晶子詩篇全集拾遺(33)

 

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(33)を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 現代人で詩集を読む習慣がある人は1パーセントにも満たないくらいだと思うんですけれども、じっさいに読んでみると、小説よりも自由な世界であることに驚きます。歌のように作られている詩もあれば、日記にしか見えない詩もあるし、映画の一場面のような詩もあれば、哲学書のような詩もあります。詩は構造上あまりにも自由すぎたので、詩集としての纏まりを保ちきれずに、音楽や日記やログや書物の中に浸透していって、現代では詩集という形式が霧消していったのではなかろうかと思いました。今回は、汽車の詩が印象に残りました。
 

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わが町 織田作之助

 今日は、織田作之助の「わが町」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は、日本が帝国主義と植民地政策を行っていた時代の、マニラに生きた人びとの物語です。バギオやバターンという地名が出てくるのですが、日本の帝国主義が終局に於いてもたらしたものは「バターン死の行進」日本軍の餓死者というような事態の連続だったのですが……織田作之助はその数十年前の状況を描いています。植民地政策の時代の日本人がどうやって暮らして、どのような不幸があって、なにを考えて生きていったかを丁寧に描いてゆくんです。明治三十七年(一九〇四年)から昭和にかけてのマニラと日本の出来事です。
 日本からマニラへの移民は、はじめは農民や炭鉱労働者などが主体で、開拓の仕事をやるために行ったんです。それが織田作之助が書くように「移民というよりは」「避難民めいた」状況で、「すべては約束とちがっていた」「脚気のために死んだ者が九十三人であった。マラリヤ、コレラ、赤痢」などの病で次々に亡くなっていった。
 二輪車で「客を拾って、他吉が走りだすと、君枝はよちよち随いて来た」。「マニラで死んだこの娘の父親がいまこの娘と一しょに走っているのだという気持」で祖父の他吉は、孫娘の君枝を育てていた。
 貧困と事故の問題が、現代の物語よりも深く考察されているように思いました。君枝という主人公の活発な生き方の描写がみごとで、これはおそらく、織田作之助の家族が実際に明るいから、ここまでリアルに描けるのだろうと思いました。終盤に、船の引き揚げの仕事をしているのですが、夫婦で働く姿の描写がすごかったです。この「わが町」という作品は新藤兼人監督のお師匠である溝口健二がつくった映画を小説にした作品なのだそうです。
 

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放し鰻 岡本綺堂

 今日は、岡本綺堂の「放し鰻」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 岡本綺堂は、倫理や道徳という縛りから、あきらかに外れているところがあって、それで先の展開が読めずに興味をひかれるんだと思います。それでいて明治や江戸の人情みたいなところが中心に描かれていたりもする。読み終えてから平吉がどういうミスをしちゃったのかなと思ってもういちど読んでみたんですけど、他人を信頼する時に、とても雑なところがあって、そこが原因でいろんなことが起きている。岡本綺堂の本を読んでいると、俗世間に生きる処世訓を説いた「菜根譚」のことをすこぶる思いだすんです。おそらく岡本綺堂が、世間の荒波というのを熟知しているから、そこで古典と共鳴をするんだと思います。

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論語物語(3) 下村湖人

 今日は、下村湖人の「論語物語」その3を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は「伯牛はくぎゅうやまいあり」というエピソードです。
 今回の物語に登場する、病身の伯牛は一人で黙考しているうちに「戦慄と、萎縮と、猜疑と、呪詛と」に嘖まれるんです。弛まずに学び続けた中国の偉人であっても、親友や師を逆恨みしてしまったりする。それには原因があって、せっかく学んだのに難病に冒されて心も病みつつあるからなんですけれども……。
 孔子は困っている弟子のことを、いったいどう考えるんだろうかと思いながら読みすすめました。
 孔子はなぜか、かつて共に苦労した話しを、伯牛に伝えるんです。
 今回、伯牛が「真似」という問題をすこし論じていたんですけど、最近なんだか気がついたことなんですけど、「倣う」というのは成長に重要なことで、成績の良い人を真似て学習すると能力も上がるわけで、なんでも真似るという習性が誰にでもあると思うんですけど、真似という行為をしていると、あることが起きるように思うんです。
 能力の高い人を真似ていると、なにが起きるかというと「危険」だけをとにかく吸い寄せてしまうと思うんです。投資でバリバリ稼いでいる人を真似ると、すごい借金を吸いよせてしまう。軽業師の真似をすると怪我をする。
 真似、という行為をして、いちばんさいしょにやって来るのは、その人が抱えているリスクだ、と思ったんです。ヘタをすると危険だけを自分の手元に吸いよせてしまう。
 オリジナルに行動している人は、リスクが目に見えた上でいろいろ独特な活動している。ぼくはコピペやマネが好きなんですけど、モノマネ師は、リスクが目に見えないまま形だけ真似るから、どこからリスクが飛び出してくるかが分からない状態なんです。
 孔子の物語を読んでいて、誇大妄想になっちゃったらどうしようと思って警戒していたんですけど、この翻訳者の下村湖人というのがあくまでも凡人の眼差しで中国の古典文化を読み解いていて、そういう危険性はけっこう無さそうだなと思ってホッとしながら読みすすめています。
 じっさいの孔子の考えは、以下の本文から読んでみてください。
 

0000 - 論語物語(3) 下村湖人

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『論語』はこちら(※論語の原文に近い日本語訳です)

月夜と眼鏡 小川未明

 今日は、小川未明の「月夜と眼鏡」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは子どものための童話ですけれど、大人でも楽しめる短編小説なんです。カズオイシグロの文学に登場する、記憶や世界認識に独自性をもつ人物像がぼくにはとても新鮮に感じられたのですが、今回の小川未明の描くおばあさんは、カズオイシグロが書こうとする人間と共通しているところがある……と思いました。小川未明の世界はもっと童話らしくて神秘的なんです。
quomark03 - 月夜と眼鏡 小川未明
 花園には、いろいろの花が、いまを盛りと咲いていました。昼間は、そこに、ちょうや、みつばちが集まっていて、にぎやかでありましたけれど、いまは、葉蔭で楽しい夢を見ながら休んでいるとみえて、まったく静かでした。quomark end - 月夜と眼鏡 小川未明
 

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長崎留学 中谷宇吉郎

 今日は、中谷宇吉郎の「長崎留学」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ぼくは、武家社会と維新のことについてうといんですけど、いつか知ってみたいと思っていて、ちょうどこの蘭学と維新の随筆を見つけて読んでみました。「覗かせてくれるという一番大切な点」という中谷宇吉郎の指摘が、ものすごく印象に残りました。たとえば映画を見ていて観客の自分たちは、ギャングやマフィアに感情移入して、その生き方を垣間見るんですけど……ほんのちょっとだけ、カケラだけでも理解してみるというのがなんだか、重大なような気がするんです。
 蘭学者は西洋の医学と文化を、つたない言語能力で垣間見た。このちょっとだけ『覗けるようになっている状況』というのがじつは、未知との遭遇としての価値があるように思いました。
 まだすこししか理解できていない、自分たちの不能が目に見えている、という条件のほうがかえって学びが深まる可能性が高い、ように思いました。
 

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晶子詩篇全集拾遺(32)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(32)を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 与謝野晶子の詩を読むと、ふだん目にしている文章とちがって、言葉が美しく構成されていることにいつも驚きます。言葉だけで立体的な情景を描き出していて、画家にとってはこういった文学が、モチーフの宝庫なのだろう……と思いました。
 むつかしい言葉を調べてみました。
 悒欝

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おりき 三好十郎

 今日は、三好十郎の「おりき」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 三好十郎は戦後にも読まれ続けた詩人であり劇作家なんですけれども、今回の本を読んでいると、あきらかに日本のファシズムを肯定的に描いている……のです。前半は、農村にまだ機械文明が上手く入りこんでおらず、貧困と労苦が絶えない状態が描かれています。後半はもう戦争への参加一色の物語になっていて、読んでいてこういう本は、まったくおすすめできない近代文学だ、と思いました。資料として読むのならまあ問題は無いと思うんですけど。ぼくはwikipediaの「ファシズムの定義」の頁と同時に読んでみました。ただ、じっさいの作中の当事者は、戦後の蔑称となった「ファシスト」とはまったく異なる、やむべからざる事態によって戦争に参加するしか無くなる状況が描かれていて……要するに強制的な徴兵なんですが、これに誰も疑問を感じず賛同しているところが戦後には見受けられない表現なんです。貧しい青年がこの日本のファシズムから逃れて自由になる具体的な方法は、当時は無かった、というのが読後の感想です。金持ちの家系なら、海外留学させたら徴兵されなかったらしく、じつは漱石も兵役逃れをやっていたわけなんですけど、それらはごく限られた知識人だけが出来た裏技であって、大多数の人は徴兵から逃れるのはほとんど無理だった。
 三好十郎はファシズム思想を持っていたかというと、この本で読んだ範囲では「ロマンチックで神秘的な側面を詰め込んだ、集会やシンボルなどの美学の構造」と「帝国を目指す」それから「新しいナショナリストの権威主義的な国家の作成に賛同している」の3箇所には当てはまる部分が色濃かったのですが、もっとも重大な「暴力主義」や「男尊女卑」や「理想主義的変革」や「カリスマ的命令形態」というのはいっさい存在していませんでした。
 与謝野晶子や夏目漱石がどのようにファシズムと対峙したのか、あるいはファシズムにどの箇所で加担していたのか、それを本を読みながら調べてゆくのは興味深い謎解きで、百年前の賢い人びとが危機に対してどういうふうに考えていたのかを、歴史上の事実と答え合わせしながら読んでゆくと、今の自分たちが分からないままやっていることが、のちのちどういうように展開してゆくのか、想像しやすくなると思うんです。ちょっと古い時代の変化を追うことで、文明の変化が自分たちをどのように変えてゆくのか、どこを警戒すべきかが、少しは見えてくるのではないかと思いながら、この大戦中の物語を読み終えてみました。
 

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論語物語(2) 下村湖人

 今日は、下村湖人の「論語物語」その2を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この物語ではなんだか孔子が、妙に人間的に描かれているところがあっておもしろかったです。孔子はしょっぱなから、弟子の子貢しこうに皮肉を言ったりするんです。孔子たちについて、どうにも偉人のイメージからはほど遠いことがいろいろ書かれています。「弁論のゆう」であるはずの「宰我さいが懶者なまけもので嘘つきだ」とか。「孔子の声はふるえていた」というようなところにも、偉大さとは異なる人間っぽい描写がありました。
 大器晩成というときにも記されている「器」というのを、孔子やその弟子たちがどのように考えていたのか、今回はそのことが描かれていました。本文の、この箇所が印象深かったです。
quomark03 - 論語物語(2) 下村湖人
  「子貢、何よりも自分を忘れる工夫をすることじゃ。自分の事ばかりにこだわっていては君子にはなれない。君子は徳を以てすべての人の才能を生かして行くが、それは自分を忘れることが出来るからじゃ。才人は自分の才能を誇る。そしてその才能だけで生きようとする。無論それで一かど世の中のお役には立つ。しかし自分を役立てるだけで人を役立てることが出来ないから、それはあたかも器のようなものじゃ。」quomark end - 論語物語(2) 下村湖人
 
 今回作中になんども出てくる「公冶長篇こうやちょうへん」というのは、『論語』の第五章のことらしいです。

 

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季節のない街 山本周五郎

 今日は、山本周五郎の「季節のない街」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 僕はこれを昨日はじめて全文、読んでみたんですけど、日本の映画で印象深かったものが、山本周五郎の小説の中にあまたに記されていて、映画と小説には、こんなに共通項があるのかと驚きました。
 山本周五郎は時代小説を主に描いたと思うんですが、今回のは戦後すぐを描いたものです。かなり現代人と共通項が多いように思います。
 この山本周五郎の小説はちょうど、近代と現代との……中間が描きだされた世界のように思えました。
 山本周五郎の本を読んだ人たちが、日本の映画の脚本を書いたはずだ、と思うところがいっぱいありました。「どですかでん」とか。
 じっさいはどういう事情で描かれたのか分からないのですが、この「季節のない街」は、戦争孤児のことを考えて物語を創っているように思う短編がいくつもありました。
 この小説は漱石や谷崎とちがって、読みにくい箇所が混じってるんです。とくに酒飲みの話しと、虚言癖から生じる政治論のところがかなりの難読箇所でした。ぼくは「肇くんと光子」という短編がいちばん楽しかったです。それから終盤「たんば老人」の「泥棒」に遭遇するエピソードが印象に残りました。
 いちばんはじめの六ちゃんが運転する幻の電車に導かれて、物語の世界に引き込まれてゆきます。戦争が終わったあとの世界が、いったいどういうものだったのかが垣間見えるように思いました。
 

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晶子詩篇全集拾遺(31)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(31)を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 与謝野晶子は、短歌を詠むことが本業であって、随筆や詩は中心的な活動では無かったのかもしれないのですが、ぼくとしては与謝野晶子の詩と随筆は、なんだか勉強になるような気がしました。文学の勉強と言うよりも、なにか処世術やものの考え方を教えてくれる人、という感じがします。詩というと……とくに日本の詩歌は、絵画のように美しさを感じとるものだという印象が強かったのですが、与謝野晶子の詩を読みつづけていると、哲学者の論考を読んでいるような感覚になることがあるんです。
 与謝野晶子は当時の世相とはまったく異なっていて、恋愛感情について繰り返し描くのもすてきなんです。それから、漱石が描きだした「淋しさ」を巡る物語というのは、もしかすると与謝野晶子のこんかいの詩に触発されて、描くようになったんじゃないかとか、そういう空想をしました。
 むつかしい言葉を調べてみました
 ほた

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時間からの影 ラヴクラフト

 今日は、ラヴクラフトの「時間からの影」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは……奇妙な記憶喪失に見舞われた学者が、悪夢に見た太古の巨大遺跡群を調査する物語なんです。子どもっぽい妄想も記されているんですけど……H.P.ラヴクラフトはあまたの怪異と、まがまがしい巨大建築群を描きだしたホラー小説家なんです。ラヴクラフトが原典としたものは何か、というと、おそらくGustave Doreの絵画を幾度も引用しているのでドレの絵画から着想を得ていると思うんです。(他にもまあ、ゴヤの絵画も参照しているんですけれども)
 ドレといえばダンテの『神曲』の装画を何十枚と描いた画家ですし、となると『神曲』地獄篇こそが、ラヴクラフトの悪夢の原典、その一つかもしれないです。
 ラヴクラフトは、まがまがしい存在を全て漆黒の中に隠し、暗黒だけを恐怖の中心に据えたのが、独自の特徴なんだと思いました。古典的なホラー小説を、全文読んでみました。
 

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((CC BY 3.0)*著作権存続* ※この翻訳は、「クリエイティブ・コモンズ 表示 3.0 非移植 ライセンス」によって公開されています。
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