今日は、夏目漱石の「野分」その(9)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
前回と今回の第8・9回の展開はちょっと意外なもので、それまでの鬱々とした文芸誌の編纂事情とは打って変わって、才能があって人気もある中野君が結婚をする話なんです。
漱石は「円満なる愛は触るるところのすべてを円満にす」とか「愛は堅きものを忌む。すべての硬性を溶化せねばやまぬ」と記します。
そういった華やかな披露宴に、いつも孤立している高柳くんがやって来ることになっていた。彼は中野君を祝福したいんですけれども、自分は招かれざる不運を運んでいるような人間だというような錯覚がある、だから親友の目出度い現場を「敵地」だとか思ってしまう。「高柳君の服装はこの日の来客中でもっとも憐れなる服装である」と記されています。高柳君は、幸福すぎる現場で、ぼんやりしています。この二人のギャップを漱石が描きだしていて、なんとも妙味のある場面に感じました。
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