十年 中島敦

 今日は、中島敦の「十年」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 中島敦といえば中国やアジアを舞台とした文学作品が代表的かと思うのですが、今回はフランスのことを記した作品でした。
 「十六歳の少年の僕は」草原で青空を見上げながら、将来どんな大人になろうかと考えていた。そのころはありとあらゆる可能性を感じていて……「大文豪、結構。大金持、それもいい。総理大臣、ちょっとわるくないな。全くこの中のどれにでも直になれそうな気でいたんだから大したものです。」という記載から始まり、若いころに憧れたフランス文化について、永井荷風や上田敏の作品を引用しつつ、海の向こうへの思いを描きだした、おおよそ百年後のいま読んでみても、なんだか魅了されるエッセーでした。
 

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作中で、中島敦がヴェルレーヌを引用しています。この詩の全文はこうです。
  
秋の歌   ポール・ヴェルレーヌ
 
秋のバイオリンの
長く切ないすすり泣きが
僕の心に
静かな傷を残す
 
灰色の空 息もできず
遠くで 時計が鳴れば
思い出す あの日々を
目の奥が熱くなる
 
僕は歩く 冷たい風に
どこへともなく 運ばれて
右へ 左へ さまよいながら
枯れ葉のごとく
漂いゆく
(上記の詩はAI翻訳に修正を加えたものです。)
いっぽうで上田敏訳ではこうなんです。
 
落葉   ポオル・ヴェルレエヌ
 
秋の日の
ヴィオロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し。
 
鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。
 
げにわれは
うらぶれて
こゝかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。