化鳥 泉鏡花

 今日は、泉鏡花の「化鳥」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 泉鏡花の代表作は、子どもが重大な役を果たしていたりして、子どもから見た世界が描かれていることが多いのだ、と思いました。とくに母と子の交流というのが印象深いんです。
 先生よりも、動物の生き方のほうが智慧があって美しいのではないか、と考える幼子の心理が詳らかに記されてゆきます。母から教えられたことのほうが重大に思える。
 鳥や草木が人間に見える、また人のことを鳥や動物のように感じる。特定の人間を動物に見せかけて表現すると人種差別になると思うんですけれども、泉鏡花の場合は全人類と動物の垣根が取り払われている心理を書いています。
 近代文学の魅力のひとつに、自然界と人類との垣根があいまいで、その描写が現代作品よりも色濃いというところがあるように思いました。
 泉鏡花の物語を読んでいると、世界への認識を見失ってしまったような、幼い頃に迷子になってどこに何があるか分からなくなっている感覚が生じるような気がしました。
 

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(総ページ数/約20頁 ロード時間/約10秒)
 

トカトントン 太宰治

 今日は、太宰治の「トカトントン」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 戦後に太宰は小説で、このように記しています。

  何か物事に感激し、奮い立とうとすると、どこからとも無く、幽かに、トカトントンとあの金槌の音が聞えて来て、とたんに私はきょろりとなり、眼前の風景がまるでもう一変してしまって、映写がふっと中絶してあとにはただ純白のスクリンだけが残り、それをまじまじと眺めているような…………
 
 戦争の危機が去ったあとに無気力にさいなまれていた主人公に対する、親戚の発言に、こういうのがあるんです。「お前は頭が悪いくせに、むずかしい本を読むからそうなる。俺やお前のように、頭の悪い男は、むずかしい事を考えないようにするのがいいのだ」
 中盤で絵画や音楽の話しが挿入されるんですけれども、それがじつにみごとで……。それから泉鏡花の「歌行燈」のことも記していました。こんど読んでみようと思います。
 それから政治に関する複雑な描写があるのですが、太宰治の経歴をwikipediaで読んでいると、15年戦争のはじまるころに、左翼運動をしてこれに挫折している。野間宏が描いた大長編の『青年の環』に登場する、特高に狙われた左翼青年のような人生があったようだ、というのを知りました。
 

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台風19号で被害にあわれた皆様に、謹んでお見舞い申し上げます。
少額ですが、こちらのサイトから募金させていただきました。
https://donation.yahoo.co.jp/category/10/
 

 
 

蜘蛛の糸 芥川龍之介

 今日は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは天国のお釈迦様から見た、地獄の住人である犍陀多かんだたの、物語なんです。
 文体が美しく、犍陀多の過去とそれからを空想したくなる小説です。

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トロッコ 芥川龍之介

 今日は、芥川龍之介の「トロッコ」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この作品は有名な短編文学なんですけど、すこし奇妙なことが書いてあるように思いました。芥川龍之介は中国の古い怪異譚をリライトした物語がいくつかあって、それはもっと劇的で分かりやすいです。トロッコはそれらよりも地味な物語です。
 仕事にならないところから、仕事を見る子どもの話しなんです。仕事の手伝いをやってみたくて、じっさいにトロッコを押す仕事をさせてもらうんですけれど、目的や意図は大人のそれとは異なっている。こういうのは現代でも起きているはずで、ゲーム業界で起きていることは、現実の仕事でも起きてゆく。たいていは遊びのほうが仕事よりも潮流を先取りしているように思います。古い物語を読んでいると、今の仕組みがちょっと見えるような気がしました。よく読んでみると、主人公は大人になってから肉体労働者ではなくデスクワークの仕事に就いているんですよ。そこがなにか印象に残りました。幼時から大人への変化のみならず、時代そのものの変化についても描いているように思いました。
 幼いころは、そういえば知らない町を歩くことがなにかとても特別なことに思えたのだ、というのを思いだしました。
 

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山月記 中島敦

 今日は、中島敦の「山月記」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「山月記」は格調高い文体で、やや読むのがむつかしい作品なんですけど、youtubeの朗読動画を聞きつつ、音読しながら読んでみると、これがすんなりと物語として理解できるんです。中国の伝統的な映画とやはり共通項がある。こんな異国情緒豊かな古い物語をよく描けるものだと思って経歴を調べてみると、中島敦は長年の異邦人だった。はじめは朝鮮の学校に通っていて、それから日本からずっと南に行ったパラオで暮らしていた。
 異国で生きる、というのが中島敦のほんとうだった。それがこのように迫力のある物語に昇華したのだろうと、思いました。

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