市井喧争 太宰治

 今日は、太宰治の「市井喧争」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは太宰治の、日々の暮らしの中で起きたちょっとした諍いのことを書いていて、押し売りに薔薇を買わされたけれども、あまりにも高すぎる値段で「私自身の卑屈な弱さから、断り切れず四円まきあげられ、あとでたいへん不愉快な思いをした」ということの顛末を描きだした小説です。太宰治は事実っぽく架空の話を書くことが多いので、どこまで事実の描写なのか分からないのですが、作中の「嘘」と「偽物」という言葉の置き方がなんだか美しいというのか、妙に印象に残る掌編小説でした。農民ではないのに農民という嘘を言った、と太宰治は考えつつ、近くに住む農家の女性だったら、ちょっと高くても薔薇を買ってあげたいと思った、ようなんです。
 

0000 - 市井喧争 太宰治

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追記  作中に記された「贋百姓の有様を小説に書いて」というのは翌年の1940年に発表された『善蔵を思う』という別の短編小説にて描かれています。
 

流浪の追憶 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「流浪の追憶」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは坂口安吾が放浪と酩酊と、旧友との交流について記したものなのですが、安吾の旅はなぜか居住地や故郷からほとんど離れないまま行き詰まって「這々ほうほうの態で逃げ出」すことが多く、旅をしていると言うよりも「魂の放浪」に傾いていって、思索や幻想や物語世界に入り込む様子が描かれるのでした。本文こうです。
quomark03 - 流浪の追憶 坂口安吾
  私のは精神上の放浪から由来する地理上の彷徨だから場所はどこでもいいのだ。東京の中でもいい。時々一思ひに飛び去りたくなる。突然見知らない土地にゐたくなる。土地が欲しいのではなく、見つめつづけてきた自分が急に見たくないのだ。quomark end - 流浪の追憶 坂口安吾
 
 安吾がこの1930年代の中ごろに唯一、旅に満足できたのは、伊豆の大島に辿りついたときだったようです。
 終盤で、ドストエフスキーの作中人物への思いを記していました。坂口安吾はこう記します。「私がドストエフスキイを愛するのは彼の作中人物がみんな自分の生命力を感じたいためにあせりぬいてゐる、それが甚だなつかしいのも一因である。」
 本作に記された「レエゾン・ド・ビイヴル」というのは、存在理由レゾンデートルのことです。
 

0000 - 流浪の追憶 坂口安吾

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秋の瞳(34)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その34を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は……近代の汚濁を描きだした渋い作品で、他の八木重吉の詩とは雰囲気が異なっていて、陰翳を濃密に描きだした詩に思いました。真夜中の、病んだ猫が印象に残る、秋の詩でした。
 

0000 - 秋の瞳(34)八木重吉

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石窟 田山録弥

 今日は、田山録弥の「石窟」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 田山録弥というのは田山花袋のことで、これはほんの数ページの小説です。画家と作家の2人が登山をしています。山奥のほら穴のなかに、無数の仏像が隠されていたのを偶然にも発見する場面が描かれます。
 

0000 - 石窟 田山録弥

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追記  山奥の巨大な岩をくり抜いて洞穴を作り、そこに大量の仏像を彫った人間の仕事をまのあたりにして衝撃を受ける、画家と作家なのでした。千年以上前につくられた彫像の群に圧倒されるのでした。2人はこの千数百年前の無名の仏師の、たいへんな仕事に震えあがり思わず落涙します。帰路につきながらも、呆然とし続けたのでした。 
  

川へおちた玉ねぎさん 村山籌子

 今日は、村山籌子の「川へおちた玉ねぎさん」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは小学生が読むための児童文学なんですが、いま現代に絵本化しても通用しそうな、ふつうにおもしろい物語でした。調べてみると村山籌子さんは、現代でも新聞記事になるほど有名な童話作家なんだそうです。
 玉ねぎさんが旅をしていて疲れきってしまい、満室のホテルの主人に頼み込んで、ホテルの片隅に泊めてもらうお話しです。本文こうです。
quomark03 - 川へおちた玉ねぎさん 村山籌子
  ジヤガイモさんは考へました。犬さんや、お猫さんならいざ知らず、玉ねぎさんを馬小屋になんぞ泊めたら、いやしんぼの馬が、玉ねぎさんを食べてしまふだらう。屋根裏に泊めたら、遠慮なしのくもが巣をかけるだらう。quomark end - 川へおちた玉ねぎさん 村山籌子
 
 ここからちょっとした七転び八起きがあるのですが、最後は童話らしい童話のハッピーエンドで、オチのつけかたも幼子が喜びそうな展開で、みごとなおとぎばなしでした。
 

0000 - 川へおちた玉ねぎさん 村山籌子

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装画のAI使用率は5%。

細雪(82)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その82を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回の章は、細雪の終盤としてかなり有名な場面が含まれている……と思いました。姉の夫は、雪子の縁談相手であった橋寺に、手紙を出すのでした。内容としては……雪子が無礼なことをしたように思えたのは「異性に対する羞耻心がさせたことで、橋寺さんを嫌っているのではない」そして「小生は、貴下がよき配偶者を得られ、雪子もまた良縁を得て、お互にこの不愉快な出来事を忘れ去る日が早く到来することを祈る」ということを書いていました。すぐに返信が届いて、けっきょくこの橋寺さんと雪子は破談となりました。
 いっぽうで四女の妙子こいさんは、不倫男奥畑啓坊との関係がズルズルと続いていて、本家からは一時的に縁を切られている状態だったのですが、お手伝いのお春どんが雪子と幸子のところへやってきて「こいさんが御病気でございます」「大腸カタルか赤痢らしゅうございます」と言うのでした。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 
追記  源氏物語の麗しき婚姻のような、蒔岡姉妹の雅な婚姻の物語なのかと思っていたら、どうも破談の連続で、妙子は深刻な下痢の病気に陥るという、人間的な苦が描きだされて、しまうのでした。