ねずみさんの失敗 村山籌子

 今日は、村山籌子の「ねずみさんの失敗」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはもう完全に幼子に向けて書かれた童話で、大人に読み聞かせをしてもらう作品なのかと思います。
 ネズミが「あぶらあげ」の匂いをかぎつけてあわただしく走り回り、あわてて残りものをもらいに行こうとする、コミカルな描写が魅力の作品でした。
 

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追記  本作は1931年に発表されたねずみの物語です。ネズミの物語をちょっと調べてみると、1928年にミッキーマウスが作られて、1940年にトムとジェリーがつくられています。古くは室町時代に「鼠の草子」というのがあってこれが古典では有名なのかなと思います。
 

おじいさんのランプ 新美南吉

 今日は、新美南吉の「おじいさんのランプ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは小学生向けの児童小説で、ランプ屋さんをしていたおじいさんが、仕事をやめて、新しいことをはじめるところが描かれています。新美南吉と言えば美しい風景と動物の描写が特徴的なのかと思っていたのですが、こんかいは寂寥というのか、淋しさのことが中心的に描かれている童話に思いました。
 

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追記 児童が読むための本なので、後半はのどかな展開でした。ランプを売る仕事は辞めても、こんどは本屋さんとして長々と仕事をつづけたのでした。残された、使い道の無いランプのことが後半に記されてゆきました。慌ててランプ屋さんを辞めなくても、まだまだランプの需要というのはあったなあと、おじいさんはあとから思うのでした。ただ、一つの仕事をいったん停止して、新しい仕事を始めることの重要性を、おじいさんは説くのでした。前半はまどろっこしい展開で読みにくいのですが、読み終えてみると、新美南吉っぽさが表出する、魅力的な童話を読んだなあという気持ちになる作品でした。
 

年とったカシワの木のさいごの夢 アンデルセン

 今日は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの「年とったカシワの木のさいごの夢」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはアンデルセンの代表的な童話で、題名どおりカシワの木が主人公で、生き物たちと話しこんだり、眠ったり、祈ったりする物語です。クリスマスの美しい情景とともに描きだされる、自然界のいのちのありさまを記す童話でした。
 

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ぼくはこれをほとんど初見で読んで、アンデルセンの諸作の中でも、とくに優れた物語に思いました。子どもが読むための本なんですが、本作は大人が読める内容になっているように思いました。自然界の描写が現代人とは比べものにならないほど念入りに描かれていて、それが生きものの生老病死と繋がって記されるもので、秀逸な小説だというように思う作品でした。とくに前半に登場する、ほんの1日だけしか生きられないカゲロウと、数百年も生きるカシワの木の、心温まる会話劇がみごとであるように思いました。カゲロウの思いというのが、さいごのカシワの思いとも繋がっていて、作中の発言にあるように「わしの愛するものは、みんな、いっしょなのだ。小さいものも、大きいものも。みんな、いっしょなのだ」というところに印象深く響いてくる、クリスチャンの童話らしい童話というように思う作品でした。老いたアンデルセンがこの物語の中で生き生きと語っているような、童話に思いました。

雪の女王 アンデルセン

 今日は、アンデルセンの「雪の女王」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 
 これは小学生が読むための童話で、7つの短編が連なった、連作になっています。おもに「雪の女王」と少年カイと少女ゲルダ、それから粉々にくだけた悪魔の鏡のことが描きだされる物語です。
  

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
  
追記  少年カイの身体に、砕けた悪魔の鏡のかけらが入りこんでしまって、子どもたちを凍えさせる雪の女王とカイの2人が、結びついてしまい、カイとゲルダは離ればなれになって生きることになるのでした。ガラスのかけらをどうやってカイから取り出すのか……というところが終盤での物語の要点となっていました。
 悪そうなことをいつもしている山賊の娘が、ゲルダやカイと深く関わってゆくところが魅力的に思いました。やっと家にたどりついたのちの、終盤の10行がなんともみごとな、美しい童話でした。
 

善いことをした喜び 小川未明

 今日は、小川未明の「善いことをした喜び」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは幼子むけの物語で、大人が読むように作られていない、シンプルな作品なのですが、後半の三行のところでちょっとした善悪の対比の構成があって、不思議な読後感の童話でした。小川未明の童話と言えば「青い時計台」や「赤い蝋燭と人魚」がお勧めです。
 

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追記  お母さんとさよ子は、ごくわずかではあるのですが慈善の援助をして安らかな心もちになるのですが……ケチれるだけケチった人はけっきょくはお金を無駄にしてしまう、という展開でした。

人魚のひいさま アンデルセン

 今日は、アンデルセンの「人魚のひいさま」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはアンデルセンの中編小説で、人魚のお姫さまの6人姉妹の「ひいさま」たちのなかの、いちばん年下のひいさまが、15歳になってはじめて海の底から出て、人間たちの世界を見にゆく、幻想的な物語です。
 人魚は妖しい声で、人々を海の底にいざなうわけですが、ひいさまはこの美しい声を失って、土の上で生きるようになるのです。
 ひいさまは結婚さえできれば、死なないたましいを手に入れられて、王子様と幸福に生きられるはずなのですが……。
 

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 ここからはネタバレ注意なので、近日中に読み終える予定のかたは、先に本文を読むことをお勧めします。
 荒海で誕生日を祝っていた王子様が、海にのまれて遭難し、人魚のひいさまは海の中で気を失ってしまった王子様を助けて、大波を耐えしのぎ、砂の上にかえしてあげるのでした。
 王子様は、自分が誰に助けられたのかを知らぬまま、生きてゆくのですが、海の底のひいさまは、人間のことがよりいっそう好きになってゆくのでした。
 王子様との恋を成就するために、人魚のひいさまは魔女に頼んで、人間の世界で生きられる足をもらいにゆくのです。魔女に声をすべて奪われていて、なにも話すことが出来なくなったひいさまは、王子とふたたび出会って、ともに生きる未来を手に入れたのでした。
 王子様はこのひいさまと恋仲となって「ずっと一緒に居ようね」と約束するのに、家の事情やいろいろなことがあって結婚はできないのでした。そのうち王子様は、隣の国のものと政略結婚をすることになるのです。
 アンデルセンの童話には、結婚の寸前のところでこれが妨げられるという事態が描かれることが多いように思います。
 
 ここから、おばあさまが人魚のひいさまに、人の一生について語ってゆくのですが、人間の寿命や、そのあとにものこる人のたましいの話しが美しく、みごとな童話に思いました。 
 ひいさまのお姉さまたちは魔女に頼んで、死の呪いから放たれる短刀を手に入れ、これをひいさまに手渡すのでした。ひいさまは短刀を投げ捨てて、終わりの時を抱えつつ海へと帰り、空にただよういのちに生まれかわり、新しい日々へと向かうのでした。本文こうです。
quomark03 - 人魚のひいさま アンデルセン
 「どこへ、あたし、いくのでしょうね。」と、人魚のひいさまは、そのときたずねました。その声は、もうそこらにうきただよう気息いきのなかまらしく、人間の音楽にうつしようのない、たましいのひびきのようになっていました。quomark end - 人魚のひいさま アンデルセン
 
 この文の前後の「たましい」の描きかたにアンデルセンの童話ぜんたいの核心があるように思いました。「生まれてはじめての涙を目にかんじました。」という一文が印象に残りました。「人魚のひいさま」の全文はこちら。