夕暮の窓より 小川未明

 今日は、小川未明の「夕暮の窓より」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 海外の哲学者は詩をあまたに書く、と聞いた時に、近現代の日本文化に、そういうものがあるんだろうかと思って驚いたんです。
 今回の小川未明は、いつもの童話とはちがって、散文詩と思索の入り混じったようなものを書いていて、なんだかすてきでした。
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 私は、時間といい、また空間という、仮定された思想のために多くの人々が、生活を誤謬の淵底に導きつゝあることを知った。此世に時間というものはない。此の世に空間と名づけられた形あるものもない。ただ、それが観念に過ぎぬと知った時に自分等の生活は、時間と空間の中に営まれているべきものとは思われない。quomark end - 夕暮の窓より 小川未明
 

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追記  小川未明の童話の中に時折、賢治の描いた石炭袋のような不思議な気配が生じていることがあると思うのですが、それを小川未明が書いた事由が、本稿の終盤に記されていると思いました。

麻雀インチキ物語 海野十三

 今日は、海野十三の「麻雀インチキ物語」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 海野十三が、麻雀のイカサマについてことこまかに記しています。「物語」と書いているんですが、イカサマ技の数々を羅列していることが主体のエッセーです。現代では出来ない技も多数あるように思います。
 麻雀のイカサマ技というと、手品師レベルに上手い人が、手配と山の配をすり替えるのが、もっとも見破りにくいのかと思うんですが、もっと初歩的なもので、アガリに見せかけて配がそろってないまま勝利宣言をしてしまう、というのがまずあるそうです。
 場が荒れている状況では、自分の盤面を見るだけではなく、対戦相手の動向をじっくり見なければ、という指摘がありました。
 ギャンブラーの最上級者は、ぼくはカジノに現れる数学者だと思うんです。ルールをすべて守って、暗記や確率論を使って、ほぼ必勝のギャンブルをするそうです。カジノ側は不正をしていない人であっても、勝ち続ける数学者を出入り禁止にする権利があるそうです。
 

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言語と道具 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「言語と道具」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 人類は、言葉と道具を両方使えるところに特別な特徴がある……言語はどのように生じたのかを論じた随筆です。
 動物でもじつはゴリラは、単純な言葉を持っていて、葉っぱや木の枝を道具にするし、ハチには図形を用いて情報を伝達する言葉があるし、巣作りをしてそれを道具にしているようにも思います。
 寺田寅彦は、普段まったく意識していない、原始的な言葉がどのように人類全体に行き渡っていったか、言葉の根本のところについて検討していました。なんだか計算機がまだほとんど存在しない時代に、チューリングが暗号解読のための計算機械をはじめて開発した、その方法はどういうものだったか、を連想させるようなエッセーでした。
  

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『劉生画集及芸術観』について 和辻哲郎

 今日は、和辻哲郎の「劉生画集及芸術観について」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ふつう思想家は他人を褒めずに、批判的に問題点を指摘するもんだと思っていたんですが、今回の哲学者和辻哲郎は、岸田劉生の画業を絶賛しています。日本語に聡い学者が、何かを褒めるとこんなにすごい文章になるのかと、本文と関係の無いところで楽しんで読んでしまったんですけど、和辻氏は、岸田劉生の論文についても検討し、これを論じています。
「享楽的浮浪人としての画家、道義的価値に無関心な官能の使徒としての画家」とは異なる、人々の生に奉仕する思想と画業とが、岸田劉生にはある、というところから記し「人類の内に生き人類の意志を意志とする」芸術の精神について語り、「芸術家のための芸術」とは異なる「美のための美を」つくる芸術について説き、岸田劉生の考える「内なる美」「装飾」「写実」について解説していました。
 とくに、ドストエフスキーや『イリアス』や岸田作品に通底している「内なる美」ということを論じた箇所が、興味深かったです。

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不良少年とキリスト 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「不良少年とキリスト」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 太宰治は、名門や良家というところに妙なこだわりがあったり、志賀直哉が記した文章に太宰治が激しく反応をした、そこに太宰の文学性と人生の秘密がある、というように安吾が指摘しています。坂口安吾は太宰や芥川についてこう書いていました。
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  彼らの文学は本来孤独の文学で、現世的、ファン的なものとツナガルところはない筈であるのに、つまり、彼らは、舞台の上のM・Cになりきる強靭さが欠けていて、その弱さを現世的におぎなうようになったのだろうと私は思う。quomark end - 不良少年とキリスト 坂口安吾
 
  「太宰の一番かくしたい秘密」のことについて、序盤に論考していました。作中に記された「MC」というのは、太宰治の「斜陽」に書かれたもので「私のチェーホフ」あるいは「マイ・チャイルド」または「マイ・コメディアン」という意味があるそうです。
 坂口安吾は大酒飲みで泥酔状態の時にさえいろいろ書いた作家なんですけど、太宰治がアル中でヘベレケだったという、今回の作品に記された箇所はどうも事実から遠いように思うんです。本作に描かれた太宰治の像は、作家の太宰治と言うよりも、坂口安吾が思い描いた、一人の仮想の登場人物として読めるのでは、と思いました。戦後すぐの安吾の死生観が色濃く書きあらわされた随筆に思いました。
 終わりのほうで熱心に、戦争と学問について記しているんですけど、坂口安吾は哲学全般について批判的に記しつつ、こう書きます。
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  私はこの戦争のおかげで、原子バクダンは学問じゃない、子供の遊びは学問じゃない、戦争も学問じゃない、ということを教えられた。大ゲサなものを、買いかぶっていたのだ。
 学問は、限度の発見だ。私は、そのために戦う。quomark end - 不良少年とキリスト 坂口安吾
 

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追記  戦争を抑止する政治学や、核による害を減少させる技術については、学問だと思うんですけれども……。
  

鉛筆のしん 中谷宇吉郎

 今日は、中谷宇吉郎の「鉛筆のしん」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 本屋で発見できなかったけれども、青空文庫を読むようになってから発見した書き手の中で、ぼくはいちばん好きなのは中谷宇吉郎で、この人の随筆はどれを読んでも面白いんです。イギリスやアメリカで物理学の研究をした科学者で、日本人の文化について深く踏み込んだことを、学生にも理解できるように分かりやすく書いているので、読んでいてすんなり入ってくるように思います。
 こんかいは戦争が終わってすぐのところで奇妙な考えかたにおちいっていた青年のことが記されているんですけど、本物の学者や文学者と比較したら、ぼくはどこまで行ってもたぶんこの、トンチンカンなことを考える青年に近いままなんだろうなと思うんですけど、それに対して、どういうように考えてみたら良いか、どういうように教えることにしたら良いかを論考しているのが、今回の随筆です。丁寧な暮らしと作法を重んじる、禅のような考えだなあ、と思いました。
 

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