晶子詩篇全集拾遺(32)

 

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(32)を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 与謝野晶子の詩を読むと、ふだん目にしている文章とちがって、言葉が美しく構成されていることに、いつも驚きます。言葉だけで立体的な情景を描き出していて、画家にとってはこういった文学が、モチーフの宝庫なのだろう、思いました。
 むつかしい言葉を調べてみました。
 悒欝

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おりき 三好十郎

 今日は、三好十郎の「おりき」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 三好十郎は戦後にも読まれ続けた詩人であり劇作家なんですけれども、今回の本を読んでいると、あきらかに日本のファシズムを肯定的に描いている……のです。前半は、農村にまだ機械文明が上手く入りこんでおらず、貧困と労苦が絶えない状態が描かれています。後半はもう戦争への参加一色の物語になっていて、読んでいてこういう本は、まったくおすすめできない近代文学だ、と思いました。資料として読むのならまあ問題は無いと思うんですけど。ぼくはwikipediaの「ファシズムの定義」の頁と同時に読んでみました。ただ、じっさいの作中の当事者は、戦後の蔑称となった「ファシスト」とは、まったく異なる、やむべからざる事態によって戦争に参加するしか無くなる状況が描かれていて……要するに強制的な徴兵なんですが、これに誰も疑問を感じず賛同しているところが戦後には見受けられない表現なんです。貧しい青年がこの日本のファシズムから逃れて自由になる具体的な方法は、当時は無かった、というのが読後の感想です。金持ちの家系なら、海外留学させたら徴兵されなかったらしく、じつは漱石も兵役逃れをやっていたわけなんですけど、それらはごく限られた知識人だけが出来た裏技であって、大多数の人は徴兵から逃れるのはほとんど無理だった。
 三好十郎はファシズム思想を持っていたかというと、この本で読んだ範囲では「ロマンチックで神秘的な側面を詰め込んだ、集会やシンボルなどの美学の構造」と「帝国を目指す」それから「新しいナショナリストの権威主義的な国家の作成に賛同している」の3箇所には当てはまる部分が色濃かったのですが、もっとも重大な「暴力主義」や「男尊女卑」や「理想主義的変革」や「カリスマ的命令形態」というのはいっさい存在していませんでした。
 与謝野晶子や夏目漱石がどのようにファシズムと対峙したのか、あるいはファシズムにどの箇所で加担していたのか、それを本を読みながら調べてゆくのは興味深い謎解きで、百年前の賢い人びとが危機に対してどういうふうに考えていたのかを、歴史上の事実と答え合わせしながら読んでゆくと、今の自分たちが分からないままやっていることが、のちのちどういうように展開してゆくのか、想像しやすくなると思うんです。
 近代詩の問題について論じた詩人の話に「まず情緒を歌うように書き記すのを辞めなさい。歌うように詩を書いてはならない」現代の詩や言葉は、考えるためのものとして機能している、という指摘があったのが強く記憶に残ったのですけれども、今回の登場人物の最大の問題は、苦について考えようとしておらず、苦を歌うようにそのまま受け入れていて、苦について考えようとしていないまま滅びに向かっているのが怖ろしいと思いました。この青年が歌うように情緒を描きだしたちょうど同じ状況で、戦時中の水木しげる氏は、本屋でゲーテの本や哲学書を買い求めて、死について考えようとしていて、この時の読書の効果があって、戦場で上官の命令と違うことをしはじめて、戦闘以外の行動をしつづけて、それで激戦地で生き残ったわけで、厳しい状態でなにかを考えることは非常に重大なんだなと思ったことがあります。
 機械文明が人間社会に入りこんで、奴隷的労働を強制されることが激減していったわけで、今は裕福な農家も多い。水の管理などの肉体労働を機械が担えるようになったお陰で、ここ半世紀の日本では数百年前と比べてずいぶん豊かな暮らしが出来るようになっている。一世紀ほど前に機械群が世界に席巻する過程で二度にわたる世界大戦が起きてしまった。これは機械が無ければ実現するはずがない事態だった。
 こんどは人工知能が世界中の知的労働を担いはじめているわけで、そのぶん目に見えて暮らしやすくなっている。いっぽうで問題も次々に起きている。ちょっと古い時代の変化を追うことで、文明の変化が自分たちをどのように変えてゆくのか、どこを警戒すべきかが、少しは見えてくるのではないかと思いながら、この大戦中の物語を読み終えてみました。
 

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論語物語(2) 下村湖人

 今日は、下村湖人の「論語物語」その1を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この物語ではなんだか孔子が、妙に人間的に描かれているところがあっておもしろかったです。孔子はしょっぱなから、弟子の子貢しこうに皮肉を言ったりするんです。孔子たちについて、どうにも偉人のイメージからはほど遠いことがいろいろ書かれています。「弁論のゆう」であるはずの「宰我さいが懶者なまけもので嘘つきだ」とか。「孔子の声はふるえていた」というようなところにも、偉大さとは異なる人間っぽい描写がありました。
 大器晩成というときにも記されている「器」というのを、孔子やその弟子たちがどのように考えていたのか、今回はそのことが描かれていました。本文の、この箇所が印象深かったです。
quomark03 - 論語物語(2) 下村湖人
  「子貢、何よりも自分を忘れる工夫をすることじゃ。自分の事ばかりにこだわっていては君子にはなれない。君子は徳を以てすべての人の才能を生かして行くが、それは自分を忘れることが出来るからじゃ。才人は自分の才能を誇る。そしてその才能だけで生きようとする。無論それで一かど世の中のお役には立つ。しかし自分を役立てるだけで人を役立てることが出来ないから、それはあたかも器のようなものじゃ。」quomark end - 論語物語(2) 下村湖人
 
 今回作中になんども出てくる「公冶長篇こうやちょうへん」というのは、『論語』の第五章のことらしいです。

 

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季節のない街 山本周五郎

 今日は、山本周五郎の「季節のない街」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 僕はこれを昨日はじめて全文、読んでみたんですけど、日本の映画で印象深かったものが、山本周五郎の小説の中にあまたに記されていて、映画と小説には、こんなに共通項があるのかと驚きました。
 山本周五郎は時代小説を主に描いたと思うんですが、今回のは戦後すぐを描いたものです。かなり現代人と共通項が多いように思います。
 この山本周五郎の小説はちょうど、近代と現代との……中間が描きだされた世界のように思えました。
 山本周五郎の本を読んだ人たちが、日本の映画の脚本を書いたはずだ、と思うところがいっぱいありました。「どですかでん」とか。
 じっさいはどういう事情で描かれたのか分からないのですが、この「季節のない街」は、戦争孤児のことを考えて物語を創っているように思う短編がいくつもありました。
 この小説は漱石や谷崎とちがって、読みにくい箇所が混じってるんです。とくに酒飲みの話しと、虚言癖から生じる政治論のところがかなりの難読箇所でした。ぼくは「肇くんと光子」という短編がいちばん楽しかったです。それから終盤「たんば老人」の「泥棒」に遭遇するエピソードが印象に残りました。
 いちばんはじめの六ちゃんが運転する幻の電車に導かれて、物語の世界に引き込まれてゆきます。戦争が終わったあとの世界が、いったいどういうものだったのかが垣間見えるように思いました。
 

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晶子詩篇全集拾遺(31)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(31)を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 与謝野晶子は、短歌を詠むことが本業であって、随筆や詩は中心的な活動では無かったのかもしれないのですが、ぼくとしては与謝野晶子の詩と随筆は、なんだか勉強になるような気がしました。文学の勉強と言うよりも、なにか処世術やものの考え方を教えてくれる人、という感じがします。詩というと……とくに日本の詩歌は、絵画のように美しさを感じとるものだという印象が強かったのですが、与謝野晶子の詩を読みつづけていると、哲学者の論考を読んでいるような感覚になることがあるんです。
 与謝野晶子は当時の世相とはまったく異なっていて、恋愛感情について繰り返し描くのもすてきなんです。それから、漱石が描きだした「淋しさ」を巡る物語というのは、もしかすると与謝野晶子のこんかいの詩に触発されて、描くようになったんじゃないかとか、そういう空想をしました。
 むつかしい言葉を調べてみました
 ほた

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