精神病覚え書 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「精神病覚え書」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 戦後3年以上経った安吾の随筆で、自身の病状や、入院していた病院でまのあたりにした患者たちのことを克明に記しています。
「精神病院の患者は自らに科するに酷であり、むしろ一般人よりも犯罪に縁が遠い、と僕は思った。」そうして「自らの動物性と最も闘い、あるいは闘い破れた者が精神病者であるかも知れないが、自らに課する戒律と他人に対する尊敬を持つものが、精神病者の一特質であることは忘るべきではない。」という記載が印象に残りました。
 退院の翌日に書いた作品ですので、生々しい記載ですし、犯罪がばっこする都市を思い描いていて不気味さもあり、なんだかすごい迫力でした。ドキュメンタリー映像を見ているような、克明な筆致の随想でした。
 

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よめいり荷物 片山廣子

 今日は、片山廣子の「よめいり荷物」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは不思議なエッセーで、明治の後半における嫁入り道具の、その中身のことだけを、ずらっと並べるように書いたものなのです。読んでいるうちに、この豊かで雅な暮らしの始まりのところを、切り取るように記した文体に引き込まれました。いろんな日本の道具や家具のことが、とつとつと記された、なんだか穏やかな日記でも垣間見ている気分で読める随筆でした。
 結婚する相手の家に、およめさんと一緒に運ばれてゆくモノを、記しているのでした。本文こうです。
quomark03 - よめいり荷物 片山廣子
 長持には夫婦揃の夏冬の夜具、座ぶとん、夫婦用座ぶとん、夫婦用と客用の枕、蚊帳、たんぜん二人分が入れられる。吊台には机、本箱、鏡台、姿見、針箱、くけ台、衣桁、下駄箱、えもん竹、日がさ、雨傘、洗面器、物さし、裁ち板、張板、火のし、鏝、たらひ二つ(重なるように大小の物)、めざまし時計、大小のお重箱、硯ばこ、そろばん、膳椀、茶椀、湯のみ……quomark end - よめいり荷物 片山廣子
  

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秋の瞳(28)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その28を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回の詩に記された「あくがれ」という言葉は あこがれという意味です。八木重吉の代表的な作品にも記されています
 
心 よ
 
ほのかにも いろづいてゆく こころ
われながら あいらしいこころよ
ながれ ゆくものよ
さあ それならば ゆくがいい
「役立たぬもの」にあくがれて はてしなく
まぼろしを 追ふて かぎりなく
こころときめいて かけりゆけよ
 
「役立たぬもの」にあくがれて、という詩の言葉が印象に残りました。
 
むつかしい言葉を調べてみました
へんぽん
 

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風船球の話 小川未明

 今日は、小川未明の「風船球の話」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは風船が、空を自由に飛んでゆきたいと思って、勝手にどこかに行ってしまう、奇妙な童話なんです。
 

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追記   最後には枯れ枝に引っかかってしまって自由を失ってただ、はためいている風船というのが描きだされる児童文学で、けっきょくは現実世界の風船と同じように、哀れに打ち捨てられたようにどこかに絡まって、無駄なモノになってしまうのに、動けないタンスのほうでは、風船たちはどこかで幸せになっただろうと思い込む……このタンスの態度がなんだか魅力的な、妙なオチになっていました。タンスは古びてもなんだかずっと存在感があるけれど、風船はすぐに行き先が不明になってしまう。よくしゃべる風船とタンスなんですけれども、現実のそれに雰囲気がそっくりなのが、小川未明の上手い描写で、この存在感がなんとも印象に残る童話でした。

十年 中島敦

 今日は、中島敦の「十年」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 中島敦といえば中国やアジアを舞台とした文学作品が代表的かと思うのですが、今回はフランスのことを記した作品でした。
 「十六歳の少年の僕は」草原で青空を見上げながら、将来どんな大人になろうかと考えていた。そのころはありとあらゆる可能性を感じていて……「大文豪、結構。大金持、それもいい。総理大臣、ちょっとわるくないな。全くこの中のどれにでも直になれそうな気でいたんだから大したものです。」という記載から始まり、若いころに憧れたフランス文化について、永井荷風や上田敏の作品を引用しつつ、海の向こうへの思いを描きだした、おおよそ百年後のいま読んでみても、なんだか魅了されるエッセーでした。
 

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作中で、中島敦がヴェルレーヌを引用しています。この詩の全文はこうです。
  
秋の歌   ポール・ヴェルレーヌ
 
秋のバイオリンの
長く切ないすすり泣きが
僕の心に
静かな傷を残す
 
灰色の空 息もできず
遠くで 時計が鳴れば
思い出す あの日々を
目の奥が熱くなる
 
僕は歩く 冷たい風に
どこへともなく 運ばれて
右へ 左へ さまよいながら
枯れ葉のごとく
漂いゆく
(上記の詩はAI翻訳に修正を加えたものです。)
いっぽうで上田敏訳ではこうなんです。
 
落葉   ポオル・ヴェルレエヌ
 
秋の日の
ヴィオロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し。
 
鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。
 
げにわれは
うらぶれて
こゝかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。
 

細雪(76)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その76を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 一年ほど前に日本から英国に渡ったロシア人カタリナが、お金持ちの英国人社長と結婚をしたという報告が届きます。
 カタリナはかつて上海で、英国人の夫と、じつの子どもの3人で暮らしていたのですが、なにかの事情で離婚して、いったん日本で暮らし、それからふたたび一人だけで英国に移り住んで新しい男を探していたところだったのです。
 細雪の前半部分にはこう書いています。
「カタリナに云わせると、自分は露西亜に生れたのだが、国を追われて、上海に来て、英吉利人の恩恵を受けて成人したのである。英吉利の学校は私に学問を教えてくれた、しかも月謝など一文も取りはしなかった、私は学校を出て看護婦になり、病院で月給をもらうようになったが、それもこれも皆英吉利のお蔭である」
 カタリナは英語も流暢で国際的な女性なので、英国に渡って、再び幸福を掴んだということのようです。
 ただカタリナは英国では、地縁や縁故というのが無いのに、そのような良い相手をよく見つけられたものだと、幸子は驚くのでした。
 幸子は近代の日本式の縁談で、なんとか妹の雪子にいい人を見つけてきたいと思っているのですが、これがどうも失敗続きで困っているところなのです。大姉の鶴子はこう囁いていました。
「あたしの今の気持では雪子ちゃんを貰ってくれる人さえあれば誰でもよい。又離縁になるにしても一遍は縁づけたい」鶴子は溜息をつくのでした。
 幸子はこのとき「そッと眼の縁の涙を拭った」というように本文に記されて、ありました。あと二十数回で完結します。
 

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(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)