化け物の進化 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「化け物の進化」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 科学者が、妖怪についてどのように考えているかを、書いているのですけど、おもしろい随筆でした。
 白川静の漢字に関する随筆を読んだときの印象と、似たことを書いていて、学者はこういうように発想して考えを展開するんだ、と思いました。
 暗号的な符合が存在していて、それをとっぴょうしもないような仮説としてまずは位置づけて、そこから検証をしてゆく。検証の結果、謬説だとわかったらそれを斥ける。雷神というような存在と、科学的に有力な仮説とは、そのなり立ちに共通点があるようなんです。あと、この記述が印象に残りました。
quomark03 - 化け物の進化 寺田寅彦
  不幸にして科学が進歩するとともに科学というものの真価が誤解され、買いかぶられた結果として、化け物に対する世人の興味が不正当に希薄になったquomark end - 化け物の進化 寺田寅彦
 
 寺田寅彦は、物理学のみならず「潮汐の副振動の観測」など自然界を観察することも仕事の1つだったわけで、そういう人は神秘を排除しないとでも言えばいいのか、自然科学者って面白い考え方をもつもんだなあ、と思いました。
 寺田は「化け物は実際に当時のわれわれの世界にのびのびと生活していたのである。中学時代になってもまだわれわれと化け物との交渉は続いていた」と書いていて、まるで水木しげるみたいな幼少時代を過ごしていたようです。妖怪好きにはたまらない随筆でした。寺田寅彦はこういうことを書くんです。
quomark03 - 化け物の進化 寺田寅彦 
  神鳴りの正体を鬼だと思った先祖を笑う科学者が、百年後の科学者に同じように笑われないとだれが保証しうるであろう。quomark end - 化け物の進化 寺田寅彦
 
 寺田寅彦が、鎌鼬の正体を追った記述が興味深かったです。ニールス・ボーアのこともちょっと論じていました。

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雨の昼 宮本百合子

 今日は、宮本百合子の「雨の昼」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 宮本百合子と言えば、政治的な随筆が有名だと思うんですけど、今回のは映画と演劇の話しです。
quomark03 - 雨の昼 宮本百合子
  ……………彼女は啜泣きながらお祖母さんの手にすがって、「ねお祖母さん、じゃ人は一生に二度人を愛したり結婚したり出来るものなの? おお! では貞操っていうのは、どういうものなの?」ときくのだけれど、この大切な瞬間のお祖母さんはその経験ふかい白髪にかかわらず、さながら大きい棒パンのようにただ立って、切なげな表情をし……quomark end - 雨の昼 宮本百合子
 
 という記述が印象に残りました。読んでない物語の紹介を読むのも楽しいもんだと思いました。
 
 僕はつい先日、『ハンガンの怪物』を作った監督の最新作を見てきたんですけど、宮本百合子くらい上手に紹介出来たらここにいろいろ書くのになあと思いました。序盤と中盤の、貧しい人たちで結託する喜劇が、ほんとに見てて痛快だったんです。
 
 宮本百合子が、映画館の観客のことを、ちょっと描いているんですけど、今こういうようには書けない、当時の映画は特別なものであって、そのためにこんな丁寧な描写になるんだろうと思いました。

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晶子詩篇全集拾遺(15)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(15)を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 どこで聞いたのかどうもちょっと思い出せないんですけど、形容詞を2回つづけるのは表現として良くない、修飾を減らしてシンプルな文章を書いたほうが良いというハナシがあったのをおぼえていて、それでも文学には形容詞を畳みかける文体というのがたしかにあって、普通は記されないような方法で書くのが、文学の1つの特徴なのかな、と思いました。
 「白きたおやかな峰」とか、文学的な言葉づかいに思います。
「小やかな軽き朝飯」ってココだけを抜き出してみると奇妙なんですけれども、詩のはじめからさいごまで読むと華麗な印象の詩になっていました。
 

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卍 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「まんじ」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 谷崎潤一郎は、母語が関西弁じゃないんですけど、みごとに流暢な関西弁でこれを記しています。ぼくは生まれも育ちも関西なので、ニセ関西弁には敏感なほうだとおもうんですけど、この谷崎の方言は、みごとだと思います。
 ちょっと調べてみると、文学を記すためにわざわざ大阪の女と同棲してその言葉を生でえんえん聞きつつ書いたことがあるそうです。他にも関西弁の助手を雇って、言葉を書かせたりもしたそうです。
 それでも大阪生まれ大阪育ちの作家から見たら、この関西弁はちょっと、男女の言葉づかいの書き分けなどが不完全で、方言の理解がちょっと足りてないんだそうです。ぼくには完璧な関西弁に思えるんですけど……。谷崎潤一郎は、男女関係を描くのがこの時代にはありえないほど自然でおもしろく、今回はレズビアンの恋愛が印象的で、それから修羅場を描く時の迫力がすごい、というのが魅力だと思います。
 

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鍋料理の話 北大路魯山人

 今日は、北大路魯山人の「鍋料理の話 」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 近代の美食について、北大路魯山人が論じているんですが、日本は貝類の料理が上手なんだと言うんです。たしかにおだしの効いた貝の料理は美味しいですし、醤油だれで食う焼き貝は最高なんですけど、洋食だとそうはいかない。
 貝塚の時代から日本は、貝を食べることが伝統的なのかもしんないと、思いました。
 あと魯山人は、飯は出来たてこそが美味しい、だから鍋は誰もが楽しむ、というように書いていて、焼肉や自炊飯が美味しいのは、この出来たてで数秒後にくうから美味しいんだろうなとか、思いました。子どもの頃に、ごはんができたのに「ちょっとまって」と言っていると親からすごい怒られた、というのを思いだしました。
 魯山人の生活に根づいた美学もちょっと記されていて、面白い随筆でした。
  

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