細雪(91)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その91を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 物語の終盤に関する内容を書いていますので、こんご細雪の全巻を通読する予定がある方は、本文の第一章から読むことをお薦めします。
 妙子こいさんと雪子のちょっとした諍いはすぐに終わって一瞬で仲直りしました。雪子の縁談を何度も取り持ってくれた井谷さんは、美容院を他人にゆずって東京で美容院を開く予定で、これからアメリカで修業をしてくるという計画をはじめたのでした。もうすぐにでも東京にゆく、というタイミングで、さいごの縁談の提案をするのでした。その相手は、藤原氏の血を引く名門の出であり、公家の華族で御牧実みまきみのるという優雅な男なんです。御牧は、パリで絵画を学んだりフランス料理の修業をしたり、米国の大学で航空学を学んだり、建築の仕事もしました。ただし、父親の財産を食いつぶしていて、儲けていないのにたいへんな浪費家で大酒ものみ、定職が無いうえ、今は道楽しかやっていないところが不安要素なのでした。
 雪子は縁談で誰かと結ばれるはず、と思って読んでいるのですが、これが最後の縁談相手のはずなので、じゃあこの人と結婚するのか、どうなのか、もはやまったく分からないなあと思って読んでいるところです。
  

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(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
  
追記 米国の大学で航空学を学んだのに、その技術は全く活かさなかった、というのはなんだか戦中戦後を貫いて書かれた長編小説の中で、妙に印象に残る描写に、思いました。

二黒の巳 平出修

 今日は、平出修の「二黒の巳」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 品川の花街にある「桔梗」というお茶屋で働く「お糸」さんという女性と芸者たちと、「私」や「種田君」や友人との交流を描きだした、明治末期の小説です。
 大きな病にかかったり、なんども離縁したり貧乏になったりで先行きの見えない、お茶屋あそびにかかわる男女の様相が描きだされます。
 お糸さんと藤浪君の2人は同い年で、なにか縁がありそうなのですが、どうも現実には平行線なままの二人の、人生の岐路にたった真面目な話が、なんだか印象に残りました。
 

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比較科学論 中谷宇吉郎

 今日は、中谷宇吉郎の「比較科学論」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 中谷宇吉郎が百年前の近代科学のありさまを解説しています。警視庁の仕事のような「警視庁型」と、アマゾン川の奥底で大自然を探索をするような果てしのない「アマゾン型」の2種がある、とまず中谷宇吉郎氏は指摘します。よい研究はこの2種が融合したようなものだと書きます。
 警視庁型は、組織的に統率をとって計画的に問題を追いつめることが出来て、委託したりもできる。机上である程度、予定が立てられる。いっぽうでアマゾン型の領域では、結果がまったく出ないことも当然ある。太平洋の深海の泥を調査して、流星がどれほど地球に降り注いだかを研究したりする。
 「ニュートンの発見」から「実際に人工衛星をつくる」までを解説したところが、なんだかかっこいい文章でした。

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追記  また、哲学という学問と、科学の関係性についても解説していました。現代の科学であっても、おそらく古典哲学の名著から学ぶことはあるのでは、と思いました。戦後の随筆ですので、原爆の研究についての科学的な解説もありました。現代の科学や最新技術やAIについて、自分で調べてみてもさっぱり分からなかったりするんですけど、80年前の科学者のエッセーを読んでみると、科学の発展について、分かりやすいところがあるように思いました。

秋の瞳(42)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その42を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
「草に すわる」という詩がなんだか好きになる作品でした。
  

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  宮沢賢治の手帳でも、賢治は同じ言葉を繰り返すときに、句読点や空白に変化を持たせることがあったんですが、八木重吉も、同じ言葉を何度も使うときに、そこで少しだけ変化を作りだすのが印象に残りました。いつか八木重吉の生原稿も、自分でじっさいに見てみたいなあと思いました。

道 石川啄木

 今日は、石川啄木の「道」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 啄木と言えば詩人であり歌人なので、小説をあまり書かないんだろうと思っていたのですが、これは石川啄木の中編小説で、読んでみると、なにかドキュメンタリー映像のような、作品でした。5人の教師の、山道の移動と、隣村での教育の会議と、その帰り道を描いた作品でした。間延びした小説なのですが、近代文学や明治末期の教育界の難点や閉塞感を、物語全体で描きだしていて、追体験させられる作品でした。
    

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追記  三十年間も教師をやって独身のままの男性教師が、不倫の醜聞の噂を立てられて真剣に悩んでしまっている、その涙ながらの訴えを聞いてなんだか滑稽で笑ってしまっている雀部という男がどうも偽の噂をたてた犯人ではないかという疑いを持つ女教師と、主人公の多吉という教師は、老いた教師たちのことを考えつつ、長い山道を往復し、自分の人生の行く末について空想を、するのでした。

虚子君へ 夏目漱石

 今日は、夏目漱石の「虚子君へ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは俳人の高浜虚子にたいして、近代の芝居の問題点について論じている随筆です。
 漱石は、芝居の筋が「のっぺらぼう」だったり「残酷」であると感じてしまうこともあり、どうも楽しめない、と記します。「色彩などははなはだ不調和」で「厭にな」ることが多い。
 いっぽうで美しくて楽しめるところはある。服飾の色彩を楽しめたり「体操術」や、役作りや演技が良いと思うところもある……。
 

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追記  夏目漱石は長い間ずっと先生をしていたので、小説でも随筆でも手紙でも、なにか先生の要素というのが色濃いように思います。近代でも現代でも漱石が読まれる主因のひとつに、この「先生の言っていることを聞いてみたい」という要素があるのでは、と思いました。学校や大学を卒業すると、もう先生というのは見当たらないところで、漱石がそこに居るのでよく読まれた、という構造があるのでは、と思いました。