目羅博士の不思議な犯罪 江戸川乱歩

 今日は、江戸川乱歩の「目羅博士の不思議な犯罪」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 百年前の世界ですが、日の暮れて誰も居なくなった上野の動物園で「私」は奇妙な男に出会います。
 犬の哲学者ディオゲネスを連想させるような放浪する哲学者風の変人男と出会った「私」は、猿をからかう「青年」の、奇妙な話しに引き込まれ、猿と男の異様な狂態をまのあたりにして……。
 

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追記  ここからは完全にネタバレとなりますので、近日中に読み終える予定の方は、先に本文から読むことをお勧めします。
 事件の真相としては、猿のモノマネの習性を使いこなして、狂気の猿真似をさせてふつうの人間を3人も自滅させるという事件が起き、この謎を解明するために、犯罪予告を行った目羅博士を調べた「青年」は、瓜二つのビルに映し出される、月夜の鏡像の幻によって、異常事態を引きおこすというトリックを暴くのでした。模倣をする人間の本能と月夜のビルに映し出される偽りの鏡像を使った、殺人事件が、月夜の晩にのみ連続して起きていたのでした。実際にこれを行っても犯罪は現出しないはずで、江戸川乱歩は意図的に、現実には使えない方法を考えついたのではないかというように思う、終盤の展開でした。この奇態な犯罪を行った目羅博士は同じトリックによって哀れにも滅びてゆくのでした……。

球根 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「球根」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 寺田寅彦と言えば科学の研究が本業で、学問にかんする知的な随筆を書く作家なのだと思うのですが、今回は、純粋に小説を描いていて、20世紀後半の純文学のような静かな構成の文学作品になっていました。「堅吉の宅」に差出人不明の「小包郵便」が届くところから物語が始まります。
「何かの球根らしいものがいっぱいはいっている」堅吉には「西洋草花の球根だろうと思ったが、なんだかまるで見当がつかなかった」…………。
 

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追記  堅吉の病と欠勤と心情、それから差出人不明の小包の顛末について、事細かに描きだされてゆきます。「差出人の不明な、何物とも知れぬ球根の小包」を受け取った堅吉は、なんだか悩んでしまうのでした。おそらく手紙と小包を別々に送ってしまったのではないかと考察するのですが、これもどうもちがったようです。手紙はちっとも届かないので、謎めいた事態になってしまったのでした。
 そのあと堅吉は、この球根についていろいろ調べてみるのですが、これがどうもフリージアの球根だということが判明した。差出人もほぼつきとめることができた。問題は解決したように思えるのですけれども、そのあとに、なぜこれを無言で送りとどけたのかが、分からなくなってきて、その解明というのはもはや不可能であることが分かるのでした。

 
追記2 自身が所属する軍部の謎について直接書けないがために文学作品をあまたに記した森鴎外と、科学の謎を追ううちに、科学の領域の外の随筆文学に大いなる関心を抱いた寺田寅彦には、作品の構成に共通項があるのでは、と思いました。
 

秋の瞳(39)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その39を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 峻険な感性を描きだした八木重吉が「あめの 日」という詩では、なんということもない静けさを描いていて印象に残りました。
  

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手 富永太郎

 今日は、富永太郎の「手」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 大正時代の絵描き富永太郎の、一篇の詩を読んでみました。もの悲しい親愛を吐露する詩でした。

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追記  
富永太郎が愛読した詩にはシャルル・ボードレールの「通りすがりの女」があります。このような詩です。

通りすがりの女 
シャルル・ボードレール
 
街は轟き 耳をつんざく叫びの中
長く、細く、喪に服した姿
荘厳な悲しみをまといながら
彼女は通りすぎ 華やかな手で
スカートの裾を揺らし 飾りを持ち上げた。
 
軽やかで気高く 彫像のような足。
私は酔いしれ 狂人のように身を震わせながら
彼女の眼差しのうちに見た 蒼白な空に芽吹く嵐
魅惑の甘美と そして滅びをもたらす快楽。
 
稲妻……そして闇! はかない美しさよ
そのまなざしは私を突然甦らせた。
永遠の彼方でしか 再びお前を見ることはないのか?
 
遠く、遠くへ! ああ、遅すぎる! もはや、決して!
あなたはどこへ逃れ 私はどこへ向かうのか。
ああ 私が愛したであろうあなた
ああ それを知っていたあなたよ!
 
(※ 上記の詩はAI翻訳に修正を加えたものです)

散華 太宰治

 今日は、太宰治の「散華」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはまだ敗戦に至らない激戦の1944年のころの作品です。病で眠るようにすっと亡くなる人というのがどうも居るらしいという話しは聞いたことがあるのですが、友人の「三井君」は、太宰治によれば美しいとしか言いようが無い臨終をした人なのだそうです。本文はこうです。
quomark03 - 散華 太宰治
  病勢がよほどすすんでからでも、三井君は、御母堂の眼をぬすんで、病床から抜け出し、巷を歩き、おしるこなど食べて、夜おそく帰宅する事がしばしばあったようである。御母堂は、はらはらしながらも、また心の片隅では、そんなに平然と外出する三井君の元気に頼って、まだまだ大丈夫と思っていらっしゃったようでもある。三井君は、死ぬる二、三日前まで、そのように気軽な散歩を試みていたらしい。三井君の臨終の美しさは比類が無い。美しさ、などという無責任なお座なりめいた巧言は、あまり使いたくないのだが、でも、それは実際、美しいのだから仕様がない。三井君は寝ながら、枕頭のお針仕事をしていらっしゃる御母堂を相手に、しずかに世間話をしていた。ふと口を噤んだ。それきりだったのである。quomark end - 散華 太宰治
 
 20世紀最大の資源不足と食糧難に陥ってゆく環境下で、治る病も治らなくなる時世が書き記されてありました。
  

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追記  戦争の怖ろしい被害について記されている作品でした。ほかにも友人との思い出のことについて様々に記しています。以下の、太宰治の思いが込められた一文が印象に残りました。「私は、年少年長の区別なく、ことごとくの友人を尊敬したかった。尊敬の念を以て交際したかった。だから私は、年少の友人に対しても、手加減せずに何かと不満を言ったものだ。」くわしくは本文をご覧ください。「純粋の献身を、人の世の最も美しいものとしてあこがれ努力している」詩人や作家の思いが記されている、敗戦間近のころに書かれた小説でした。平和のなかにあって読むこの作品と、戦争の只中に置かれた人が読むこの本とでは、意味内容がまるで異なってしまうのでは、と思う生々しい描写の作品でした。

細雪(87)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その87を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 あと十数回でこの長編小説は完結しますので、こんご細雪の全巻を通読する予定の方は、本文の第一章から読むことをお薦めします。
 鶴子と幸子が、妹の妙子こいさんを案じ、良かれと思って、「妙子と啓坊」という不穏な関係から遠ざけるためにやったことが、逆に妙子と啓坊を追いつめてしまってかえってこの2人が寄り添って生きるしかなくなってしまったようです。その実態が、「婆や」たちによって語られるのでした。
 妙子は、元婚約者の米やんを経済的にもしっかり支えるために、裁縫と人形作りを学んでこれを仕事にしたのですが、鶴子が古い考え方でこれを辞めさせるように動き、さらに1930年代後半の時世が、女性の独立心を阻むところもあって、妙子はフラフラしているだけの日々になって、恋人も病で失ってしまい、親の金だけ持っている啓坊と深く関わるようになってしまいました。さらに啓坊はもっと妙子を遊ばせるための金が欲しくて実家の大切なものを盗み出して勘当されてしまい、外部に外部に追いやられてブラブラしている状態の2人が、共に暮らすようになってしまっていたのでした。
 放蕩をさんざんやってしまったのも、妙子の元婚約者にさんざん嫌がらせをしたのも、実家の親のものを盗んだのも、すべて妙子こいさんにたいして「今も昔に変らない純真な感情を持っている」からこそやってしまったことなんだと啓坊の「婆や」は力説したのでした。次回に続きます。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)