細雪(90)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その90を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 物語の終盤に関する内容を書いていますので、こんご細雪の全巻を通読する予定がある方は、本文の第一章から読んで、以下の文章は読後に読むことをお薦めします。
 自由闊達な妙子には、これまでいろんな不幸が襲いかかってきて、啓坊の悪影響もあって、妙子はほとんど死にかけてしまったわけなのですが、ついにいろいろなところが快復して、やっと第一章のころの妙子の魅力が復活してきたのでした。
 当時の時代の不幸が襲いかかる小説なんだろうと思っていたのですが、ここに来てだんだん良い展開になりつつあって、いよいよ終盤に近づいてきたなと思って読んでいます。作家は既に敗戦後に到達しているのですが、作中の時代ではまだ戦争が激化する場面ですので、不穏な気配はいろいろあるのでした。啓坊の渡航計画もこの後の5年間の歴史を思うとずいぶん不味い内容なのでした。
 それから妙子が、不倫と窃盗をやっていた恋人啓坊に対して、どのように思っているのか、そのことが明確に書き記されていて、ちょっと驚く内容なのでした。
 3女の雪子が、ふだんはまったくものを言わない人柄であるのに、4女の妙子に対しては、しっかり大事なことを話すところも印象に残りました。
 人生の岐路について、いよいよ真剣に話しあわねばならず、やむを得ぬ姉妹喧嘩が起きてしまって、妙子が泣いてしまう場面もありました。本文こうでした。
quomark03 - 細雪(90)谷崎潤一郎
  妙子の眼にはいつの間にか涙が潸然さんぜんと浮かんでいた。それでも妙子は、相変らず無表情な顔つきをして、頬を流れる涙を意識していないかの如くであったが、やがて、突然立ち上ると、バタン! と、部屋じゅうが震動するほど荒々しくドーアを締めて廊下へ出て行った。quomark end - 細雪(90)谷崎潤一郎
 
 あと11回でこの長編文学は完結します。
 

0000 - 細雪(90)谷崎潤一郎

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(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
  
追記  妙子が不幸になった原因について案じている雪子と幸子なのでした。「自分達にも一半の責任があることを思い、出来るだけ温かい愛情を以て、この変り種の妹の心を和げるように」という記載があって、姉妹の妙子に対する心情描写が印象に残る章でした。
 

手帳より 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「手帳より」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは、宮沢賢治の手帳に書き記された文学的メモや、詩の断片を電子書籍化したものです。判読しやすい、意味が理解しやすい箇所のみを収録してみました。
 紫式部もこの名を愛用した「末摘花」に関するメモや、おそらくウィリアム・ジョージ・アストンの「文語文典」に関するメモもありました。
 

0000 - 手帳より 宮沢賢治

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
   
追記 「明かりの本」ではお正月期間のため、更新を数日間ほどお休みします。再開は1月7日からです。

オツベルと象 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「オツベルと象」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 白象の脱出を描きだす、宮沢賢治の代表的な童話です。「ありがとう。よく来てくれて、ほんとに僕はうれしいよ。」という言葉がなんだか印象に残る児童文学です。
 

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
  
明けましておめでとうございます。今年も、近代の作品を読み進め、童話や物語の魅力を再発見してゆきたいと思います。
 
追記  最後の一行に空白が残っているのは、宮沢賢治の本作への逡巡があって、偶然にもこのような形になって出現した箇所なのでは、というように思いました。原文の手書き文字の画像を見ていないので、正誤は不明です。
 

牧場の音楽師 北條民雄

 今日は、北條民雄の「牧場の音楽師」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはほんの数ページで未完となってしまった北条民雄の創作の、没後に公開された断片作品です。北条民雄は闘病中にあまたの作品を書いていますが、未完作もいくつか残っているのでした。
 これは随筆に近い闘病の描写で、作中では宮澤賢治の詩の一節を描きだし、アコーディオンとバイオリンを手にした病棟の仲間と語らいます。
 

0000 - 牧場の音楽師 北條民雄

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  この未完作は「いのちの初夜」のような、あるいは「セロ弾きとゴーシュ」のオマージュ作品のような、人間の物語が描きだされるはずの草稿だったのでは、と思いました。
 途中で引用している賢治の詩の言葉なのですが、これは宮沢賢治全集のどの本にも掲載されていないものでした。具体的には、賢治のいろんな詩を、リミックスした翻案、のようになっています。読んでいてこれはまさに賢治の詩だなと思って、詳細にどの箇所を引用したか調べてみると、「春と修羅」第二集のなかからいろんな言葉を抜き書きして詩のかたちにしたもの、でした。

浚渫船 葉山嘉樹

 今日は、葉山嘉樹の「浚渫船」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
quomark03 - 浚渫船 葉山嘉樹
  私は行李を一つ担いでいた。
 その行李の中には、死んだ人間の臓腑のように、「もう役に立たない」ものが、詰っていた。
 ゴム長靴の脛だけの部分、アラビアンナイトの粟粒のような活字で埋まった、表紙と本文の半分以上取れた英訳本……。quomark end - 浚渫船 葉山嘉樹
  
 という文章から始まる、プロレタリア文学です。いったいなんの物語が始まるのか、興味を惹かれる小説でした。

0000 - 浚渫船 葉山嘉樹

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  浚渫船というのは水底の土砂を整備する船のことで、主人公たちは工事現場で働くために船に乗っていたのでした。作中の「セコンドメイト」というのは二等航海士のことです。主人公は、何の役にも立たない、大きな行李を川底に投げ捨てます。文体や構造が、デヴィットリンチの映画作品のように混沌としていて、怒りや呪いの正体が見えがたくなっているところが、一般的なプロレタリア文学とは異なる魅力を生じさせているように思いました。「死んだ人間の臓腑のよう」なものだけがつまった自身の「行李」を川底に捨て去って沈みゆき、「私」は「足の傷」を抱えたまま歩きつづけたため、「患部に夥しい充血を招い」て化膿してしまっているのでした。
「懲戒下船の手続をとられた」私は、心身共にボロボロになりながらも働くしか無い、と考え、自身が長らく乗っていた船が港を去るのを見送り、一人歩きはじめるのでした。

 

秋の瞳(41)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その41を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 八木重吉の詩は、単純な語を積み重ねたものも多いのですが、この言葉をはじめに言ったのは、八木重吉がいちばん最初だったのでは、と思えてくるような、原初の感性を描きだす、短い詩でした。
  

0000 - 秋の瞳(41)八木重吉

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