今日は、佐々木邦の「合縁奇縁」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
「錦子さん」と結婚して養子になったらどうか、という提案をされた「僕」は、随明寺の寺を引き継いでお坊さんになるかどうか、妙に迷いはじめます。その家に嫁いでお坊さんになるのなら「僕」はまちがいなく東京の大学に進学して哲学を学ぶこともできる、と言われる。肝心の「錦子さん」は「僕」と結婚の話があると知ったあとに道ばたですれ違うと「真赤になって立ち止まって、丁寧にお辞儀をして行った。僕はその刹那に決心を固めた」「随明寺へ婿養子に行って、名僧智識になってやろう」と思うのですが、もう一人「僕」のことを支援してくれる「金持の松本さん」が、東大進学の学費を出してくれることになった。するとお坊さんにならずに出世できる可能性も出てきた……。
装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
ネタバレ注意なので、近日中に読み終える予定の方はご注意願います。
けっきょく「僕」は随明寺の養子になるのを断ってしまった。「井沢正覚」という幼なじみの青年がこのすぐあとに随明寺の養子になって錦子さんと婚約して大学へ進学することになった。
そのご「金持の松本さん」も亡くなってしまって「僕」の大学進学の学費も霧消してしまった。
「僕」は県庁で働きつつ学費を稼いで、帝大を目指すことになった。
尾崎という友人の妹の「町子さん」と親しくなって「僕」は魅了されるが、けっきょくはこの人とは「お寺の家系の男にはときめかない」と言われてしまって、縁が無かった。しかし亡くなった檀家の松本さんが生前に約束した、帝大への進学の支援、これを実現するために息子の松本くんが仕事をくれて、県庁の給与の数倍の月給をもらい、戦中戦後を経て、けっきょくは東京で豊かに暮らすことになった。紆余曲折があって、幼いころの大学進学の夢は無くなったけれども、仕事も家庭もなんだかうまく進んでいった。友人が計らってくれて縁談もなんとなく纏まっていった。
これまで、「僕」はお寺に関わり深い家の出身だというのがどうも縁談に亀裂を生んでいたところがあったのですが、けっきょくは、幼なじみも、雇ってくれた縁者も、縁談を持ってきてくれた男も、「僕」の婚約者も、みんなお寺の関係者だったという展開で話しが結ばれるのでした。ああなるほど、けっきょくは合縁奇縁が巡り巡ってお寺にゆきつくのか、というオチでした。