いたずらっ子 アンデルセン

 今日は、アンデルセンの「いたずらっ子」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは幼子が読むための童話で、大人が読むことは想定されていないはずなんですが、じっさいに読んでみるとアンデルセンが天使のことを描くとこうなるのか、と唸るみごとな童話でした。とくに物語性は無い、すぐに終わる掌編なんですけれども、とにかく文体や描写がみごとな短編でした。
 

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でたらめ経 宇野浩二

 今日は、宇野浩二の「でたらめ経」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはなんだか不思議な童話で、お経を知らない「旅人」が「おばあさん」に乞われて、お経を知ったかぶりして「むにゃむにゃ」言っているうちに、でたらめなお経ができてしまった。「ネズミがいっぴきあらわれて、すぐに逃げてしまってどうのこうの」という、起きたことをそのまま写しとった言葉が、お経になってしまった。後日、この「でたらめ経」でムニャムニャやっていたおばあさんなんですが、この読経のさなかに偶然やって来た泥棒たちを気味悪がらせて撃退してしまったという、妙な物語で、こういう笑い話のような昔話がどうもじっさいにあったようで、はじめは単に響きが良いからということで使っていた言葉が、童歌のように、意味を持たない言葉のまま定着してしまって、みんながこの意味を持たない言葉を覚えてしまったうえ、これがなぜか機能してしまった。鳥の美しい鳴き声と、人間のことばのちょうど中間のような「でたらめ経」について、落語のような構成でうつしとった物語でした。
  

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名なし指物語 新美南吉

 今日は、新美南吉の「名なし指物語」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 名なし指というのは、小指のとなりの薬指のことです。木ぐつ屋さんをやっているマタンおじいさんは、名なし指が無いんです。子どもたちはきっと、木靴を彫るときに誤って指をなくしてしまったんだろうと思っていて、おじいさんに質問してみました。すると、おじいさんは不思議な昔話をするのでした。
 りんご畑のりんごを盗む遊びをしていたマタン少年は…………
  

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追記  りんごを盗む遊びをしていたマタン少年は……チョキンチョキンとりんごの木を切るハサミ男に見つかってしまって、名なし指を無くしてしまったのでした。どこかへ行ってしまった名なし指は、いったいどうなったのか。その物語が不思議に展開してゆくのでした。最後は(未完)の二文字で終わる、なんだかすてきな物語でした。
 

脊の低いとがった男 小川未明

 今日は、小川未明の「脊の低いとがった男」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  鉛筆を削るための小刀をもらった太郎は、うれしくなって、いろんな紙や鉛筆をサクサク切って遊んでいました。学校の帰りに、妙な形をした桑の枝を見つけます。太郎は小刀で、この魔法の杖のような枝を切り取ろうとします。
 そこに突然、妙な男が現れます。背が低く頭が妙に尖っている男が、少年にぐっと近づいて来るのでした。太郎は小刀を取り出してにらみ合います。男は少年のことをよく知っていて、妙なことを語りかけます……。
 

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追記  ここからはネタバレなので、今から読み終える予定のかたはご注意ねがいます。「背のひくい尖った男」の正体は、新しい小刀で削って捨てられてしまった「小さな鉛筆」が、太郎をうらめしく思って夢の中に現れた、まぼろしの姿、なのでした。付喪神の物語を小説にした、小川未明らしさの冴える童話なのでした。
 

黄金鳥 鈴木三重吉

 今日は、黄金鳥の「鈴木三重吉」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは子ども向けの冒険譚なんです。西洋の騎士道物語と、古事記の世界を混ぜたような童話でした。
 大国主の神話にある、根の国のスサノオの家での蛇の試練にも似た、主人公ウイリイ少年の冒険物語なのでした。
 野蛮な王の命令に従って、謎の王女を探しにゆく旅をするウイリイなんですが……。鳥から王女に変身する、馬から王子に変身する、という変身譚の神話的な童話でした。
 

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嘘 新美南吉

 今日は、新美南吉の「嘘」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは現実を活写したような筆致の、小学校が舞台の童話なんですが、なんだか不思議な事態が描かれていて、夢で良く見るのはこういう話しだなと思いながら読みすすめました。転校生がやって来て、この少年と交流するという既視感のある始まりかたで、はじめは温和な子どもの物語かと思っていたんですが、この転校生の「太郎左衛門」という江戸の家臣みたいな名前の謎の少年の家を主人公の「久助君」が訪れたあたりから、ずいぶんくらい、暗黒童話になっていって、妙に引きつけられました。江戸や中世文化の不気味さが眼前に迫ってくる感じです。いっけん深い闇のように見えて、それがどうも奥行きの無い張りぼてのような存在である。太郎左衛門はいっけん不思議なことを言うんですが、実体はどうもつまらない嘘が混じっているんです。
 太郎左衛門のことをよく見ていると、片方は美しい表情で、片方は陰険な表情になっている。二人の人間が左右バラバラに合体したような顔つきになっている。ふつうとちがう少年なのではないか、とか思う。後半は、これはまさに新美南吉の作品だ、と思う童話らしい展開でした。
  

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追記  ここからはネタバレなので、近日中に読み終える予定のかたは、ご注意ください。後半で、太郎左衛門は多くの級友を連れて、遠くまで鯨を見にいこうと誘うのですが、この鯨が出たというのが嘘だった。みんな知らないところで迷子になってしまって、夜も更けてきて泣いてしまった。真夜中に惑っていると、下手をすると大怪我をしてしまうかもしれない。ここで嘘で塗り固められたペテン師のような太郎左衛門くんはまた、ありえないようなことを言うんです。みんな暗闇の中で、この太郎左衛門の言うことを聞くしかなかった。最後の最後では、じつは太郎左衛門くんは嘘を言わずに、みんなが助かるように、親戚の家に立ち寄って電車で帰ることができたのでした。危なくなってきたら、嘘でだましたりはせずに、真面目なことを言って、みんな助かった、というオチで、終わってみれば牧歌的な童話なのでした。