傍人の言 豊島与志雄

 今日は、豊島与志雄の「傍人の言」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 翻訳の仕事が多い小説家の豊島与志雄が、近代の文士の事情を記しています。作中では、豊島与志雄の主張と「傍人」の主張の2つが記されてゆきます。豊島与志雄の友人は、近代の作家がお互いに会うと、妙な緊張が走っていて、それを見ていると、妙に思えてくる。
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  ほんとに打ち解けた朗かさがなくて、わきから見てると、お互に緊張しあってる……(略)個人的に逢えば、誰もみな好人物だし、酒をのめば、しめくくりのないだらしなさをさらけだすんじゃないか。それが、公の席上で顔を合わせると、好人物同士が、だらしのない者同士が、お互に緊張しあってるんだから、僕たちから見ると、おかしいんだ。quomark end - 傍人の言 豊島与志雄
  

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 徳永直のことも記していました。豊島与志雄の考えとしては、凡俗なことがらを魅力的に書けるかどうか、が重要になる。「書き方の如何によるのだ、と私は云う」と終盤に述べられていました。

可哀想な彼女 久保田万太郎

 今日は、久保田万太郎の「可哀想な彼女」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 久保田万太郎は谷崎潤一郎や芥川龍之介や島崎藤村と親交が深かった作家だそうです。wikipediaには敗戦の年に「空襲で被災し、家財・蔵書のほとんどすべてを失った」と記されていました。今回の随筆ではおもに、家族の不幸と、震災後の生きかたと、文士の生計について書いています。
 戦後すぐの活動がwikiに記されていて、今回の随筆で考えて言語化していたことがじっさいに活きて、静かで平和な晩年を過ごしたんだなと思って読みました。百年前の時代ではあきらかに長寿の作家なのだと思います。おもに教育者として生計を立てた作家だったようです。
  

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学問のすすめ(17)福沢諭吉

 今日は、福沢諭吉の「学問のすすめ」その17を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 最終章は、人望論からはじまります。この本はおもに商人の倫理というのを説いてきたと思うのですが、福沢諭吉は地味な商売だけでは無く、人気商売ということについてもさかんに論じるのでした。慶應義塾をつくった福沢諭吉が、学校の人気とか、学長の人気ということも重視していた、というのはなんだか乙な話に思いました。
 大きな買い物をしたあとでちょうど今だけ借金があるという商人は、マイナスの人間なのかというと、そういうわけではない、と説かれています。人望のある商人は、貯金額や技量によって評価されているわけでは無く、仁徳や知性によって人望を得ているのだ、と、福沢諭吉が言うのでした。
「売薬師が看板を金にして大いに売りひろめ、山師の帳場に空虚なる金箱を据え」というような虚飾が盛んになっていると「見識高き士君子は世間に栄誉を求めず」栄誉を避けることが増える。ところが、福沢諭吉はここで「栄誉」というのはどういうものかをちゃんと考えてみよう、と言うのでした。
 「栄誉」というのは植物で言うところの「花」と同じような作用があって、花を失った植物は栄えることができない。嘘の花を盛んにして本体が行方不明になるというのもまずいけれども、花を投棄して花を避ける、というのは生物として無理がある。
 自身の栄誉を無理に拡げようとしてはいけない、それよりも他人のことをしっかり知って学ぼうというのが、論語の基本で「君子は人の己れを知らざるを憂えず、人を知らざるを憂う」という方針があるのですが、福沢諭吉はこれは「悪弊」だと批評しています。才徳があるのなら人望をも得て大きな仕事に励もう、というように述べていました。他人のことを知って、自分のことも知ってもらうことが重要だと、論語の教えをさらに進めて説いていました。
 そのためにはまず、言葉を学んで、活動を広める。みんなが分かるような言葉を使う、苦虫を噛み潰したような顔をずっとしているのも良くない、といった処世術についても書いているのでした。気軽に相談できるような穏やかな知者を目指してゆく……言葉や表情を柔らかくして、広く人に接する。福沢諭吉が学生に説く、人望論が書かれていました。
 学問で交流したり、商売で交わったり、趣味の友だちをつくったり、友を作る方法はいろいろある。
 人を毛嫌いして棒きれのような枯れた生きかたをするのは良くない。花の無い生きかたをするのは辞めよう、という福沢諭吉の指摘なのでした。
 論語を学んでおいて「道がちがう相手とは協力しない」と考えるのはこれは論語の誤読である、と福沢諭吉は批評しています。
 向かう道が異なるからと言って、協力しあわないというのはまずい。異なる道を進んでゆくような新しい友を求める、ということを福沢諭吉はすすめています。これで学問のすすめが完結していました。はじめて最後まで読んだ……と思いました。
    

0000 - 学問のすすめ(17)福沢諭吉

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海の詩 中原中也

 今日は、中原中也の「海の詩」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 山の物語はあまたにあるけれども、海の小説は少ない、という随筆をこのまえ読んだんですが、こんかいは海を描きだす詩のことを、中原中也が記していて、魅了されました。
quomark03 - 海の詩 中原中也
 こころままなる人間は、いつでも海が好きなもの!
  海は汝が身の鏡にて、はてなき浪の蕩揺たゆたひに、なれはながたま打眺むquomark end - 海の詩 中原中也
  
 ボードレールは、人と海がともに併せもつ「苦き深淵」を描きだします。パリを愛したヘミングウェイの「老人と海」を連想するような、ボードレールの「人と海」……これを中原中也が和訳した詩作品でした。
    

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学問のすすめ(16)福沢諭吉

 今日は、福沢諭吉の「学問のすすめ」その16を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は、独立するということについて論じていました。物質上の独立と、精神上の独立の2つがある、とまず記しています。欲望によってじぶんの本心に背く事態に至ってしまうことを「精神上の独立」の失敗として考えているのが、福沢諭吉の独特な論法に思いました。
 過度に酒を飲んで心身に損失を出してしまうことも、物質から支配を受けてしまったということである、というように書いています。大金持ちだから独立しているわけでも無いということが分かって、言われてみればたしかに、資産が小規模でも気持ちが良い暮らしをしている人は居るなあと思いました。お金が足りなければ独立がむずかしいけれども、お金を上手く使う、ということも大事にしなければ、物質の奴隷になってしまうという警告を記していました。支配を受けない、奴隷のような状態にならない、ということを学んで実践してゆくための、ヒントをいろいろ書いている章でした。
 「煙のごとき夢中の妄想に」引きずられて心の独立を損なわないように、ということを福沢諭吉が記している箇所があって、安寧をはばむものについて学んでこれを避ける、といったことも本章で取り扱っていました。金の力を用いることによって、かえって自他の精神の独立が害されることがある、と、お金の取扱を工夫することの重要性を説いていました。
 それから「議論と実践」の2つを論じています。
 「議論と実業」の2つのうちのどちらが欠けても、批判すべき状態になってしまう。
 すぐれた人間は大きな仕事や重い仕事をするけれども、それは自分がやるべき仕事を「弁別」しつづけて「軽小を捨てて重大に従う」という長きにわたる「志」があったからである、と福沢諭吉は書いています。
「心事高尚ならざれば働きもまた高尚なるを得ざるなり」と、こころざしが優れていなければ、仕事も優れたものにはならない、ということを書いていました。
 また猛練習に励んでギャンブルの裏技を極めたとしても、それは大きな仕事を成し遂げたとはちょっと言えない。本文にはこう書いています。
「有用無用を明察して有用の方につかしむるものは、すなわち心事の明らかなる人物なり。ゆえにいわく、心事明らかならざれば人の働きをしていたずらに労して功」がほとんど無い。
 大きな仕事というと、現代のインターネット業界で言えばwikipediaの創業と運営を成功させた中心人物とかなんだろうなあと思いました。wikipediaは、勘違いや妄想を減らす効果があるように思います……。
 あと、福沢諭吉は処世術のようなことも書いていて、遊びの現場で道徳的な説教を垂れるのはなんだか異常で、時と場所を選びなさい、ということを書いていました。
「人の働きのみ活発にして明智なきは、蒸気に機関なきがごとく」と書いていて全体の規則をうまく作って、害を減らすことの重要性も記していました。
 ここから、青年の職業論も説いているんですが、これは福沢諭吉こそが慶應義塾という新しい教育現場を作った人なので、ずいぶんリアルな描写になっているように思いました。志が高いと、就きたい職業も狭まってしまって、ステップアップが難しくなる。
 軽小を捨てて重大な仕事を志すのは美事であるけれども、そこで人間性を失ってしまうとまずい。福沢諭吉は、職業弁別は重要だけれども職業差別はまずい、というように説いているのかと思います。「みだりに人を軽蔑する者は、必ずまた人の軽蔑を」受けてしまう、というように警句を記していました。
「他人の働きにくちばしれんと欲せば、試みに」自分で実際にやってみよう、というように実践的に試してみることをすすめていました。
 次回で「学問のすすめ」は完結です。
   

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詩論 中原中也

 今日は、中原中也の「詩論」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはごく短い随筆で、詩の創作だけではなく、広く芸術について論じたものです。短くても熱量のある美しい詩論でした。
 フランスの詩人ポール・ヴァレリーのことも少しだけ記していました。ポール・ヴァレリーは「我々は後ずさりしながらに未来へ入っていく」という言葉を残したそうです。これは湖に浮かべたボートを漕ぐように、過去と現在を見つめながら、人は未来へ入ってゆくということを意味する詩の言葉なんだそうです。中原中也は、自分自身を愛することと詩をつくって生きることの親和性について書いています。繰り返し読んでみたい作品に思いました。
 

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