トカトントン 太宰治

 今日は、太宰治の「トカトントン」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 戦後に太宰は小説で、このように記しています。
 
  何か物事に感激し、奮い立とうとすると、どこからとも無く、幽かに、トカトントンとあの金槌の音が聞えて来て、とたんに私はきょろりとなり、眼前の風景がまるでもう一変してしまって、映写がふっと中絶してあとにはただ純白のスクリンだけが残り、それをまじまじと眺めているような…………
 
 戦争の危機が去ったあとに無気力にさいなまれていた主人公に対する、親戚の発言に、こういうのがあるんです。「お前は頭が悪いくせに、むずかしい本を読むからそうなる。俺やお前のように、頭の悪い男は、むずかしい事を考えないようにするのがいいのだ」
 中盤で絵画や音楽の話しが挿入されるんですけれども、それがじつにみごとで……。それから泉鏡花の「歌行燈」のことも記していました。こんど読んでみようと思います。
 それから政治に関する複雑な描写があるのですが、太宰治の経歴をwikipediaで読んでいると、15年戦争のはじまるころに、左翼運動をしてこれに挫折している。野間宏が描いた大長編の『青年の環』に登場する、特高に狙われた左翼青年のような人生があったようだ、というのを知りました。
 

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追記
台風19号で被害にあわれた皆様に、謹んでお見舞い申し上げます。
少額ですが、こちらのサイトから募金させていただきました。
https://donation.yahoo.co.jp/category/10/
 

災難雑考 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「災難雑考」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは科学者の寺田寅彦が、天災と人災とを検討した随筆です。
 このミニコラムは2019年10月11日の21時10分に書いているのですが、台風19号による大規模な雨量が予想されるそうです。日本気象協会の専門家吉田氏が天気予報サイトに、こう書いていました。「予想雨量は800ミリ」で、「台風19号は12日(土)の夕方から夜に東海や関東に非常に強い勢力で上陸する見込み」で「自治体から出される避難情報に注意」……するよう呼びかけていました。くわしくはこちらをご覧ください。
 ……それで、百年前の寺田寅彦は、こう記します。
 
  「地震の現象」と「地震による災害」とは区別して考えなければならない。現象のほうは人間の力でどうにもならなくても「災害」のほうは注意次第でどんなにでも軽減されうる可能性があるのである。
 
 寺田寅彦は検証と改善が人災を防ぐ重要な要素だと指摘しています。百年後の現代に読んでも、重要なことが書いてあるように思いました。
 

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注文の多い料理店 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「注文の多い料理店」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 宮沢賢治の本や絵本は、真面目なところに置いてあるので、僕は長らく気が付かなかったのですけれど、この作品はユーモア小説として読めるところがたぶんにあるように思いました。ベルクソンの「笑い」の哲学を連想しました。
 

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ゴリオ爺さん バルザック

 今日は、バルザックの「ゴリオ爺さん」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはかなり長大な文学作品で、あまたの登場人物が出てきます。
 
■主要登場人物
・ウージェーヌ・ラスチニャック………うぶで野心家の学生。主人公。
・ゴリオじいさん………娘たちを愛するあまり破産した。
・レストー夫人………ウージェーヌが一目惚れした美女で、ゴリオじいさんの実の娘。
・デルフィーヌ・ド・ニュシンゲン夫人………銀行家の妻で、ゴリオじいさんのもう一人の娘。
・ヴォートラン………謎のお尋ね者。
・ボーセアン夫人………ウージェーヌの遠い親戚のお金持ち。
・ヴィクトリーヌ・タイユフェール嬢………主人公たちとおなじマンションに住む、かつて孤児だった悲しげな目の美少女。母は亡くなり、父とずっと会えぬまま生きてきた。
 
 ヴォートランという謎の男がかっこいいです。主人公は成り上がりのお金持ちを目指していて、3人の美女と恋愛をする。この青年のマヌケなところが読んでいてほんとうにおもしろかったです。たぐいまれな喜劇だと思うんですけど、倫理的な人間性の描写に感銘を受けて、そこがバルザックの最大の魅力のように思いました。
 

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痴人の愛 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「痴人の愛」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは年下の恋人に翻弄される男の物語なんです。ぼくはこれを十数日間にわけて読んだのですが、序盤から終盤までずいぶん楽しんで読めました。文体が現代のものとほぼ同じ、洗練されたものなのですが、内容はやっぱり鹿鳴館とか文明開化の気配が残っていて、その世界から出ていって古い日本でも無い西洋の複製でもない新しい自己を作らんとする生き方が興味深かったんです。後半になるともう、主人公の心情の描写がしっちゃかめっちゃかになっていて、悪友と浮気性のナオミが次々に問題を引きおこし、まるで狂騒の坩堝に放り込まれたような熱のある展開で、その密度の濃い事件の描写がまた谷崎文学の醍醐味になっていると思います。
 なおみ、という名前は現代ではごく普通の女性名なんですけど、じつは欧米のNAOMIという名前をローマ字読みしたものをもらってきて、日本人の名前として定着した(ようだ……たぶん)というのを知って驚きました。直美とか菜緒美とか良く聞く自然な名前だと思うんですけど、近代以前にはほぼ存在しない名前だったようです。あと辞書で語源を調べると、縁起の良い言葉なんですよ。
 
 

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