季節のない街 山本周五郎

 今日は、山本周五郎の「季節のない街」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 僕はこれを昨日はじめて全文、読んでみたんですけど、日本の映画で印象深かったものが、山本周五郎の小説の中にあまたに記されていて、映画と小説には、こんなに共通項があるのかと驚きました。
 山本周五郎は時代小説を主に描いたと思うんですが、今回のは戦後すぐを描いたものです。かなり現代人と共通項が多いように思います。
 この山本周五郎の小説はちょうど、近代と現代との……中間が描きだされた世界のように思えました。
 山本周五郎の本を読んだ人たちが、日本の映画の脚本を書いたはずだ、と思うところがいっぱいありました。「どですかでん」とか。
 じっさいはどういう事情で描かれたのか分からないのですが、この「季節のない街」は、戦争孤児のことを考えて物語を創っているように思う短編がいくつもありました。
 この小説は漱石や谷崎とちがって、読みにくい箇所が混じってるんです。とくに酒飲みの話しと、虚言癖から生じる政治論のところがかなりの難読箇所でした。ぼくは「肇くんと光子」という短編がいちばん楽しかったです。それから終盤「たんば老人」の「泥棒」に遭遇するエピソードが印象に残りました。
 いちばんはじめの六ちゃんが運転する幻の電車に導かれて、物語の世界に引き込まれてゆきます。戦争が終わったあとの世界が、いったいどういうものだったのかが垣間見えるように思いました。
 

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晶子詩篇全集拾遺(31)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(31)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 与謝野晶子は、短歌を詠むことが本業であって、随筆や詩は中心的な活動では無かったのかもしれないのですが、ぼくとしては与謝野晶子の詩と随筆は、なんだか勉強になるような気がしました。文学の勉強と言うよりも、なにか処世術やものの考え方を教えてくれる人、という感じがします。詩というと……とくに日本の詩歌は、絵画のように美しさを感じとるものだという印象が強かったのですが、与謝野晶子の詩を読みつづけていると、哲学者の論考を読んでいるような感覚になることがあるんです。
 与謝野晶子は当時の世相とはまったく異なっていて、恋愛感情について繰り返し描くのもすてきなんです。それから、漱石が描きだした「淋しさ」を巡る物語というのは、もしかすると与謝野晶子のこんかいの詩に触発されて、描くようになったんじゃないかとか、そういう空想をしました。
 むつかしい言葉を調べてみました
 ほた

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時間からの影 ラヴクラフト

 今日は、ラヴクラフトの「時間からの影」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは……奇妙な記憶喪失に見舞われた学者が、悪夢に見た太古の巨大遺跡群を調査する物語なんです。子どもっぽい妄想も記されているんですけど……H.P.ラヴクラフトはあまたの怪異と、まがまがしい巨大建築群を描きだしたホラー小説家なんです。ラヴクラフトが原典としたものは何か、というと、おそらくGustave Doreの絵画を幾度も引用しているのでドレの絵画から着想を得ていると思うんです。(他にもまあ、ゴヤの絵画も参照しているんですけれども)
 ドレといえばダンテの『神曲』の装画を何十枚と描いた画家ですし、となると『神曲』地獄篇こそが、ラヴクラフトの悪夢の原典、その一つかもしれないです。
 ラヴクラフトの今作は、まがまがしい存在を全て漆黒の中に隠し、暗黒だけを恐怖の中心に据えたのが、独自の特徴なんだと思いました。古典的なホラー小説を、全文読んでみました。
 

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((CC BY 3.0)*著作権存続* ※この翻訳は、「クリエイティブ・コモンズ 表示 3.0 非移植 ライセンス」によって公開されています。
Creative Commons License ※元のファイルは、http://www.asahi-net.or.jp/~YZ8H-TD/misc/TheShadowOutofTimeJ.html にあります。翻訳:The Creative CAT)

論語物語(1) 下村湖人

 今日は、下村湖人の「論語物語」その1を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回から、25回くらいかけて、論語の物語を読んでゆこうと思います。これは大手出版社からいくたびも再販されつづけてきたもので、かなり長いこと読まれている名作なんです。論語の書き下し文とはまた異なって、平易な日本語で記された論語の物語です。1話1話読んでゆこうと思うのですが、ここから全文を一気に読むことも出来ます。けっこうむつかしい本だと思うので、ぼくは分割して読んでみようと思います。
 作者の下村湖人は序文で、こう書いています。
quomark03 - 論語物語(1) 下村湖人
 この物語において、孔子の門人達は二千数百年前の中国人としてよりも、吾々の周囲にざらに見出しうる普通の人間として描かれている。quomark end - 論語物語(1) 下村湖人
 
 読んでみると、数十年前の日本人の雰囲気が漂っているようで、読みやすいんです。それにマチガイの例が分かりやすいと、理解もしやすいです。
 第1回では「富める子貢しこう」が貧富について語っています。孔子の、貧しくても「道を楽み」豊かになっても「礼を好む」、という指摘が印象に残りました。貧しくてもいろいろ工夫をして楽しむことができる。今ちょうど、外出することがむつかしい時期に、小麦粉が売れていて、食を楽しむことを工夫している人がいる、こういう時代にも共通した問題が描かれていると思いました。
 

0000 - 論語物語(1) 下村湖人

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『論語物語』をはじめから最後まですべて読む(※大容量で重いです)
『論語』はこちら(※論語の原文に近い日本語訳です)

スペードの女王 プーシキン

 今日は、プーシキンの「スペードの女王」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは怪談の名手の岡本綺堂が翻訳したプーシキンの怪異譚なんですけれども、ギャンブルにからんで、ストーカー的あるいは詐欺師的な恋愛の気配が描かれていって、興味を惹かれます。
 かつて若い頃に賭け事に狂ったことがあるおばあさんというのがいて、その人が賭けカルタの秘密というのを知っている、らしいんです。本文こうです。
quomark03 - スペードの女王 プーシキン
  生涯に二度と骨牌をしないという誓言をさせた上で、三枚の切り札の秘密を彼に授けて、順じゅんに賭けるように教えたquomark end - スペードの女王 プーシキン
 
 これ……数学者とか暗記力の高い人って、賭けカードゲームにほぼ必勝する方法をほんとに知ってるんですよね。youtubeで、じっさいに必勝法を知っているプロのギャンブラーがいて、この必勝法の解説をしていたりして、聞いていると面白いんですけど、ようするにカードを全体的に暗記して残りのカードがなにかを確率的に見抜けるらしいです。
 この物語では、もっとこう圧倒的に勝ってしまう技がどうもあるらしい。それでギャンブルに強く惹きつけられてしまう。このプーシキンの小説は、ギャンブルに絡んで、必勝カルタの秘密を暴きたい詐欺師的な男ヘルマンと、淳朴な美少女リザヴェッタとの恋愛ゲームが記されているのも読んでいて楽しかったです。
 ここからはネタバレなので未読の方は読み飛ばしてもらいたいんですが……おもしろいのは、詐欺師まる出しの男であっても、リザヴェッタは彼を人間として扱うところなんですよ。彼の本心がギャンブルで大金を稼ぐ拝金主義にあって非人間的であるとわかったあとにも、彼を助けようとしたりする。読者としても、ヘルマンがどうなるのか、かなり気になるんです。
 文学は、余り尽くしたものを中心に描くのだ、とか思いました。
 読み終えたあとから考えると、リザヴェッタのような、地味な考え方や生き方には、あきらかにこう、強さがある……と思いました。

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晶子詩篇全集拾遺(30)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(30)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は、太陽が登場する二つの詩でした。否定と肯定が交互に来るのも美しかったです。
 

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