孤独者の愛 豊島与志雄

 今日は、豊島与志雄の「孤独者の愛」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 現代人ならこうもあからさまには書かないだろうという、野暮ったいところのある小説なのですが、それがかえって楽に読める恋愛小説でした。
 男嫌いな女と、女嫌いな男の二人が恋愛をはじめる話しで、結婚したいということで話しあったり、新しいところで暮らそうとし、けんかをしたり、分かれそうになったり、笑いあったり、追いかけあったりする、1950年の、物語なのでした。
 

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目羅博士の不思議な犯罪 江戸川乱歩

 今日は、江戸川乱歩の「目羅博士の不思議な犯罪」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 百年前の世界ですが、日の暮れて誰も居なくなった上野の動物園で「私」は奇妙な男に出会います。
 犬の哲学者ディオゲネスを連想させるような放浪する哲学者風の変人男と出会った「私」は、猿をからかう「青年」の、奇妙な話しに引き込まれ、猿と男の異様な狂態をまのあたりにして……。
 

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追記  ここからは完全にネタバレとなりますので、近日中に読み終える予定の方は、先に本文から読むことをお勧めします。
 事件の真相としては、猿のモノマネの習性を使いこなして、狂気の猿真似をさせてふつうの人間を3人も自滅させるという事件が起き、この謎を解明するために、犯罪予告を行った目羅博士を調べた「青年」は、瓜二つのビルに映し出される、月夜の鏡像の幻によって、異常事態を引きおこすというトリックを暴くのでした。模倣をする人間の本能と月夜のビルに映し出される偽りの鏡像を使った、殺人事件が、月夜の晩にのみ連続して起きていたのでした。実際にこれを行っても犯罪は現出しないはずで、江戸川乱歩は意図的に、現実には使えない方法を考えついたのではないかというように思う、終盤の展開でした。この奇態な犯罪を行った目羅博士は同じトリックによって哀れにも滅びてゆくのでした……。

球根 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「球根」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 寺田寅彦と言えば科学の研究が本業で、学問にかんする知的な随筆を書く作家なのだと思うのですが、今回は、純粋に小説を描いていて、20世紀後半の純文学のような静かな構成の文学作品になっていました。「堅吉の宅」に差出人不明の「小包郵便」が届くところから物語が始まります。
「何かの球根らしいものがいっぱいはいっている」堅吉には「西洋草花の球根だろうと思ったが、なんだかまるで見当がつかなかった」…………。
 

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追記  堅吉の病と欠勤と心情、それから差出人不明の小包の顛末について、事細かに描きだされてゆきます。「差出人の不明な、何物とも知れぬ球根の小包」を受け取った堅吉は、なんだか悩んでしまうのでした。おそらく手紙と小包を別々に送ってしまったのではないかと考察するのですが、これもどうもちがったようです。手紙はちっとも届かないので、謎めいた事態になってしまったのでした。
 そのあと堅吉は、この球根についていろいろ調べてみるのですが、これがどうもフリージアの球根だということが判明した。差出人もほぼつきとめることができた。問題は解決したように思えるのですけれども、そのあとに、なぜこれを無言で送りとどけたのかが、分からなくなってきて、その解明というのはもはや不可能であることが分かるのでした。

 
追記2 自身が所属する軍部の謎について直接書けないがために文学作品をあまたに記した森鴎外と、科学の謎を追ううちに、科学の領域の外の随筆文学に大いなる関心を抱いた寺田寅彦には、作品の構成に共通項があるのでは、と思いました。
 

おせい 葛西善藏

 今日は、葛西善藏の「おせい」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 近代文学は放蕩のかぎりを尽くす中毒者たちが描きだす、不良文学である、という話をむかし聞いて、じっさいに近代作品を読んでみるようになって、あまりそういうものを発見できなかったのですが、これこそまさに、「貧乏、病氣」に塗れ「癇癪、怒罵」を愛人に「浴びせかけ」る「慘めな」「エゴイスト」の小説だ、と思える近代小説らしい鬱屈した作品でした。
 

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追記  おせいという女性を気に入った「私」は妻があるのにこの若い女性と酒浸りの日々をすごして、不摂生が原因で病気になっては看病してもらい、おせいから借金をし続け、仕事も子育て資金もまったく無いのに、おせいに無茶苦茶なことを述べていて……そのうえ「私」はチェーホフの主人公になったような気分で夢うつつなので、ありました。
 

牛鍋 森鴎外

 今日は、森鴎外の「牛鍋」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 森鴎外の物語は、歴史の記録そのものを目的にしていたり、文体が難解で難読書になっていることが多いのですが、今回の話しはすんなり最後まで読める作品でした……が、やはり読み終えてみて、これはいったいなにを書こうとしたのか分からなくて、3回くらい同じ文章を読み直してしまいました。
 明治初期の日本では、牛は食用では無かったので、これがなにか、現代で言うところの愛玩動物かそれ以上の存在であって、それを食う人間の醜悪さというのを自然界や哺乳類と比較しつつ記してありました。
 作中に「本能」という言葉が幾度か記してあってこれが印象に残ります。森鴎外は獣の争いについて念入りに描きつつ「本能は存外醜悪でない」と記すのです。森鴎外の軍医時代には、兵士たちが脚気によってあまたに倒れてしまうという惨害が起きていて、森鴎外の憂慮しているのは人間が起こす犠牲の問題で、それがこの短編にも少し記されているように思いました。
 

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追記  物語の筋としては「七つか八つ位の娘」をやむを得ずあずかって育てることになった「三十前後」の男は、意味も無く、牛鍋の牛肉を「すばしこい箸」で独占している……。「娘はおとなしく箸を持った手を引っ込めて」肉を食べさせてもらえるまで待とうとしている。「もう好い頃だと思って箸を出すと」そのたびごとに「そりゃあ煮えていねえ」と男に言われて、黙って従うしかない。「その目の中には怨も怒もない。ただ驚がある。」
どうしてこんなに奇妙な夕食なのかというと「死んだ友達の一人娘」を貧しい世相の只中にあって、いったいどうやって育てるのか、男としては方針が上手く定まっていないからなのだろうか……というように思いました。

月かげ 豊島与志雄

 今日は、豊島与志雄の「月かげ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 運や偶然を活かそうとしている人のほうが、予想外の出来事に対応しやすくなって、仕事や人生に成功しやすい、という話しを聞いたことがあるんですが、今回の、一人でにこにこ笑っている妙な男の物語では、何かをするときに占いをよくやってしまう様子が描かれます。独特な占いに夢中になっている男の、奇態な話術に引き込まれる小説でした。本文こうです。
quomark03 - 月かげ 豊島与志雄
  世の中には、運命とか天の配剤とか、そういったものが確かにありますよ。私はそれが始終気にかかって、何かで占ってみなければいられないんです。例えば、友人を訪問する時なんか、向うから来る電車の番号をみて、奇数だったら家にいるとか、偶数だったらいないとか、そういう占いをしてみますが、それが不思議によくあたるんです。quomark end - 月かげ 豊島与志雄
 

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追記  なんだか太宰治の、愛人との逸話を思いださせるようなエピソードも立ち現れる、すこし不思議な小説でした。