子供役者の死 岡本椅堂

 今日は、岡本椅堂の「子供役者の死」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 江戸時代の六三郎という十六歳の狂言役者が、どうも死んでしまったという。六三郎は人気者の美青年なんですけれども、やくざの大親分のかこっている女性と恋愛に至ってしまったようなんです。
 本物のヤクザの親分なんです。だから六三郎はいろんな人に勧められて、いったんは泣く泣く別れ話を承諾したのですが、それで終わらなかった。いったん物語はこれで終わったな、というところからの、真相編というような急展開があってみごとな小説でした。ちょっとこれは……近代作家にしては迫真の物語展開で、すごいものを読んでしまったと思いました。
 

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追記  ここからは完全にネタバレなので未読の方はここを読まないで欲しいんですが、ヤクザ側によって私刑ではないんですが異様な奸策をめぐらした私設の裁判が行われてしまう、とうぜん六三郎はこれに気がつかなかった、それが遠因となって不幸が生じる……真相が明かされるところに意外性があって興味深かったです。
 

安吾武者修業 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「安吾武者修業 馬庭念流訪問記」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 塚原卜伝や百地三太夫が活躍する武芸もので有名な「立川文庫」のなかで、安吾が子どものころいちばん好きだった主人公は猿飛佐助だったそうです。安吾はそれで、脇役として登場する馬庭念流の剣術がおもしろかった、と言うんです。
 馬庭念流は古びた村に伝えられる剣術で、農民がこれを会得していて、なまはかな武者は、この流派に生きる農民を倒すことはできない。クワを持って働く、最強の農民がひっそり暮らす村がある、ということで安吾はこう記します。「まさに少年時代の私にとっても愛すべく、また、なつかしい夢の村であった。そして、夢の中でしか在りえない村だと思っていたのだ。」ところが……「実在の地名であるばかりでなく、馬庭念流が今も尚レンメンと伝えられ、家元樋口家も、その道場も、そして剣を使う農民たちも、昔と同じように今もそうであることを知って茫然としたのである。」
 調べてみるとwikipediaにも載っていました。おおむねユーモラスな視点で描きだされる、剣術の変貌の近現代史をじっさいに調べていった安吾の随筆なんですけれども、残心、のあたりの記載がなんだかかっこよかったです。「念流虎の巻」における「ソワカ」で終わる呪文の数々の紹介が奇妙でした。
 

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歌麿懺悔 邦枝完二

 今日は、邦枝完二の「歌麿懺悔」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これをぼくははじめて読んだんですが、江戸の戯作にそっくりな小説を、現代文で書いたもので、流暢に流れるような展開の、落語を現代小説にしたような、江戸の風流な作品でした。浅草の花街で遊び続けてきた、彫師で絵師の歌麿の話なんです。展開が西洋近代小説みたいにわかりやすくてみごとなんですけど、内容はまさに江戸の戯作なんです。歌麿の弟子の亀吉が、ある遊女にからかわれて逃げだしてきた。その話を聞いた師匠は、なにか謎めいた理由があって、その旧知の遊女「おちか」にすぐ逢いに行ってみる。するとどうしたことか、その場に、謎の男が現れて、仰天して歌麿はその場を逃げだしたんです。その謎の男というのが……つづきは本文でごらんください。

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追記
 ここからは完全にネタバレなので、本文を先に読んでもらいたいのですが、遊女と密会をはじめた瞬間に現れたのが、なぜか江戸の町奉行の刑事(というか同心)の渡辺金兵衛だったんです。主人公の歌麿は金兵衛にかつて逮捕されているんです。彫師で絵師の仕事をしていたころ、絶対に悪いことをしていない自信があったのに、虚をつくように逮捕されて罪人にされてしまった。五十日間の実刑判決で、歌麿は投獄されて、それはもう生きた心地がしない日々を送ったんです。
 三島由紀夫の金閣寺の元ネタがこの「歌麿懺悔」かも、と思うような描写もあるんですけど、とにかくこの邦枝完二の短編は流麗な展開で、読んでいてなかなか興味を引かれました。え? この謎はなんなの? というようなことが説明なしに次々たたみかけられて、それでいて筋を追いやすい分かりやすい構成でもあるので、読みやすくて魅力的な本でした。江戸の戯作ってこういうおもしろさなのかなあ、と思いました。

鯉 岡本綺堂

 今日は、岡本綺堂の「鯉」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 フランスの映画で、蛙を料理して食べるのを見たことがあるんです。日本ではほとんど食べないはずだと思っていたのですが、じつは東京でも大阪でもレストランでカエルを高級食材として扱う店があるんです。アジアでもカエルを食う地域があって、現代でも食べることが出来る。食べようと思えば日本でも食べに行ける。ますは悪食だ、というのを佐藤垢石の随筆で読んだことがあるのですが、鯉ももしかするといろいろ食べるのかもしれない……奇妙な怪談でした。ぜったいにありえない異変の一歩手前みたいに絶妙な、ぎりぎり実話に思えてくる話しで、岡本綺堂は終盤で話しを急展開させていて、軽妙な転結だと思いました。
  

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橋の下 山本周五郎

 今日は、山本周五郎の「橋の下」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 橋の下から、世間をぼんやりと観察する、男がいる。どうもかつては家柄のよい武士で、ある時を境に零落したらしい。老翁は、ぐうぜん訪れた若い侍に、このように述べます。
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  「この橋の下には、人間の生活はありません」と老人は静かに話を続けた、「こういうところで寝起きするようになってからの私は、死んだも同然です、橋の上とこことはまったく世界が違いますが、それでも私には、橋の上の出来事を見たり聞いたりすることはできます、世間の人たちは乞食に気をかねたりはしませんし、もうこちらにも…………quomark end - 橋の下 山本周五郎
  
 果たし合いのそののちの世界が描きだされます。現実には、劇的な場面よりも、そのあとの時間のほうが長いわけで、山本周五郎はその通常なら記されてこなかった「それから」を描いていました。
 

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