人間否定か社会肯定か 小川未明

 今日は、小川未明の「人間否定か社会肯定か」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 小川未明は児童文学の中に社会批評性をとりいれた特別な作家だと思うんですが、今回は完全に大人向けの評論を記していました。本文こうです。
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 人間は、希望と光明を持てばこそ、はじめて、幾多の辛酸を凌いでも、前へ、前へと進んで来たのである。人間が、年若くして、人生を美しいと思った。その信念には、間違いがない筈であった。自然は美しく、大空はかくの如く自由であると考えた。quomark end - 人間否定か社会肯定か 小川未明
 
 現代社会や現代思想と比較するとどうも古めかしいところがあるのですが、氏の作品と共通項のある評論に思いました。
 

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追記  小川未明は「人間性」を選択するか「社会性」を選択するかという二者択一をせまっているわけではありませんでした。人間的なことと社会的なことが対立してしまう状況を例にだし、どちらの必要性も説いている批評を展開していました。「社会が、人間を悪くするのであったら、いかにしてそれを改めなければならぬかについて考えなければならない。」という小川未明の指摘が印象に残る作品でした。

晩菊 林芙美子

 今日は、林芙美子の「晩菊」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 生まれてからずっと和服しか着たことのない五十六歳の「きん」という女性が主人公の物語で、序盤から美醜と生老について念入りに描き込む作品で、美術でも映画でも描きだすことが難しかった場面を、上品に描きだすのが、時代を超える作家の力量なんだなあと思う小説に思いました。
 アレクサンドル・デュマ・フィスが書いた『椿姫』の生きかたを好み、若いころからいろんな男と遊んできた。「今日まで孤独で来た事も、きんには一つの理由があるのだつた。」というように記しています。
「きんは両親がなかつた」し、育ての親からは裕福な環境で育ててもらったのですが、父は不在でしたし家が傾くころには不和もあって、まだ幼いまま家を抜けだしてすぐに芸者になったのでした。そのままいつの間にか、気がついたらもう五十をすでに過ぎていた……。その頃はもう終戦のどさくさの中なんですが「きん」は世渡り上手なのでお金に困ることも無かった。不思議と上品な暮らしをしている「きん」のもとに、昔の男がやって来て……。
  

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追記  「ハノイで貿易の商社を起して」いて終戦後に日本に帰ってきた板谷清次と「きん」は出会って、もうひとり若い既婚者の田部という男とも、どうも恋愛関係にあったようです。「きん」という女性はなぜか昔とまったく同じような気配を持っているという、奇妙な特徴があるのでした。昔の恋愛を思いだしつつ、戦後の暮らしのことを話しあう男女なのでした。「きん」は「世相の残酷さが何一つ跡をとゞめてはいない」しすっかり老いていてもおかしくない年齢で、どうも正体がつかめない。ただ菊のくずおれたようなさまが2人の目の前に迫るのでした。
 前半にも記されていた火鉢に、若いころの思い出の写真一枚を放り投げ、その紙の焼ける匂いを消すために放り込んだチーズの欠片の匂いがあたり一面に立ち籠めて終わる、戦後すぐの世相と美女の老境を重ね合わせた物語でした。

秋の瞳(32)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その32を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 八木重吉の父親としての経験が、こういう詩を描かせるのでは、というように思う詩でした。海で赤ん坊と遊んで、疲れきったけれども憂いがまったくない心情を記しています。
 もう1つの詩「つばねの穂」についてなのですが「つばね」について調べてみたのですが、千萱ちがやの穂のことを「つばな」あるいは「つばね」と呼んだのでは、というように考えました。 参考文献その1 参考文献その2
 

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暗い時間に 片山敏彦

 今日は、片山敏彦の「暗い時間に」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ハイネやゲーテを研究した片山敏彦が、描きだす植物の存在感が印象に残る、闇夜の詩でした。
   

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追記 詩の中に「彼」という言葉が「僕」という言葉に対置して描かれています。ゲーテの植物研究に影響を受けた片山敏彦の、描きだす植物「葉の階層」と「年輪の多いあらい幹」の生命性と歴史のことも記されてゆく、暗闇のなかの2つの生命を描きだす詩でした。
 

ジョン・ブル ワシントン・アーヴィング

 今日は、ワシントン・アーヴィングの「ジョン・ブル」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ジョンブルというのは典型的イギリス人あるいは、古い英国の国家像を擬人化したものなんだそうです。
 そのジョンブルの滑稽さや、ジョンブルの老いたる生きざまのことを描きだした短編です。ジョンブルは……「外へ出て殿様ぶるのが少々好きだ。重い財布をひっぱり出して、拳闘の試合や、競馬や、闘鶏に金をふんだんにまきちらし」ているような男なのです。これが典型的なジョンブルの姿なんだそうです。本文こうです。
quomark03 - ジョン・ブル ワシントン・アーヴィング
 さまざまな奇妙な気性や頑固な偏見をもっているにもかかわらず、彼は心の清らかな老人である。彼は自分で思うほどすばらしく立派な男ではないかもしれないが、彼は近所の人が考えるよりは少くとも二倍ほど善良である。quomark end - ジョン・ブル ワシントン・アーヴィング

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追記  作者アーヴィングの考える、ジョンブルに対する主張はこうでした。「わたしがひたすらに望むのは、ジョンが現在の苦悩を経て、未来にはもっと慎重にしなければならないと知ることであり、彼が他人のことで心を悩ますのをやめることであり、棍棒の力で、近所の人の福利や、世界の平和と幸福とを促進しようなどという無益なこころみをやめることである。(略)昔栄えていた頃の楽しい情景を取りもどして父祖伝来の地で、すえながく、元気で、立派で、愉快な老年をたのしんでもらいたいのだ。」
 

細雪(80)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その80を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 新しい新郎候補の「橋寺」と雪子は、どうも上手く交際が始まりそうに見えます。本文ではこう書かれています。
quomark03 - 細雪(80)谷崎潤一郎
  大丈夫きっとうまく行くと思うから、しっかりやって御覧になるがよい、そして一日も早く好い結果を知らして貰いたい、と云って、おめでとう、とまで云ってくれたquomark end - 細雪(80)谷崎潤一郎
 
 ところが雪子の姉の幸子の「観測ではまだなかなか祝って貰えるところまで進行してはいなかった」という状態なのでした。悪い事情も無さそうですし、条件は完全に整っています。
 幸子の夫である貞之助は、雪子には裏の悪い事情は無いんですよということを、長い手紙にして、相手方に送ります。
 それから雪子の性格のよいことや、十一歳の姪の面倒見も良いということを伝えるのでした。
 この繊細な手紙を書くのに、何度も何度も書き直すことになったし、投函しなければ良かったとも考えるようになるのでした。大阪の「烏ケ辻」というところが新郎候補の住む町なのでした。雪子の親族である貞之助がひとりで寺橋を訪ねてみるのでした。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 
追記  寺橋氏は仕事も順調で、家庭の事情も再婚に向けてなんとも整っています。「やっぱり訪問してよかったと思った」と本文に書いてありました。結婚したら雪子と一緒に暮らすことになる「十四歳」の娘さんとも逢えたのでした。たいへんな時代の、たいへんな結婚だなあと思いながら読みすすめました。
 作中に記されたレストランの「アラスカ」は2025年にも営業をしているようです。文豪の谷崎を満足させた店で、今もお金持ちが楽しめるレストランなんだそうです。