歴史の流れの中の図書館 中井正一

 今日は、中井正一の「歴史の流れの中の図書館」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 日本の集団の動き方の問題点について、第二次大戦時の軍事や科学研究を、日米で比較しながら、中井正一が考察しています。
 そこから図書館のしくみが3つある、という話に展開します。まずいちばん古い図書館は、博物館の蔵のように、保存することを中心とした図書館で、これは人々に公開されていない。本を秘宝のように扱っている奇妙な施設のことです。2つめは本を持ち寄ってバザールのように人が出入りして活発に本を貸し出す、生きた図書館について語っています。そして20世紀中盤の、3つめの新しい図書館というのが、インフォメーションセンターとしての図書館で、これはいわば今で言うとwikipediaみたいに情報を整頓し上手く情報を流通させる機能を持っている組織のことを言っているようです。前半に指摘していた、日本の集団が陥りがちな機能不全についての問題提議が、半世紀後に読んでもなんだかすごい指摘に思います。 このエッセーの後半に記されている平和な集団の存在感が、読んでいて印象に残りました。
  

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インド小景 菊池智子

 今日は、菊池智子の「インド小景」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは、インド文学の翻訳家である菊池智子さんから原稿をいただいた、現代随筆です。インドの暮らしや、インドに於けるコロナ問題を描きだしています。イチオシです。下記リンクから全文読めます。ご覧ください。

◎ 目次
 一 インドは多言語
 二 漂着
 三 やっぱりやさしいインド人
 四 警官
 五 和食とインド料理 
 六 トランプ禁止
 七 おじぎが変です
 八 そうかなあ
 九 善意の公害
 十 物売りの少年
 十一 ウィルスと疎外感
 十二 インドのコロナ禍
 十三 雀も少なくなりました
 

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明かりの本では、新作小説やエッセーや、古典の翻訳作品など、オリジナル原稿を募集しています。
くわしくはこちら。

人生案内 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「人生案内」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 坂口安吾は人生案内の名手だと思うんですけど、今回のはエッセーではなく小説です。新聞の人生案内の「熱狂的な愛読者となった」虎二郎という男を書くところからはなしが始まるんです。人生案内のページが好きすぎて、この投書に夢中になって、嘘の相談をいろいろやっているうちに、家業の蕎麦屋がおろそかになって立ちゆかなくなった。七転八倒があってじっさいに人生相談をしたくなるような苦境に至ったら、投書で解決できるようなもんでも無い。お竹の主人公への批判が、どうも筋が通っているように思える。
 なんだかトルストイの『人生論』における粉ひき男が水車と水源の謎に魅了されて山奥に消えるはなしがありますけれど、安吾の語る虎二郎のはなしは、これをみごとな落語にしたような魅力がありました。

 

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変った話 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「変った話」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 寺田寅彦は百年まえの出来事や思想を描くのですが、いま読んでも納得のゆく話に思います。今回は孔子の「中庸」や、老子の話、それから感染の話しが描かれているんです。ぼくは老子の本がすごく好きで、なんども読んでみたんですけど、寺田寅彦が今回、老子の話しをしていておもしろかったです。コロナ禍にも老子の哲学は重要なのでは、と思いました。
 ドイツのアレクサンダーウラール(1876–1919)が翻訳した老子にかんする本が、おもしろいらしいのです。ウラールは中国の近代文化を研究したジャーナリストなんです。この寺田が愛読した本はじつは、ハイデガーも読んでいて、そのことを語っている記録があります。
「無限に大きな四角には角がない。無限に大きい容器は何物をも包蔵しない。無限に大きい音は声がない。無限に大きな像には形態がない」
 という老子の思想を、寺田とハイデガーとウラールが読んでいた。
  

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夢日記 A. キングスフォード

 今日は、アンナ・キングスフォードの「夢日記」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 夢の物語というと夏目漱石の「夢十夜」がお薦めなのですが、漱石のは文学者らしく、物語を加工し整えて美しくする工程があきらかにあって、夢の、野方図で生々しい表現は抑えられています。アンナ・キングスフォードの夢日記は、じっさいに見た夢のことを仔細に記していて、ちょっとなんというか、100年前の学者の夢の中に迷い込んだような迫力がありました。映画的な悪夢の記述があるのですが、学者らしく戦争の歴史と深い繋がりがあるようで、そのような注釈を読むのも興味深かったです。ぼくは自分の夢というと動物的な快不快の記憶ばかりなのですが、学者は見る夢まで理知的なんだとか思いました。
 第二夜「素敵な眼鏡」という短編の夢物語が面白く「やぎさんゆうびん」みたいな珍事なのに、それが知的に描きだされるんです。野方図な夢の中でも、賢いのかと……。第十五夜の「老いた若者」がなんだかすごい。二十四の謎めいた夢の物語です。
  

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(※この翻訳は、「クリエイティブ・コモンズ 表示 3.0 非移植 ライセンス」によって公開されています。くわしくは本文の底本をご覧ください。)

待つ者 豊島与志雄

 今日は、豊島与志雄の「待つ者」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 豊島与志雄は翻訳家として有名なのですが、随筆のみならず小説もいくつか書いています。
 今回の「待つ者」ではマグリットの絵画のように不思議な場面を描きだします。人の居る気配が濃厚な室内に、いつまで経っても人が来ない、という場面です。本文こうです。
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  ……明るい部分の中に、人生の日常の経路が中断された、その断面が浮んでくる。主人公を徒らに待ちわびている餉台や臥床は、人生の日常経路の中断面の相貌なのだ。そして暗い部分のなかに、他のさまざまなことが溺れこむ。よく知ってる人の名前を忘れたり、はっきり分ってる事柄が曖昧になったりする。quomark end - 待つ者 豊島与志雄
 
 哲学的なことを、豊島与志雄が述べてゆく。不思議なことを言うもんだと思っていたら、この空想の場面についての話しを聞いていた親友が、急に自分の故郷のことについて述べてゆくんです。この男は、古里の居るべきところから外れて、みずから出奔していた。
 絵画的で空虚な空想から、現実の男の事情が、あとづけで照射されて、物語創作が読者にもたらす効果というか、物語がどのように人間の心情に作用するのか、そのあたりのことをヴィクトルユゴーのレミゼラブルを翻訳した豊島与志雄が書いていて、そこに魅力を感じました。

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