ポラーノの広場 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「ポラーノの広場」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  この小説の主人公はレオーノ・キューストという男なのですが、ところどころ、宮沢賢治のそのまんまの性格が記されています。
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 俸給もほんのわずかでしたが、受持ちが標本の採集や整理で生れ付き好きなことでしたから、わたくしは毎日ずいぶん愉快にはたらきました。quomark end - ポラーノの広場 宮沢賢治
 
 というのは現実の賢治もまったくこの通りに生きていたように思います。
quomark03 - ポラーノの広場 宮沢賢治
  あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。quomark end - ポラーノの広場 宮沢賢治
 
 という記載は「春と修羅」の詩で出てきそうな雰囲気です。賢治は農学校の先生で、レオーノ・キューストは市役所の不思議な役人です。はじめ、どこかに行ってしまった山羊を探し歩いていてようやくこの迷子の山羊を見つけたあとすぐ「ポラーノの広場」という謎の場所について語られはじめます。行き方が謎で、そう簡単には見つからない場所にある広場なんです。それからみんなでこのポラーノの広場を探しにゆきます。
 ここからはネタバレなので未読の方は本文から先に読んだほうが良いと思うんですが……旅の途中で現れる、番号が一つ一つ記された花というのが、謎めいていて、すてきでした。
 美しい音色が聞こえてくると、ポラーノの広場はもうすぐなんです。この広場では楽隊もいて夏まつりをやっているんです。ゲーテの『ファウスト』に描かれた乱痴気騒ぎや、ハリウッド映画に出てくる拳闘シーンみたいなものもあって、どうも明るい場面もあります。それから夏の祭りに疲れて、レオーノ・キューストとファゼーロ少年は家に帰ります。
 そのあと奇妙な事件が起きるんです。ファゼーロがどこかに消えてしまったんです。これが……これはもう完全にネタバレなんですけど、いっけん失踪に見えて、出奔というか、じつはりっぱな出立だったという事態が後半で明らかになります。子どもにまで乱闘をしかけたデストゥパーゴは事業に失敗して信用を失うのでした。デストゥパーゴが保てなかったポラーノの広場を、自分たちではじめから作り直そうとする、終盤のこの文章の前後の記載が、とても印象に残りました。
 
「そうだ(略)そこへ夜行って歌えば、またそこで風を吸えば、もう元気がついてあしたの仕事中からだいっぱい勢がよくて面白いような、そういうポラーノの広場をぼくらはみんなでこさえよう。」
 
最後のほうで(原稿約一枚分空白)となっているのですが、いちぶ失われていても、みごとな完成度であるのに驚きました。
 

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明けましておめでとうございます。今年も近代の詩や小説を中心に再読をしてみて、また新たに未読の本を見つけてゆきたいと思います。
 
追記
いま現在、更新を数日間ほど休止しています。明かりの本ではこれまで数回ほど「文学壁紙」を配信してきました。宮沢賢治「春と修羅」のPC&タブレット用の文学壁紙をちょっと作りました。ダウンロード無料です。ご自由に個人利用してください。
 
追記2 空き時間に「海野十三敗戦日記」の装画を作り直しました。

イギリス海岸 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「イギリス海岸」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはあまたの童話文学をつくった宮沢賢治が、古里の花巻にある北上川の夏を描いたものです。農学校時代の生徒たちと宮沢賢治先生の、夏休みのことを記していて、穏やかな随筆なんですけれども、『銀河鉄道の夜』を彷彿とさせるような描写や、自然界の宇宙的な果てしなさが描きだされています。実話を描写する随筆なんですけれどもところどころ差し挟まれる空想が、まさに賢治の童話の核心部分と通底していてみごとなんです。本文にある「紡績工場」の一文とか、「グスコーブドリの伝記」の「てぐす工場」を連想させます。川辺の「救助係」という大人のことを記していて、子どもたちがおちいりそうな問題に関する賢治の考察も、印象に残りました。
 

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明けましておめでとうございます。近代の名作の再読をおもにやっていますが、今年もすてきな文学作品を見つけて読んでみたいと思います。

農学校歌 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「農学校歌」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは宮沢賢治が書いた、農学生のための校歌です。
 賢治ファンでももしかしたら読んだことがないかも、しれないです。ぼくは一部だけ知っていたのですけれども、全文ははじめて読みました。

 日は君臨しかがやきの
 太陽系はまひるなり
 

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※判読しやすいように、カナ文字をひらがなに書き換えました。 
 

風の又三郎 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「風の又三郎」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 明けましておめでとうございます、2021年の元旦です。
 物語の序盤に描きだされる、詩的な言葉づかいがみごとなんだと思います。新しい人が遠くからやって来る。子どもたちがどのように親しくなってゆくのか……賢治は農学校の先生で、青年たちとともに学校生活をいとなみながら、童話世界の構築に関して考えを深め、こういった物語を書いたように思いました。
  

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バキチの仕事 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「バキチの仕事」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ぼくはこれを、ちゃんと読んだのははじめてです。これじつは、短編小説なんですけれども、未完作品なんです。それでもずいぶん楽しめました。もしかすると、トルストイが書き起こした『おおきなかぶ』くらい、りっぱな仕事を、このあとバキチがやるのかもしれない、と思いました。
 

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或る農学生の日誌 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「或る農学生の日誌」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 宮沢賢治は農学校で野菜や穀物や果物をつくる仕事と、文学を書く仕事を両方ともやった作家で、今回は、農業と芸術について、農学生の視点から書いています。
 賢治の書き記した農業の文学は、世界中で読んでもらえるものだと思うんですけど、海外で人気があるのでしょうか。雨ニモマケズの外国語訳のことしか知らないです。宮沢賢治の作品は、農を中心にして見ると、印象が変わるように思いました。

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