細雪(14) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その14を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この前に行われていた縁談は、一緒に食事する場面ではとくに問題なく進行したはずなんですが、その後にあらかじめ告げられていた興信所の調査がおわって、縁談に関わっている人から、電話がかかってきた。「ええ話とは違うさかいに、喜ばんとおいてほしい」ということで、どうもこれはやはり今回も失敗の展開になるようです。今回は、いちばん雪子の面倒をみようとしている、姉の幸子の意識を中心に記されています。今回の雪子の破談の理由は、複雑な事情なので、最初のページから本文をぜんぶご覧になってください。
 家の近くで、幼子である悦子と、そのともだちのルミー(ローゼマリー)さんが遊んでいる描写がありました。
 破談になった相手のことなんですけれども、相手との年齢の釣り合いがとれていて良い感じだったり、資産家だから苦労が少なそうであったりという、いっけん良さそうな相手が、じつは別の愛人がいるとかどうも結婚に至らない理由というのがある。いちおうは事情を調べるしかないわけで、相手のことをまったく調べないで、完全に運任せの婚姻をさせるわけにもゆかない。相手は期待を脹らませるだけで失望する、ということが起きてしまう。普通に考えて、相手方の家柄が良いと安心感があるのでは、と思ってきたんですが、良い家柄を守ろうとすると、親しくなりかけた家との関係を断ち切るわけで、これで恨みが生じているというように言える……家柄が良いと、政略が必要になってしまって、かえって不自由が生じてしまうもんだと、いうのが見えてきて、なんだか富者の意外な告白を読んでいる気分でした。
 

0000 - 細雪(14) 谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約10秒)
 
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

細雪(13) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その13を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この物語の主人公である雪子の、顔のシミが体調によって色濃くなることがあるらしいのですが、今回、身体はいたって健康であることが、医院の健康診断で明らかになります。身体さえ健康なら、なにも気にする必要は無いのではと思うのはどうもちがうようで、みんな細細とした気配りをしています。雪子は今から誰と結婚するのかを決める時期なので、いろんな人が繊細な問題を気にしてしまいます。
 この小説の後半部分が書かれた1944年ごろはもう間違いなく日本史史上、最大の行き詰まりの時期だと思うんです。その時期に平和な破談や、人間関係の行き詰まりについてえんえん書くというのが、検閲と世相が最悪だったころに、谷崎潤一郎が選んだ創作なんです。
 ある破綻について世界中が注目しているときに、まったく異なる破綻のことを描いていったのでは、と思いました。平和に生きた人ならだれもがほぼ必ず行きあたる、人間関係の中絶のことが描かれるんですけど、明確な悪意とか明確な元凶があるから破綻するんだろう……と、てきとうに思っていたんですけど、そういう目に見える悪というのは特にないんですよ、今のところ。平和な行き詰まりを見てゆくほうが、じつは重大なんじゃないか、と思いました。
 今回、雪子のフィアンセ候補である瀬越は、数年前に、フランス人女性との恋愛で失敗してしまったらしいです。本文こうです。
quomark03 - 細雪(13) 谷崎潤一郎
 結局その婦人にあざむかれたらしいので、彼がホームシックにかかったのも、純日本趣味にあこがれるようになったのも、その反動であるquomark end - 細雪(13) 谷崎潤一郎
 
 おもしろい過去を持っているんですけど、とくに悪いことを考えている人ではないようです。雪子と瀬越の、この2人はいったいどうなるのか、というところで次回に続きます。
 

0000 - 細雪(13) 谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約10秒)
 
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

細雪(12) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その12を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 谷崎潤一郎は伏線や展開の反復がとくべつに上手い作家だと思うんですけど、今回は主人公の雪子が、病弱そうに見えてしまうのでそのことが向こうのお見合いする家族にとって心配に思えてしまうという、問いがあったんです。
 ところがじっさいには雪子はたんに奥ゆかしい性格であるだけで、いたって健康なんです。それを証明するために、ちゃんとお医者さんで健康診断をしておこうという方針になります。
 雪子は美しい容姿をしているので、ちょっとシミがあると妙にみんなが気になってしまうようです。雪子本人もちょっとだけ気になっている。この物語の序盤で出てきた、ビタミン注射のこともまた語られます。
 お見合い相手の女性の、細かなところを見る男たちなんですが、では逆に男のほうに、なにか隠された問題があるのでは……という展開になるようです。
 次回に続きます。
 

0000 - 細雪(12) 谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約10秒)
 
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

追記  雪子は繊細なようでいて、芯の強い、あまり動じない人間のように思われます。作者の谷崎こそが当時の戦争の惨禍に動じず、伝統を新たにする生きかたを貫いた作家のように、思います。

細雪(11) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その11を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 いよいよ、物語の本筋である、雪子のお見合いが始まりました。どうなるんだろうと、ちょっと緊張した場面なのかと思ったら、たんに世間話に花を咲かせるような、華やかな二家族の会食がはじまるのでした。会話文が流暢で、読んでいていちいち興味をひかれます。おもに、お酒のみの家族の楽しさみたいなことが記されます。もの静かで理知的な雪子だから、おっとは酒を楽しめる人のほうが和んで良いのでは、というお話しでした。僕は全然お酒が飲めないんですけど、お酒が楽しければそれは良いなあと思います。ちょっと先まであらすじを見てしまったんですけど、これ、おそらくなにかしらの理由で、このお見合いはポシャるんですよ。それなのに明るいし、穏やかに話が進行する。駄目になる事柄というとふつうの現代海外ドラマとかだと、悲惨に悲惨を上塗りするような事態が起き続けるわけですけど、現実や近代文学の場合は、たいてい「かなり上手くことが運んでいたのになあ……意外と進展しなかったなあ」というような、良さそうな条件がいろいろ見えてくるもんなのでは、と思いました。
 

0000 - 細雪(11) 谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約10秒)
 
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

追記   楽そうに楽そうにみえて意外と苦の展開だった、というのが現実をうまく映し出したこの物語の魅力でもあるのでは、と思いました。

細雪(10) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その10を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 貞之助は、この物語に於いて、四姉妹の父の遺志をつぐ大黒柱のはずなんですけれども、ただのお見合いのまえ準備というだけの状態で「離れの書斎に逃げ込んでい」た状態なのでした。男が不在だなあ、というのがこの物語の面白いところで、そういえば谷崎の「卍」でも、これに似た状況はあったなと思いました。今回は、貞之助も協力して、三女の雪子のお見合いへと、出かけることになりました。ただ、急に雨も降ってなんだか運がわるいのかもしれない。美容院の女主人である井谷のとりもちで、瀬越というお見合い相手の男と、ついに対面するのでした。次回に続きます。幸福なはずなのに心労がある、ということが見えてくる小説なのでした。

0000 - 細雪(10) 谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約10秒)
 
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)

細雪(9) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その9を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この物語の中心人物である雪子の……フィアンセ候補と、紹介人の女性井谷が、次回あたりでやっと現れます。
 ところが、日付の取り決めとか、同伴者の服装の地味さを命じられているとか、女中さんがまだ秘密のはずのことを幼子に漏らしてしまってそれで問題が起きているとか、ちょっとしたところでなんだかものごとがすんなり進まないような気配もあります。
 古式ゆかしい、楚々とした女である雪子のことを、姉の幸子はもう、見た目からして絶賛したくてしょうがない。
 雪子はもうなんどもお見合いをしていてどうも上手くゆかない。こんどこそ本命のフィアンセ候補のはずなので、これは親族もソワソワしている。
 お見合いの問題が親族間で話しあわれていて、こんども縁談が立ち消えになってしまうと、繰り返し準備してきた人たちにいろんな迷惑がかかってしまうことを心配していて、とうの雪子は泣いてしまいます。お見合い寸前なのに、泣きはらした顔では上手くゆくものも上手くゆかない。いったん落ちついて、ものごとが上手く進むように、それぞれ苦慮しているので、ありました。
 読み方としては正しくないんですが、2022年の戦争に日本が直接的に巻きこまれていた場合は、現代日本人は、谷崎が大空襲間近のころに描いたこの物語内部のように、戦争がありながら平和だけに意識を集中して暮らしている人々が、あまたに生じるはずだ……というように思いました。
 

0000 - 細雪(9) 谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約10秒)
 
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)