正直な泥棒 ドストエーフスキイ

 今日は、ドストエフスキーの「正直な泥棒」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 
 家政婦さんしか居ない家に一人で住んでいる主人公がある日、小さな部屋を貸すことになった。間借り人はアスターフィ・イヴァーヌイチという名の男で、彼はおとなしくて「なかなか世間馴れた男」で、ごく小さい部屋を借りて「仲よく暮らしはじめた」のでした。
 ところが、そこに手品師のような泥棒がやってきて、みんなが見ている前で、「毛皮外套」を一瞬で盗んで行ってしまった……。
 

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追記  泥棒を追いかけてみたのですが、完全に逃げられてしまいます。3人は、どうしてあんなに簡単に外套を盗まれてしまったのか、いろいろ考えてみたり、話しあったりするのでした。そのうちに、間借り人のアスターフィ・イヴァーヌイチが、数年前に起きた、不思議な泥棒の話をしはじめるのでした。
 ドストエフスキーの得意技は作中作で、物語の中に物語を二重三重に、積み重ねてしまうところにあると思います。
 男はある日、貧しい男を自分の部屋になんとなく泊めてやった。しかしその一文無しの大酒飲みのエメーリャという居候がだんだん増長してしまって、どうしても長居させてやるわけにもゆかなくなった。働けといってもどうにも働けない。エメーリャはもはや門の前で寝そべるだけになったりした。
 いくら説法しても、ずっと飲んでは寝そべるだけになってしまった。ある日、男はズボンが無くなってしまっておどろく。『おい、エメーリャ。お前なにか困ることがあって、おれの新しいズボンを取りゃしなかったかい』と聞いても、本人は盗っていないと言うのでした。それから青い顔になったり、部屋中のものを探したり、これからは働くと言ってみたりと、右往左往するのでした。いちど追い出してみたけれども、けっきょくは、また長居させてやることにした。やがて身体に無理がきて寝込んでしまう。終盤の、貧しい者の正直な告白に圧倒される名作でした。
 

快走 岡本かの子

 今日は、岡本かの子の「快走」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはごく短い作品なんですが、戦時体制下の家族の暮らしと、詩的な心象の両面が見えてくる、近代小説でした。風景の描写が念入りで、とかく美しいように思います。道子は日々の暮らしの中で、あるアイディアを思いついてそれに夢中になるのでした。「ほんとうに溌剌はつらつと活きている感じがする」という一文が印象に残る、道子と家族の物語でした。
 

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秋の瞳(22)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その22を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「おもひで」という題名の作品は「きれいなゆめ」について描かれたもので、地獄から抜け出して天堂へゆくための果てしない世界である「煉獄」の「かげ」を感じつつ、なつかしい風景を炎のかがやきのように思いだす、美しい詩でした。
  

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音楽と世態 中原中也

 今日は、中原中也の「音楽と世態」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはとくに音楽論というわけでも無いんですが、詩人の中原中也が考察した、百年前の近代音楽に関する随筆です。
「山賊仲間に聖者のゐたためしは先づないが、修道院の中には天使から悪魔までがずらりとゐる」という文章が印象に残ります。東京中央楽壇などによるクラシック音楽の演奏……シューベルトラヴェルバッハを聞いて、思ったことを書いています。
 後半の総論のところが読みにくい難読文で書かれています。原文はこうなんです。
quomark03 - 音楽と世態 中原中也
  何れにしても、要は各人の感性の問題で、「各感性は各感性也」と云はれれば文面上辻褄は合つてもゐようが、「各感性は各進化しつつある」現実の世界は、可動的グラヒカル・リプレゼンテーションとやいふらむか、而して、可動的グラヒカル・リプレゼンテーションは可動的である故に名附け難いので、人類は結局、同好の士、非同好の士と、アダムより我等が子々孫々に至るまで、最後の段階では情意的(気分的、間違へないでね)であり、高遠なる思索家とは、遂に貧血症のことだらうか?quomark end - 音楽と世態 中原中也
 
 この箇所をAIを使いつつ要約してみると、こうなります。
 結局、大事なのは人それぞれの「感じ方」なんだ。「人の感じ方は人それぞれ」って言えば、言葉の上ではうまくまとまるかもしれない。この世界は、動く絵や映像のようなものなのかも。ずっと変わり続けているから「これはこうだ」と言い切るのがむずかしい。名前をつけようとしたときには、もう少し違うものになってしまっている。
 だから人間は結局、「同じ好みの人たち」と「違う好みの人たち」に分かれて、アダムの時代からこれから先の子孫にいたるまで、最後には「気分」みたいなものでしか分かり合えないのかもしれない。そして、むずかしく考えごとをしている人って、実はちょっと貧血気味なだけなのかもしれないね。
  

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郵便さん 槇村浩

 今日は、槇村浩の「郵便さん」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 貨物自動車が実用化されていなくて飛脚がまだあった時代の、郵便屋さんの仕事のことを、児童向けの詩歌にした掌編です。動きと言葉の響きがかわいい詩でした。これは園児が声に出して読むための詩なのかなと思います。
 

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細雪(70)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その70を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 蛍狩りをしたあと、富豪とのお見合いが失敗に終わって、その帰郷のさなか、蛍籠になぜか蜘蛛が入り込んでいて、列車のなかで暴れだしてしまった。
 この物語ではほとんど出てこなかった軍人が、列車の中でシューベルトのセレナーデを歌いはじめてしまうという奇妙な事態が起きます。さらに姉妹たちもこれに反応をして一緒に歌ってみたのですが、見知らぬ軍人は顔も見せないまま、列車を降りていったのでした。幸子としては、お見合いが破談になった雪子を放りだして帰郷するのはなんとも酷薄なので、蒲郡の常盤館で一泊をして、姉妹たちでのんびり観光することにしたのでした。この物語は関西の幸子を中心に物語が展開するのですが、今回だけは、雪子が東京に帰ってゆくところが描かれました。
 雪子が一人で東京に帰っているときに、列車の中で、なにか見たことのある中年の男がこちらをじっと見つめてくる。よくよく考えると十年前の見合い相手だったことを思いだしたのでした。どうも相性が良くない相手だったので縁談を断ったというのを思いだして、あの時の自分の選択は正しかったなと、いうように考える雪子なのでした。次回に続きます。
 

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)