秋の瞳(27)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その27を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 超然としていて明るい詩をあまたに書いた八木重吉なのですが、今回の詩は近代詩の特徴である、自然界と苦悩の2つが色濃く描きだされた詩、でした。
 

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追記  伊東静雄は「わがひとに与ふる哀歌」の「帰郷者」にてこう記しています。
quomark03 - 秋の瞳(27)八木重吉
 自然は限りなく美しく永久に住民は
貧窮してゐた
(略)
かつてこの自然の中で
それと同じく美しく住民が生きたと
私は信じ得ない
ただ多くの不平と辛苦ののちに……
…………
……quomark end - 秋の瞳(27)八木重吉
この詩を連想させる、八木重吉の「丘を よぢる」という詩でした。
 

寒山拾得 森鴎外

 今日は、森鴎外の「寒山拾得」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 唐の時代の道教の道士……この神秘的な怪異を描きつつ、閭丘胤りょきゅういん がまのあたりにした、3人の奇妙なまじないを描きだします。豊干という僧は水を使ったまじないで頭痛を治癒し、みすぼらしい姿の寒山と拾得は、正体を言い当てられると、すうっと逃げ去ってしまうのでした。
 鴎外は作中で、「道」にたいして「三通り」の態度があると述べます。
一、道についてまったく無頓着な人。
二、宗教または学問の道を探究する人。
三、道を究める人を尊敬するだけで、どうも真理に暗い人。
 
 老子の「道」と、道教の道士の神秘的な「道」は、ずいぶん違いがあるんです。どうもこの2つの大きな違いのことを思索しながら鴎外がこの道教の怪異を記したのでは、と思いました。「腹の底からこみ上げて来るような笑い声を出し」て「駆け出して逃げ」てしまう老荘思想の教え、というのを空想しました。
 

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追記 今度いつか、半年後にでも、老子道徳経の現代語訳をじっくり読んでゆこうと思っています。
 

昔を今に 宮本百合子

 今日は、宮本百合子の「昔を今に」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 戦中の1940年春の食糧不足の中、自宅の側に空き地のある世帯には、十坪以内で自給自足するための、馬鈴薯の種を配給するという新聞記事が載っていたことについて、庭いじりをしながら、都市の行く末と近代家庭の世相を読み解いた、宮本百合子の掌編でした。
 

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追記 短いですけれども、名随筆という印象の作品でした。このあと8年近く、近代でもっとも飢餓が深刻だった時代が来ると思って読むと、宮本百合子の言葉が響いてくるように、思いました。宮本百合子は〔昭和一五年〕と書かずに〔一九四〇年〕と書いたところにさえ、なにか無意味に感心してしまう作品でした。あるいは当時の編者が末尾に西暦を入れたのかもしれないとか、なんだかいろいろ空想してしまう随筆でした。
 

細雪(75)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その75を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は……1930年代後半から、自由と自立を実現したはずだった妙子が、不幸つづきのはてに、犯罪まがいの窃盗で家の名を汚した奥畑啓坊とつるんでいるということで、ほとんど勘当されかけているという場面でした。
 ついに東京の鶴子のほうから厳しい意見が来てしまいます。妙子を東京に避難させて啓坊との関わりを断たせるか、あるいは関西の家を追い出すか、という判断をしなさい、という長い手紙を送ってきたのでした。鶴子はほとんど物語に出てこなかったのですが、古い家柄を重視する、厳しい姉なのでありました。とくに鶴子の夫が厳格なんです。
 それで妙子は、関西ではんぶん一人暮らしの日々を始めた、という展開でした。
 犯罪まがいの悪さをして家から追い出された男と、つるんでいるのはどうも良くないとは思うんですが、ついこのあいだ婚約者が亡くなった妙子にたいして非情すぎないだろうかと思う、展開でした。実家への謝罪さえ終わっていないうちからもう、婚約者を失った妙子に絡んでいるというのが、両家の親戚縁者にどうも知れわたってしまいました。もう、物語の終盤がせまっている段階です。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
  

戯れ アントン・チェーホフ

 今日は、アントン・チェーホフの「たわむれ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 梶井基次郎はこのチェーホフの「悪戯たわむれ」を、以下のような文体で一部翻訳しています。
 
「乗せてあげよう」
少年が少女をそりに誘う。二人は汗を出して長い傾斜をいてあがった。そこから滑り降りるのだ。――橇はだんだん速力を増す。首巻がハタハタはためきはじめる。風がビュビュと耳を過ぎる。
「ぼくはおまえを愛している」
ふと少女はそんなささやきを風のなかに聞いた。胸がドキドキした。しかし速力が緩み、風のうなりが消え、なだらかに橇が止まる頃には、それが空耳だったという疑惑が立める。
「どうだったい」
晴ばれとした少年の顔からは、彼女はいずれとも決めかねた。
「もう一度」
少女は確かめたいばかりに、また汗を流して傾斜をのぼる。――首巻がはためき出した。ビュビュ、風が唸って過ぎた。胸がドキドキする。
「ぼくはおまえを愛している」
少女は溜息をついた。
「どうだったい」
「もう一度! もう一度よ」と少女は悲しい声を出した。今度こそ。今度こそ。
(梶井基次郎「雪後」より)
 
 この全文を、新たな訳文で電子書籍化してみました。チェーホフの名作の中でも、とくに児童文学として優れた作品である、というように思います。二人の子どもたちのみずみずしい情感が、チェーホフによって描きだされています。
 

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追記 これは、インターネットでは日本語で無料公開されていなかったチェーホフの名作文学です。ロシア語の原文を調べてみて、deepseekに翻訳してもらい、人間の眼で確認して文体を調整した、0円配信としては本邦初公開の名作なんです。ソリで遊ぶ少年と少女の美しい物語で、終盤の、老いた主人公のまなざしが印象に残る文学作品です。

雪後 梶井基次郎

 今日は、梶井基次郎の「雪後」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはチェーホフの、雪に戯れる二人の少年少女を描いた名作「戯れ」へのオマージュ作品になっています。
 梶井基次郎と言えば青年の個人的な憂鬱を幻想的に描きだした、独り者の世界観をみごとな文学に昇華した作品が代表作だと思うのですが、今回のは若くして大学での「地味な研究の生活に入」り、そうそうに婚姻した「行一」という青年の、静かな日々を記した作品でした。
 作中で梶井基次郎は、チェーホフの名作「戯れ」をかなり長く引用してゆきます。少年と少女の雪の「戯れ」の後の世界を、梶井基次郎が、原作と異なる展開で書いてみたのでは、というように思いました。
 次回、二日後にこのチェーホフの「戯れ」を電子書籍化してみたので読んでみようと思います。
 

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