名なし指物語 新美南吉

 今日は、新美南吉の「名なし指物語」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 名なし指というのは、小指のとなりの薬指のことです。木ぐつ屋さんをやっているマタンおじいさんは、名なし指が無いんです。子どもたちはきっと、木靴を彫るときに誤って指をなくしてしまったんだろうと思っていて、おじいさんに質問してみました。すると、おじいさんは不思議な昔話をするのでした。
 りんご畑のりんごを盗む遊びをしていたマタン少年は…………
  

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追記  りんごを盗む遊びをしていたマタン少年は……チョキンチョキンとりんごの木を切るハサミ男に見つかってしまって、名なし指を無くしてしまったのでした。どこかへ行ってしまった名なし指は、いったいどうなったのか。その物語が不思議に展開してゆくのでした。最後は(未完)の二文字で終わる、なんだかすてきな物語でした。
 

脊の低いとがった男 小川未明

 今日は、小川未明の「脊の低いとがった男」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  鉛筆を削るための小刀をもらった太郎は、うれしくなって、いろんな紙や鉛筆をサクサク切って遊んでいました。学校の帰りに、妙な形をした桑の枝を見つけます。太郎は小刀で、この魔法の杖のような枝を切り取ろうとします。
 そこに突然、妙な男が現れます。背が低く頭が妙に尖っている男が、少年にぐっと近づいて来るのでした。太郎は小刀を取り出してにらみ合います。男は少年のことをよく知っていて、妙なことを語りかけます……。
 

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追記  ここからはネタバレなので、今から読み終える予定のかたはご注意ねがいます。「背のひくい尖った男」の正体は、新しい小刀で削って捨てられてしまった「小さな鉛筆」が、太郎をうらめしく思って夢の中に現れた、まぼろしの姿、なのでした。付喪神の物語を小説にした、小川未明らしさの冴える童話なのでした。
 

黄金鳥 鈴木三重吉

 今日は、黄金鳥の「鈴木三重吉」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは子ども向けの冒険譚なんです。西洋の騎士道物語と、古事記の世界を混ぜたような童話でした。
 大国主の神話にある、根の国のスサノオの家での蛇の試練にも似た、主人公ウイリイ少年の冒険物語なのでした。
 野蛮な王の命令に従って、謎の王女を探しにゆく旅をするウイリイなんですが……。鳥から王女に変身する、馬から王子に変身する、という変身譚の神話的な童話でした。
 

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自分で困った百姓 小川未明

 今日は、小川未明の「自分で困った百姓」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 童話作家が、働き者の農業者二人の暮らしぶりを描いた作品です。二人は仲よく暮らしていたのですが、なぜか乙さんの芋畑だけが不作になって、悩むことになった。それを知った甲さんが妙な行動に出るところから、不思議な展開になります。
  

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追記   ここからはネタバレかと思うんですが……ちょっとした出来心で悪いことをしてみると、友人の善意がまぶしくなってしまって、恥じいってしまうことになって、恥の意識が失敗を招いてしまうという、妙なオチの短い小説でした。

嘘 新美南吉

 今日は、新美南吉の「嘘」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは現実を活写したような筆致の、小学校が舞台の童話なんですが、なんだか不思議な事態が描かれていて、夢で良く見るのはこういう話しだなと思いながら読みすすめました。転校生がやって来て、この少年と交流するという既視感のある始まりかたで、はじめは温和な子どもの物語かと思っていたんですが、この転校生の「太郎左衛門」という江戸の家臣みたいな名前の謎の少年の家を主人公の「久助君」が訪れたあたりから、ずいぶんくらい、暗黒童話になっていって、妙に引きつけられました。江戸や中世文化の不気味さが眼前に迫ってくる感じです。いっけん深い闇のように見えて、それがどうも奥行きの無い張りぼてのような存在である。太郎左衛門はいっけん不思議なことを言うんですが、実体はどうもつまらない嘘が混じっているんです。
 太郎左衛門のことをよく見ていると、片方は美しい表情で、片方は陰険な表情になっている。二人の人間が左右バラバラに合体したような顔つきになっている。ふつうとちがう少年なのではないか、とか思う。後半は、これはまさに新美南吉の作品だ、と思う童話らしい展開でした。
  

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追記  ここからはネタバレなので、近日中に読み終える予定のかたは、ご注意ください。後半で、太郎左衛門は多くの級友を連れて、遠くまで鯨を見にいこうと誘うのですが、この鯨が出たというのが嘘だった。みんな知らないところで迷子になってしまって、夜も更けてきて泣いてしまった。真夜中に惑っていると、下手をすると大怪我をしてしまうかもしれない。ここで嘘で塗り固められたペテン師のような太郎左衛門くんはまた、ありえないようなことを言うんです。みんな暗闇の中で、この太郎左衛門の言うことを聞くしかなかった。最後の最後では、じつは太郎左衛門くんは嘘を言わずに、みんなが助かるように、親戚の家に立ち寄って電車で帰ることができたのでした。危なくなってきたら、嘘でだましたりはせずに、真面目なことを言って、みんな助かった、というオチで、終わってみれば牧歌的な童話なのでした。
 

シグナルとシグナレス 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「シグナルとシグナレス」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは宮沢賢治の童話で、花巻鉄道の信号機であるシグナルとシグナレスの物語です。
 

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追記  2人の会話がすてきで、終盤では、霧で世界がおおわれて、お互いの顔が見えなくなります。2人は夜明けを待ち、再び出逢えるように、祈りをささげるのでした。この一文が印象に残りました。「星はしずかにめぐって行きました。そこであの赤眼あかめのさそりが、せわしくまたたいて東から出て来、そしてサンタマリヤのお月さまが慈愛じあいにみちたとうと黄金きんのまなざしに、じっと二人を見ながら、西のまっくろの山におはいりになった時、シグナル、シグナレスの二人は、祈りにつかれてもうねむっていました。」さいごは二人の願いが叶って二人きりの美しい世界に至るんですが、それはどうも、地球ではなくって美しい銀河の中で、お互いに見つめあっているのでした。ふと気がつくと夢が覚めて「二人はまたほっと小さな息いきをしました。」という言葉で締めくくられる、清らかな童話でした。