飢ゑ 原民喜

 今日は、原民喜の「飢ゑ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはとても静かな事態を描きだした純文学で、原爆以前の原民喜作品の文学性とも通底しているものに思います。被爆後の広島を歩きまわる「僕」の姿が描き出されています。

 路を歩いてゐても、何か郷愁に似たとてもいい匂ひがするので、あれは何だつたかしらと、暫く戸迷ひながら、さうだ、パンを焼いてゐる匂ひだな、世の中にはパンを焼いて食べる幸福な家庭だつてあるのかと、吃驚さされる。
  
 作中にこういった描写があります。「この家におしかかつて来る飢ゑのくるめきは、次第にもうどうにもならなくなつてゐた。生暖かい白つぽい細雨が毒々しい樹木の緑を濡らし、湿気は飢ゑとともに到る処に匐い廻つた。そして、煙が、家の中で薪や紙を焚くので、煙はいつまでも亡霊のやうにあちこちに籠つてゐた。」サルトルの「嘔吐」やノーベル文学賞作品を連想させるような、すごい小説でした。調べてみると、戦後すぐの広島では戦災孤児の餓死者がもっとも多かった時期であった、という記録がありました。ほんのすこしではあっても、支える人がいる、ということの重要性を思わせられる物語に思いました。
  

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
原民喜『夏の花』を全文読む。
 
追記  作中に、敗戦後の広島の、さまざまな人の姿が描き出されていました。原爆の惨禍を描いた中沢啓治さんのすぐ近くを歩いていた原民喜氏、という現実の風景を空想しました。
 

「見ること」の意味 中井正一

 今日は、 中井正一の『「見ること」の意味』を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 見ることは、眼の水晶体が、網膜に像を結像させること、すなわち射影することである、と書いていました。見ることによってなにかを「うつす」
「見ること」には2つの可能性がひらいている。それは「単なる映る世界として」見ることと、「一瞬一瞬移りゆくその移行を切断によって常につないでいくというふうに」動力学的に見る。
 古代ギリシャでは美術が、模倣そのものだったのに対して、近代芸術においては、「移動的等値性があって、移行的な力学性」が生じた。芸術的な見かた、というものがある。
 観劇にでかけるとき「母親は母親の威厳やとりすましを失って、一箇の人間になっている。博士はうっかり博士を忘れているし、軍人は劔を忘れ、商人は算盤を忘れ、僧侶は宗教を忘れて」……演劇や映画を、見る。
『人間が、未来から、ソッと汚濁に満ちたこの現実を鍵穴から覗いているような、「見る存在」になっている』……これが見ることの、おもしろさなんだというように、記していました。
 

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)

追記  現在……ボタン1回押すだけで動く自動音声朗読機能を実装するために新案を実験中で、いつもの更新がやや、とどこおっております。

中原中也全詩集(1)

 今日は、「中原中也全詩集」その1を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回から、中原中也全詩集を100回ほどかけて掲載してゆきたいと思います。なるべく全ての詩を収録する予定ですが、まずは有名な詩集の順番通りに読んでゆこうかと思います。
 

 トタンがセンベイ食べて
 春の日の夕暮は穏かです
 アンダースローされた灰が蒼ざめて
 春の日の夕暮は静かです
 

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 

季節のない街 山本周五郎

 今日は、山本周五郎の「季節のない街」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 僕は「季節のない街」を5年前に全文、読んでみたんですけど、日本のいくつもの映画で印象深かったものが、山本周五郎の小説の中にあまたに記されていました。山本周五郎は時代小説を主に書いたと思うんですが、今回のは戦後すぐを描きだしたものです。現代社会と共通項が多いように思います。この山本周五郎の小説はちょうど、近代と現代との……中間が描きだされた世界のように思えました。
 じっさいはどういう事情で描かれたのか分からないのですが、この「季節のない街」は、戦争孤児のことを考えて物語を創っているところがあるように思う短編が、いくつもありました。ぼくは「肇くんと光子」という短編がいちばん楽しかったです。それから終盤「たんば老人」の「泥棒」に遭遇するエピソードが印象に残りました。
 いちばんはじめの六ちゃんが運転する幻の電車に導かれて、物語の世界に引き込まれてゆきます。戦争が終わったあとの世界が、いったいどういうものだったのかが垣間見えるように思いました。(※これは5年前に書いた紹介文です)
 

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(総ページ数/約200頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  今回から、新バージョンの電子書籍を実装してみました。縦書きページの、本文の右上に、いろんなボタンを作りました。右上の[+]ボタンから文字の大きさを自由に変更できるようにしました。また、右上の[えんぴつmenu]ボタンから、シェアボタンなども追加して、ブックマークしやすくしました。また[スポイト]ボタンから背景色を選べるようにして、本文を読みやすくしてみました。
 
 それから表紙絵をきれいに表示させることに成功しました。文末の底本の見た目と内容も、色あせた文字で美しく整形して、表紙絵の左右にひろがるイメージカラーも用意してみました。
 

※以下は雑文です。クリックで表示されます。

追記  この1ヶ月間で300回ほどの失敗と実験を繰り返して、やっと新バージョンを実装できたんですが、この電子書籍は、地下鉄に乗車中でもスマホで本を開きやすいように、たったの1クリックで装画をスキップして本文だけを表示できるように、調整しました。また高性能PCでも流麗に表示されるようにUI意匠を設計し、サイト名と表紙絵は、フェードインアニメーションで表示できるように工夫しました。1000ページを超える長大な本も表示可能で、タブレットやノートパソコンなどでも快適に読書できるようになりました。サイト名の墨文字はこれはプロの書家のかたに5年前に依頼して書いてもらったもので、かなりのお気に入りの文字で、5種類くらいあります。全画面写真も数十種類以上用意してみました。
 
◎ 背景色を以下から自由に選べるように改良しました。
  

淡麗 #FAF2EB
わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です

温和 #FCEDE0
わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です

枯淡 #F6E8DE
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#D2B48C
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#938981
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白雪 rgba(255, 255, 255, 1.0)
わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です

rgba(255, 255, 255, 0.2)
わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です

サンプルではどうも色が沈んでしまって見分けられないのですが、
「晴」や「白雪」などには、
文章にもオーバーレイやソフトライトといった光が降りそそいでいるため、
文字がうっすらと細くなって、読みやすくなっているのです。
モニタや光源によってはこれらは見分けられないかもしれません。

 
ブラウザのキャッシュが残っていると、もしかすると、古いバージョンで表示される可能性があります。その場合は「シークレットモード」を使うか、あるいは、新刊のほうを読んでみてください。

 今日から、数百冊の全ての本に関して、フォントサイズの変更ができるようになりました。この機能によって、拡大図書(大活字本)を完備できることになりましたので、これは視力が衰えつつある方にも、介助者の操作さえあれば、大きな文字で本が読めます。苦労してバージョンアップの実験を繰り返した甲斐はあったかなあ……と、思っています……。

不思議な船 牧野信一

 今日は、牧野信一の「不思議な船」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは……小学校中学年くらいを対象にした童話なんだと思います。牧野信一はきっと外国文化に憧憬があって、このように美しい話を描いたのでは、と思いました。黒船と出島と洋書の世界観がひとつになったような、不思議な船のことを描いた物語でした。

 

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  外国から学んでいった人たち……というすてきな童話でした。

虞美人草(6)夏目漱石

 今日は、夏目漱石の「虞美人草」その6を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この小説は、甲野君と宗近という2人の男の会話劇が中心になっているんですが、こんかいはこの妹同士のお話でした。妖艶な甲野藤尾と、宗近糸子の2人がなんだかちぐはぐな会話を続けています。
 そこに、藤尾のことがどうも好きでしょうがない小野さんが入ってくる。
 藤尾は、京都の東山にある、霞につつまれた五重の塔のことを小野さんに問うてみる。「面白いんですよ。五重の塔が面白いのよ。ねえ小野さん」
 けれども、思ったような良い答えが返ってこないので「女王」のような藤尾はちょっと不機嫌になる。「小野さんは詩のために愛のために」藤尾がのぞむような答えかたをする。間に挟まれた「糸子は心細い気がした」のですが藤尾のほうは自分が聞きたいことを聞けてちょっと気分が良くなる。「ホホホホ」と藤尾は高く笑った。この2人の妹たちはどうもソリがあわなくて、「藤尾と糸子は六畳の座敷で五指と針の先との」諍いをしていて……なんだかどうしても心が通わない。
 学問のほうでは聡明な実績をつくりあげている小野さんは、どうもこの藤尾というあぶない女性に無闇に惹かれていて、愛されてみたく、ずいぶんふらついている、ようなのでした。
 次回に続きます。
 

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(総ページ数/約15頁 ロード時間/約3秒)
 
「虞美人草」の一から十九まで、全文を読む。(原稿用紙換算584枚)
夏目漱石『夢十夜』を全文読む。   『草枕』を読む。