今日は、ドストエフスキーの「正直な泥棒」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
家政婦さんしか居ない家に一人で住んでいる主人公がある日、小さな部屋を貸すことになった。間借り人はアスターフィ・イヴァーヌイチという名の男で、彼はおとなしくて「なかなか世間馴れた男」で、ごく小さい部屋を借りて「仲よく暮らしはじめた」のでした。
ところが、そこに手品師のような泥棒がやってきて、みんなが見ている前で、「毛皮外套」を一瞬で盗んで行ってしまった……。
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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
追記 泥棒を追いかけてみたのですが、完全に逃げられてしまいます。3人は、どうしてあんなに簡単に外套を盗まれてしまったのか、いろいろ考えてみたり、話しあったりするのでした。そのうちに、間借り人のアスターフィ・イヴァーヌイチが、数年前に起きた、不思議な泥棒の話をしはじめるのでした。
ドストエフスキーの得意技は作中作で、物語の中に物語を二重三重に、積み重ねてしまうところにあると思います。
男はある日、貧しい男を自分の部屋になんとなく泊めてやった。しかしその一文無しの大酒飲みのエメーリャという居候がだんだん増長してしまって、どうしても長居させてやるわけにもゆかなくなった。働けといってもどうにも働けない。エメーリャはもはや門の前で寝そべるだけになったりした。
いくら説法しても、ずっと飲んでは寝そべるだけになってしまった。ある日、男はズボンが無くなってしまっておどろく。『おい、エメーリャ。お前なにか困ることがあって、おれの新しいズボンを取りゃしなかったかい』と聞いても、本人は盗っていないと言うのでした。それから青い顔になったり、部屋中のものを探したり、これからは働くと言ってみたりと、右往左往するのでした。いちど追い出してみたけれども、けっきょくは、また長居させてやることにした。やがて身体に無理がきて寝込んでしまう。終盤の、貧しい者の正直な告白に圧倒される名作でした。