今日は、和辻哲郎の「自然を深めよ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
和辻哲郎といえば、仏教や神道の思想を研究した人かと思っていたのですが、こんかいは、日本の自然主義文学に関する問題を論じています。和辻氏によれば「自然主義は殻の固くなった理想を打ち砕くことに成功した。しかし代わりに与えられたものは、きわめて常識的な平俗な」ものだけを見出したのであって「昔から数知れぬ人々が腹のなかで心得ていた」ものを目の前で見せただけだった。
では、芸術に於ける自然とは、いったいどういうものなのかを、ここから論じはじめています。
「生」と同義にさえ解せられる所の「ロダンが好んで用うる所の」「人生自然全体を包括」した「我々の感覚に訴えるすべての要素を含むとともに、またその奥に活躍している」つまり生命そのものを描きだす芸術というのが、自然主義の魅力である。
近代日本に於ける自然主義文学の批判を行いつつ、自然の魅力を描き出せた芸術家としてロダンを複数回あげていました。では物語の描写で、どのように自然の魅力を描き出せるのかというと……。和辻哲郎は、とにかくドストエフスキーがこの近代作家たちから遠く隔たって抜きんでていて、ドストエフスキーこそが人間の自然を最も深く見極めた希有な作家であり、「人間の自然」を「異様な圧力を与え」つつ示しきったのが、「カラマーゾフの兄弟」をはじめとした氏の文学であると論じていました。ドストエフスキーの「母なる湿潤の大地」の描写を彷彿とさせる評論でした。
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