論語物語(16) 下村湖人

 

 今日は、下村湖人の「論語物語」その16を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 見知らぬ老翁がやってきて、孔子と話しをしたいという。この老翁は関所役人で、四十年間もずっと番人をしてきた人です。ふつうのお偉いさんなら相手にしないはずのところ、礼を重んじる孔子は、その人と話し込んだ。孔子の考えとしては「人を知らざるをうれう」ということで、知らない人について知ろうとする意志が強い。
 老翁は帰り際に、
「(孔子)先生を魯の国だけに閉じこめて、役人などさして置くのは、勿体ないとは思いませぬかな。」
と孔子の弟子たちに言うんです。賛成派の身内とだけつき合っていては危険だ、とは思うんですけど、じっさいに弟子たちが見落としがちなことを、下村湖人が上手く表現しているように思いました。それから権力者にすり寄る態度をこの論語では批判しているんです。詳しくは本文をご覧ください。

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夢 和辻哲郎

 今日は、和辻哲郎の「夢」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 和辻哲郎が、夜に見る夢の話しを書いています。夏目漱石の「夢十夜」を連想しました。賢人に夢の話しをする、という奇妙な話しから随筆がはじまります。
 「夢」というのだからいっけん幻想的な随筆が展開するのかと思っていたら、第二次大戦の空襲の惨禍を、和辻哲郎がほんとうに予知夢のように見てしまって、数年後に本物の空襲を受けて、悪夢が現実になってしまった、という話しからはじまったのです……が、そのあと戦後になって「シカゴで共和党の大統領候補者指名大会が開かれ、新聞にデカデカとその記事がのる」ようになったころ、つまり1952年ごろに、就寝中に見た、不思議な夢のことを、和辻哲郎が書いています。
 作中、夢の中では和辻哲郎が、選挙のための大会の宣言をするために演説しなければならなくなったんです。夢の中で、アメリカと日本がごっちゃになってしまっている。これは夢であっても自分は見たことがないです。ぼくはなぜか、監獄の中にいる夢や、逃走中の夢や、鳥のように中空を移動をする夢はよく見るんですけど、政治の夢はほぼまったく見たことがないです。
quomark03 - 夢 和辻哲郎
 大会の宣言演説はテレヴィジョンで全世界に報道される。それはまことに花やかな役目であるかも知れないが…………quomark end - 夢 和辻哲郎
 
 ここから先の、ちょっとマヌケな旅路の描写がおもしろかったです。日本の古い習俗の描写と、とうとつな大統領選挙の様子とのミスマッチさが絶妙でした。勝手に解釈を試みてみると、戦中と戦後で、心理状態がガラッと変わった。その世相の奇妙さが、夢の中に立ち現れてきているんだと思いました。
 ところで、本文と関係が無いんですけど、つい先日アメリカ初の女性副大統領が誕生して、在米アジア人にとっては旧政権の退陣は非常に重要な問題で、今回の選挙結果は望まれていた事態が、辛くも実現に至ったのだと思いました。ちょっとwikipediaで調べてみるとアメリカの歴代の副大統領は将来的に大統領になる可能性もあるんですね。
 和辻哲郎が2020年に小説かエッセーを書いたら、どういうことを書くんだろうか……と思いました。もうなんというか、漱石の「夢十夜」の、第十一夜なんじゃないかと、思うような、不思議な随筆でした。
 

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言語は生きている 中井正一

 今日は、中井正一の「言語は生きている」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 subjectという言葉の、語源と変化について、哲学者の中井正一氏がさまざまに書いているのですが、言葉の使われ方の変化を追ってゆき、意味そのものが転じていった史実が示され、流転する世界のことまで話しが及んでゆきます。言葉の細部からはじまって、世界の様々な歴史へと射程が広がってゆく話しの展開に引き込まれました。「張、晴、春」といった「ハル」の語群についての考察もみごとに文学的でおもしろかったです。
 

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晶子詩篇全集拾遺(45)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(45)を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「くわりんの香り」のことを記す詩がすてきでした。
 

0000 - 晶子詩篇全集拾遺(45)

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小景 宮本百合子

 今日は、宮本百合子の「小景」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 物としての本の価値を、作家自身が描いている場面があるのですが、その描写がすてきでした。本文こうです。
quomark03 - 小景 宮本百合子
  私は、一冊本が買えても買えなくても、多くの場合、同じように愉快であった。彼処に、あの煉瓦の建物の中に、彼那にぎっしり、いろいろの絵と文字で埋まった書籍がつまっているのだ。それを知っている丈でも、豊かなよい心持でないか。quomark end - 小景 宮本百合子
 
 物を野方図に手に入れられる状態にあると、むしろその価値を見失ってしまうわけで、百年前のほうがかえって、ものの価値が見えやすく、そこにも近代文学の魅力があるように思いました。
 宮本百合子はこの「小景」で、見ることと眺めることを丁寧に描きだしてゆきます。「美しいものをしんから愛するものは、或る場合痴人のように寛大だ。然し或る時は、狂人のように潔癖だ。」という一文や、ほかにもあまたに美への憧憬が記されています。後半の、貧しさの中で生きる少女への思い、その描写が印象に残りました。
 

0000 - 小景 宮本百合子

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秋 萩原朔太郎

 今日は、萩原朔太郎の「秋」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは萩原朔太郎の一篇の詩です。草木と野分という言葉が印象に残ったのですが、与謝野晶子訳の源氏物語「野分」にはこのような一文があります。
quomark03 - 秋 萩原朔太郎
  今年の野分のわきの風は例年よりも強い勢いで空の色も変わるほどに吹き出した。草花のしおれるのを見てはそれほど自然に対する愛のあるのでもない浅はかな人さえも心が痛むのであるから、まして露の吹き散らされて無惨むざんに乱れていく秋草を御覧になる宮は御病気にもおなりにならぬかと思われるほどの御心配をあそばされた。おおうばかりのそでというものは春の桜によりも実際は秋空の前に必要なものかと思われた。日が暮れてゆくにしたがってしいたげられる草木の影は見えずに、風の音ばかりのつのってくるのも恐ろしかったが、格子なども皆おろしてしまったので宮はただ草の花を哀れにお思いになるよりほかしかたもおありにならなかった。quomark end - 秋 萩原朔太郎
 
 読み比べてみると、萩原朔太郎の風景描写の柔らかな表現が際立つように思いました。
 

0000 - 秋 萩原朔太郎

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