細雪(27) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その27を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回の見合いは、はじめから婚約までゆくはずがないと決まっているのに、とりあえずやっておこう、ということでお見合いをすることになったんです。ところが、お見合いの取り仕切りをしている姉の幸子が、腹痛で寝込んでしまった、これがどうも流産だったんです。そもそも幸子にはもう十歳ちょっとになる悦子という子どもがいるんです。この前後の夫婦の会話に人情味があり、家族の複雑な心情が記されていて印象に残りました。
 
「あんた、堪忍かんにんしてくれはるわな」
「何が?」
「あたしが不注意やってんわ」
「そんなことがあるもんか。僕はかえって前途に希望がいたような気イしているねん」
  
 このあと世継ぎや家族の今後はどのようになるかと、さまざまに思いを巡らす夫婦の描写があり、雪子の縁談についてもいったん姉の幸子は遠慮することとなった。二十世紀中盤の海外では、この「細雪」がいちばん評価が高かったと思うんですが、読んでみるとたしかに、他の谷崎作品と比べてもすごい完成度だというように思いました。
 戦争中に大きな問題を解決しようと躍起になる大日本の軍部と比べて、ちょっとした縁起の悪さを気にかけて小さな問題のすりあわせについてえんえん描き続ける谷崎の文学性が印象に残ると思いました。今回の第27回は、細雪の中盤でどういうことが起きているのか、はっきり見えてくる場面ですので、全文の通読をしないかたは、この回だけを読むと作品が理解しやすくなるかと……思います。
  

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「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)