走れメロス 太宰治

 今日は、太宰治の「走れメロス」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは太宰治の代表的な作品で、身代わりとなった友を救いにゆく物語なんですけど、太宰治が原典としたのは小栗孝則の翻訳した『新編シラー詩抄』の『人質』という詩だそうです。再読してみると、水や濁流や泉の描写がみごとで、水と渇きの対比が鮮やかな文学作品だと感じました。本文こうです。
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  ふと耳に、潺々せんせん、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々こんこんと、何か小さくささやきながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手ですくって、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。……quomark end - 走れメロス 太宰治
 
 ところでシラーの長詩『人質』はここで全文よめるんですよ。なるほど創作というよりも翻訳作品にちかいものだったんだなーとか、太宰治は演劇の舞台みたいに作品を描きだしたんだとか、この「走れメロス」は、太宰の作品と言うよりもシラーの作品という感じがするとか、「メロスは激怒した」というはじまりの文章は太宰治の完全なオリジナルの文章なんだとか、未完の原稿を二校に推敲する時は、太宰はこういう感じで書き直していたのかもしれない、と思いました。
 

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 

女生徒 太宰治

 今日は、太宰治の「女生徒」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 主人公が朝めざめるところからはじまって、夜に眠るところで終わる物語で、学校帰りの「とうとう道傍の草原に、ペタリと坐ってしまった」とこから帰宅した家の中の描写が印象に残りました。ぼくは「新ちゃん」のことが語られはじめたところから、太宰治の物語世界に惹き付けられました。
 昼すぎから夜になって星が見えるようになってくるにしたがって、神秘的な童話、のような感性にかたむいてゆくのが美しい物語展開に思いました。
 けっこう謎めいた箇所があって「きっと、誰かが間違っている。わるいのは」……という箇所の「あなた」という言葉の示している先が、どうも作中にひとつも存在していなかったりするんです。「世間というのは、君じゃないか」という一文が太宰治の文学の中でとても有名だと思うんですけど、こんかいの作中に四回しるされている「あなた」を巡ることばの示しているものの先の存在感が、なんとも不思議で、終盤が魅力的な小説でした。
 

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夏の花 原民喜

 今日は、原民喜の「夏の花」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 原民喜は、被爆する以前に児童文学を書いていた作家で、その小説家が原爆の直撃を受けて生き残り、その被害を正確に記していったのがこの「夏の花」の内容です。原民喜は戦争の被害の事実を克明に記しているので、中盤であまりにも凄惨な描写が続くのですが、行方不明だった中学生の甥が帰ってきた、そのあとの描写を読んでいて唸りました。冒頭では、主人公「私」が、まるで戦争の被害を受けていないころに、亡くなっていった妻の墓を訪れる場面が描かれます。この最初の描写が美しいんです。これが終盤の「N」の彷徨と共鳴していて、読み終えた時に、平和と戦時が二重写しに描きだされて、唐突に現実世界に引き戻されたように思いました。wikipediaの解説が詳細で、参考になりました。また原民喜の小説を読むのなら、広島文学資料室webサイトを併せて閲覧することをお勧めします。
quomark03 - 夏の花 原民喜
  香はしき山々の上にありて獐の
ごとく小鹿のごとくあれquomark end - 夏の花 原民喜
 
 という冒頭の詩の言葉が印象に残りました。
 

0000 - 夏の花 原民喜

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輝ける朝 水野仙子

 今日は、水野仙子の「輝ける朝」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ぼくはこれを数年前に読んだのですが、今読んでみると、なんだかすごく響いてきました。病と生について、水野仙子は書いています。
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 病氣がかうしてだんだん快くなつて見れば、やつぱり嬉しい。助かつたやうな氣がする。そしてその助かつたやうな氣のするところから、これまでにない命の貴さが感じられる。quomark end - 輝ける朝 水野仙子
 
「思ひもかけぬ青空が」……という小説の一文が印象に残りました。
 

0000 - 輝ける朝 水野仙子

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魔の退屈 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「魔の退屈」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 坂口安吾は戦争中に、いったいどうやって働いていたかというと、映画会社で脚本を書く仕事をしていたのだそうです。そういえば映画会社は当時、軍部からも国家からも重要視されていたので、そのために坂口安吾は戦地の最前線に送られて皆餓死する、という最大の危険性から、回避できていたようです。
 作中に書いているのですが「思想犯で警察のブタバコ暮しを余儀なくされて出てきたばかりであつた」人々は安吾の周りにあまたに居たのでした。
 安吾は黄河を撮る映画の脚本を担当していたのですけど、それはもう敗戦寸前だったため、あきらかに実現不可能な仕事だった。本文こうです。
quomark03 - 魔の退屈 坂口安吾
  黄河とは如何なる怪物的な性格をもつた独特な大河であるかといふ、歴史的地理的な文化映画の脚本……(略)quomark end - 魔の退屈 坂口安吾
 
 敗戦寸前の状況で中国の映画を作るというのは「全然無意味で、敗戦と共に永遠に流れて消える水の泡にすぎない」と書いているのですが、その無意味だった時間に、黄河の歴史の勉強をしたことには価値があった。時代が変化した時に、その後も役に立つことと、役に立たなくなることとが、ある……と思いました。
 

0000 - 魔の退屈 坂口安吾

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 

イワンの馬鹿 トルストイ

 今日は、トルストイの「イワンの馬鹿」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この物語に登場するイワンはたしかに馬鹿なんですけど、だれもかれも、全員なんだか間が抜けてるんです。イワンに災いをもたらしにきた悪魔もどこかこっけいです。話し自体がこっけいなんです。本文こうです。
quomark03 - イワンの馬鹿 トルストイ
  ところが、それを年よった悪魔が見ていました。悪魔は、兄弟たちが財産の分け方でけんかをするだろうと思っていたのに、べつにいさかいもなく、仲良く別れて行ったので大へん腹を立てて、早速三人の小悪魔しょうあくまを呼び集めました。そして言いました。quomark end - イワンの馬鹿 トルストイ
 
 ヨブ記のヨブに災いをもたらす魔王は、まさしく悪魔の所行をするわけですけど、このトルストイに登場する小悪魔は、単に面白いことをするんです。苦しめられるはずの三兄弟はみんな王さまになってしまいますし。トルストイというと真面目で堅い文学を作った人だという印象があったんですけど(ぼくは「光あるうち光の中を歩め」をいまだに読み終えられていないです)……この童話は名作であるというだけではなくて、シンプルに笑えるシーンがいくつもあって、楽しいように思いました。
 

0000 - イワンの馬鹿 トルストイ

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(この本には配慮すべき用語が含まれています。不用意に用語を使われないように充分にご注意ください)