断片 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「断片」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 馬車が倒れて、馬が怪我をしてしまったのを見た、というところからこの随筆の描写がはじまります。動物虐待防止という言葉そのものは嫌いなのだが、じっさいに馬が苦におちいっている様子を見ると感情移入をしてしまう、というように書いていました。「馬の方は物を云わないから」かえって「余計に心をひかれ」てこの馬のことが忘れられなくなる。
 断片、と書いているようにこんかいの3つの随筆にはあまり関連性が無いんです。
 寺田寅彦は、趣味で風景画を描いているときも、地形を科学的に分析していて、なんだかすごいんです。友人に贈りものをするときにも、どうも哲学的なことを考えている、寺田寅彦なのでした。
 

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学問のすすめ(4)福沢諭吉

 今日は、福沢諭吉の「学問のすすめ」その4を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は、政府と知識人の良い関わりと、悪い関わりのことを書いていました。ほかにも権力を怖れてはならないとか、権力に媚びへつらってはならないとか、書いていました。
 前回、国が独立するには個々人が独立していないといけない、ということを説いていました。今回は、国力がつくには、人々が賢くなって学術や商売や法律をそれぞれ独立して個別に発展させないといけない、それにはどういう人が重要か、ということを書いているんです。福沢諭吉は「学術・商売・法律」が他国と比べて劣っている理由があるはずだと論じています。
 それはこれらのとくに学術や洋学を担う中心人物たちが、古い儒教の影響もあって、日本の権力に媚びへつらっていて権力から独立できておらずにひどい状態だからだ、というように福沢諭吉は指摘していました。政府に頼らなくても、学術を深めたり豊かに生活したりできるはずなのに、多くの近代知識人はそれが出来ないと思い込んでいるのがまずい、という指摘でした。たしかに近代でも、牧野富太郎博士とか、宮沢賢治や、与謝野晶子が、独立して学問を深めていたように思えます。
 今回はとくに、数十年後という近未来の不都合について論じようとしていて、これが日本近代史における負の年表と見比べると、福沢諭吉が憂慮していることと、近代日本の問題が適合しているところが多く、読んでいて呻る箇所がいくつもありました。
 あと、愚かにならないためには芸や能力を個別にみがいて、他人に媚びなくても豊かに生きられるように学びましょうということを前回と今回で書いていました。
 作中で「○○なかるべからず」というのは直訳すると「○○無いことはぜったい無い」という感じで「○○しなくてはならない」という意味です。現代ではほとんど使われない二重否定の言葉です。「飲食なかるべからず」というのは「飲食しないといけません」という意味です。
 

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★ 『学問のすすめ』第一編(初編)から第一七編まで全文を通読する

 賢い人も集団の中に入ると、恥を忘れて愚かになってしまう近代日本の問題点も指摘していました。権力者は、ごまかしを用いながら、人々が賢くなるのを待つものだが、権力者と人々は過去にあった負の仕組みに囚われていて、両者の溝はなかなか埋まらない、というのはなんだかすごい指摘に思いました。
 

カラー アンデルセン

 今日は、アンデルセンの「カラー」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 collarカラーというのはワイシャツのえり、のことで、今回はこのワイシャツの「カラー芯」とか「カラーキーパー」とかいわれる、シャツのエリにはめ込む小さな板のことを、カラーと記しています。カラーがいろいろ話し込む、なんだか可愛らしいお話しなんです。
 

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 最後がちょっともの悲しいんです。アンデルセンは、百数十年も愛読された作家なんですが、個人的な恋愛はもの悲しいものが多かったらしいです。

春深く 久保田万太郎

 今日は、久保田万太郎の「春深く」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 二十九歳の春に、群馬県の磯部を旅した。
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  磯部を選んだのは、島崎(藤村)先生のたしか「芽生」のなかにそこのことが出て来るのと岡本(綺堂)さんが、その少しまえ、そこへ暫しばらく行っていられたというのを聞いたのと、そうした二つの理由からだった。quomark end - 春深く 久保田万太郎

 島崎藤村と岡本綺堂が好む旅先ということで、文学的な空想を脹らませながらこの地を訪れた「わたし」は、奇妙な事態に遭遇します。
quomark03 - 春深く 久保田万太郎
 切符をわたして思った以上に小さい、人けのないガランとした停車場の構内を出ると、繁り切った桜の嫩葉わかばの、雨を含んだ陰鬱な匂がしずかにわたしに迫った。——あたりはもう灯火のほしいほどに暮れかけていた。
「鳳来館まで。」
 二、三人、わたしをみてそばへ寄って来た車夫の一人にわたしはいった。quomark end - 春深く 久保田万太郎
  
 期待して訪れた宿は、ずいぶん寂れていて汚かった。一人でなにも持たずに、文豪が好む、噂の場所を訪れても、なにも起きなかった。本文こうです。
quomark03 - 春深く 久保田万太郎
  要するに、島崎先生と岡本さんの好みにあうところならと思ったのがそもそもの間違いだった。島崎先生なればこそ、岡本さんなればこそ、それぞれ折合えるものもみ出されたのである。(略)風の絶えた墓原のようにわたしには心細い場所だった。quomark end - 春深く 久保田万太郎
 
 空虚で漠とした描写がかえって、奇妙な旅情を捉えているように思えました。日本近代の随筆の特徴がよくあらわれた作品に思いました。
 

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ゲーテ詩集(56)

今日は「ゲーテ詩集」その56を配信します。縦書き表示で読めますよ。
「娘たちとは仲よくし/男たちとはなぐり合ひ/……/心の底から愉快でいろ」というゲーテの豪快な詩でした。闘うシカみたいなことを人間の世界で実現する方法……のようなことを書いているのでした。
 

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疲れやつれた美しい顔 中原中也

 今日は、中原中也の「疲れやつれた美しい顔」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはほんの一頁の詩です。疲れやつれた美しい顔……を、たとえる時の詩の言葉が印象に残りました。中原中也の詩を読み通してみたくなるような一篇の詩でした。
 

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中原中也の詩集は「山羊の歌」がお薦めです。……「香となつて籠る壺」。