「外へ出て殿様ぶるのが少々好きだ。重い財布をひっぱり出して、拳闘の試合や、競馬や、闘鶏に金をふんだんにまきちらし」ているような男なのです。これが典型的なジョンブルの姿なんだそうです。本文こうです。
quomark03 - ジョン・ブル ワシントン・アーヴィング
 さまざまな奇妙な気性や頑固な偏見をもっているにもかかわらず、彼は心の清らかな老人である。彼は自分で思うほどすばらしく立派な男ではないかもしれないが、彼は近所の人が考えるよりは少くとも二倍ほど善良である。quomark end - ジョン・ブル ワシントン・アーヴィング

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追記  作者アーヴィングの考える、ジョンブルに対する主張はこうでした。「わたしがひたすらに望むのは、ジョンが現在の苦悩を経て、未来にはもっと慎重にしなければならないと知ることであり、彼が他人のことで心を悩ますのをやめることであり、棍棒の力で、近所の人の福利や、世界の平和と幸福とを促進しようなどという無益なこころみをやめることである。(略)昔栄えていた頃の楽しい情景を取りもどして父祖伝来の地で、すえながく、元気で、立派で、愉快な老年をたのしんでもらいたいのだ。」
 

真夏の夜の夢 宮本百合子

 今日は、宮本百合子の「真夏の夜の夢」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは戦後すぐのころ、シェイクスピアの「夏の夜の夢」の日本版の劇の内容について論じつつ、「日本での人間性の解放を具体的に考えるとき」には、当時の日本が「資本主義の悪徳にわずらわされてい」てさらに「貧寒な条件におかれているだけ、一方に世界の帝国主義的な段階の特質をつよくあらわして来た」という「この二重の影を二重に、同時的にうちひらいてゆく」よう、これらの暗い問題を、減少させる思想が必要である、ということを書いていました。
 

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追記  「兇悪な日本の軍事的暴力のために」日本に住む「若い人々」は戦争の只中に置かれ「あれほどまでに愚弄された」のだというように書いていました。

新郎 太宰治

 今日は、太宰治の「新郎」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 太宰治は自身を主人公にして短編を描くことが多い作家だと思うのですが、今回は作中に自己の名である「太宰治」と明記しているのですが、その太宰治は、なぜだか学校の先生をしているのでした。現実の太宰治は先生をしていなくて、それから新聞社への就職に失敗をして、大学も授業に出ておらず卒業に失敗しており、戦中戦後すぐの当時の原稿料は少なかった、というように思います。作中で、家族と仲睦まじく食事をする場面で、食料不足におちいっている世相が描きだされます。
太宰治はこう書いていました。「まずしいものを褒めるのは、いい気持だ。」
 存在しない学校に通って、居ないはずの教え子と話しあい、「古風な馬車」を三鷹駅で見かけてこれに乗って、遠い銀座までゆくことを夢想する、太宰治の短編小説でした。
 

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秋の瞳(19)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その19を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これまで八木重吉は「さみしさ」のことをおもに詩集に描いてきたと思います。今回はそれとは異なる詩でした。明治大正と昭和初期は、屋内の冷気がすごかった、最後の時代なんだというように思うんですが、その自然界に蝕まれる身近なところを描きだしている詩でした。
 

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パウロの混乱 太宰治

 今日は、太宰治の「パウロの混乱」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 太宰治といえば、イスカリオテのユダがどのようにキリストを裏切ったのか、その時の心情とはどういうものだったのかを描いた小説「駈込み訴え」が有名なのですが、今回はパウロとはどういう人間だったのか、文学的な物語読解を試みています。太宰は、自分の弱さを重んじているパウロを描きだします。苦難のなかでこそキリストの教えにかんする理解を深められるのだと考えたパウロに共感し、この箇所を饒舌な筆致で書き記していました。
 

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追記 太宰の聖書読解と、聖書の原典とをちょっと比較してみました。作中に、パウロが群衆に謝罪をして混乱に至ったという箇所があるのですが、ここがどうも太宰独自の空想的な脚色であるようです。本文のパウロに関するこの記載の部分……「おしまいには、群集に、ごめんなさい、ごめんなさいと、あやまっている。まるで、滅茶苦茶である。このコリント後書は、神学者たちにとって、最も難解なものとせられている様であるが、私たちには、何だか、一ばんよくわかるような気がする。高揚と卑屈の、あの美しい混乱である」
 じっさいの聖書のパウロは、群衆に「ごめんなさい」と謝る箇所は存在していませんでした。ここが太宰治の物語創作におけるの空想的描写に、なっていました。