麻雀インチキ物語 海野十三

 今日は、海野十三の「麻雀インチキ物語」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 海野十三が、麻雀のイカサマについてことこまかに記しています。「物語」と書いているんですが、イカサマ技の数々を羅列していることが主体のエッセーです。現代では出来ない技も多数あるように思います。
 麻雀のイカサマ技というと、手品師レベルに上手い人が、手配と山の配をすり替えるのが、もっとも見破りにくいのかと思うんですが、もっと初歩的なもので、アガリに見せかけて配がそろってないまま勝利宣言をしてしまう、というのがまずあるそうです。
 場が荒れている状況では、自分の盤面を見るだけではなく、対戦相手の動向をじっくり見なければ、という指摘がありました。
 ギャンブラーの最上級者は、ぼくはカジノに現れる数学者だと思うんです。ルールをすべて守って、暗記や確率論を使って、ほぼ必勝のギャンブルをするそうです。カジノ側は不正をしていない人であっても、勝ち続ける数学者を出入り禁止にする権利があるそうです。
 

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言語と道具 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「言語と道具」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 人類は、言葉と道具を両方使えるところに特別な特徴がある……言語はどのように生じたのかを論じた随筆です。
 動物でもじつはゴリラは、単純な言葉を持っていて、葉っぱや木の枝を道具にするし、ハチには図形を用いて情報を伝達する言葉があるし、巣作りをしてそれを道具にしているようにも思います。
 寺田寅彦は、普段まったく意識していない、原始的な言葉がどのように人類全体に行き渡っていったか、言葉の根本のところについて検討していました。なんだか計算機がまだほとんど存在しない時代に、チューリングが暗号解読のための計算機械をはじめて開発した、その方法はどういうものだったか、を連想させるようなエッセーでした。
  

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断食芸人フランツ・カフカ

 今日は、フランツ・カフカの「断食芸人」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 あの「変身」を描いたカフカが、断食する男のことを書いていて、なんだか引き込まれました。ちょっと調べてみると、人間の場合は5日間くらいずっと水を飲まないと非常に危険で死んでしまうそうですが、液体を飲んで良い断食というとかなり安定して長期的に暮らせるそうです。そういえば、砂漠に生きる現代人はそもそも、ミルクとチーズだけでずっと生きている人たちがほんとに居るわけですし、固形物を大量に食べる必要はあんまり無いのでは、と思ったことがあります。長寿の秘訣には、豚肉の野菜炒めを日常的に食べるのがいちばんだ、というのも聞いたことがあるんですけど。
アンガス・バルビエーリという奇妙なスコットランド人のことを連想しました。
 

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wikipediaには断食に関する記載でこう記していました。
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  ギネスの職員によれば、「安全でない」行動が奨励されることへの懸念から、ギネスは断食に関する記録を受け入れるのを止めたという。quomark end - 断食芸人フランツ・カフカ
 
 カフカには、近現代人の意識の変容のありさまを上手く予測する能力があって、それで創作に説得力があってみごとなんだろうと思います。
 終盤で、豹が突然現れるのが、不思議な隠喩の効果をもたらしているように、思われました。

 

『劉生画集及芸術観』について 和辻哲郎

 今日は、和辻哲郎の「劉生画集及芸術観について」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ふつう思想家は他人を褒めずに、批判的に問題点を指摘するもんだと思っていたんですが、今回の哲学者和辻哲郎は、岸田劉生の画業を絶賛しています。日本語に聡い学者が、何かを褒めるとこんなにすごい文章になるのかと、本文と関係の無いところで楽しんで読んでしまったんですけど、和辻氏は、岸田劉生の論文についても検討し、これを論じています。
「享楽的浮浪人としての画家、道義的価値に無関心な官能の使徒としての画家」とは異なる、人々の生に奉仕する思想と画業とが、岸田劉生にはある、というところから記し「人類の内に生き人類の意志を意志とする」芸術の精神について語り、「芸術家のための芸術」とは異なる「美のための美を」つくる芸術について説き、岸田劉生の考える「内なる美」「装飾」「写実」について解説していました。
 とくに、ドストエフスキーや『イリアス』や岸田作品に通底している「内なる美」ということを論じた箇所が、興味深かったです。

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鏡中の美女 マクドナルド

 今日は、マクドナルドの「鏡中の美女」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 スコットランド生まれのジョージ・マクドナルドによって描きだされた、古い鏡に見入られた青年の物語です。
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 鏡のうちを見つめてちあがるや、彼は異常の驚きに打たれた。鏡にうつっている部屋のドアをあけて、音もなく、声もなく、全身に白い物をまとっている婦人の美しい姿があらわれたのである。婦人は憂わしげな、消ゆるがごとき足取りで、彼に背中をみせながら、しずかに部屋のはずれの寝台に行き、わびしげにそこへ腰をおろして、悩ましげな、悲しげな表情をその美しい眼に浮かべながら、無言の愛情をこめた顔をコスモの方へ振り向けた。quomark end - 鏡中の美女 マクドナルド
 
 なんだか、源氏物語の「夕顔」を連想させるような、西洋の美しい物語でした。
 
 

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追記  鏡をつるぎで一撃しただけでは怪異は終わらず、そこからさらに神秘的な展開があり、喪失した鏡と姫がどうなったのか、究明篇が開始されるのがみごとでした。いぜん読んだ現代漫画の原典は、じつはこれなのでは……と思えるような雅な物語でした。おもしろいのは、終盤の主人公の行動と、主人公が破局に至る重大なシーンを、作者が意図的に飛ばして最後の局面をいきなり描いているところで、姫と青年の恋の理由も同様に、飛躍をしていていきなり結びついているところが、神秘的ですてきでした。

不良少年とキリスト 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「不良少年とキリスト」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 太宰治は、名門や良家というところに妙なこだわりがあったり、志賀直哉が記した文章に太宰治が激しく反応をした、そこに太宰の文学性と人生の秘密がある、というように安吾が指摘しています。坂口安吾は太宰や芥川についてこう書いていました。
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  彼らの文学は本来孤独の文学で、現世的、ファン的なものとツナガルところはない筈であるのに、つまり、彼らは、舞台の上のM・Cになりきる強靭さが欠けていて、その弱さを現世的におぎなうようになったのだろうと私は思う。quomark end - 不良少年とキリスト 坂口安吾
 
  「太宰の一番かくしたい秘密」のことについて、序盤に論考していました。作中に記された「MC」というのは、太宰治の「斜陽」に書かれたもので「私のチェーホフ」あるいは「マイ・チャイルド」または「マイ・コメディアン」という意味があるそうです。
 坂口安吾は大酒飲みで泥酔状態の時にさえいろいろ書いた作家なんですけど、太宰治がアル中でヘベレケだったという、今回の作品に記された箇所はどうも事実から遠いように思うんです。本作に描かれた太宰治の像は、作家の太宰治と言うよりも、坂口安吾が思い描いた、一人の仮想の登場人物として読めるのでは、と思いました。戦後すぐの安吾の死生観が色濃く書きあらわされた随筆に思いました。
 終わりのほうで熱心に、戦争と学問について記しているんですけど、坂口安吾は哲学全般について批判的に記しつつ、こう書きます。
quomark03 - 不良少年とキリスト 坂口安吾
  私はこの戦争のおかげで、原子バクダンは学問じゃない、子供の遊びは学問じゃない、戦争も学問じゃない、ということを教えられた。大ゲサなものを、買いかぶっていたのだ。
 学問は、限度の発見だ。私は、そのために戦う。quomark end - 不良少年とキリスト 坂口安吾
 

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追記  戦争を抑止する政治学や、核による害を減少させる技術については、学問だと思うんですけれども……。