晶子詩篇全集拾遺(66)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(66)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「暖炉」という詩がみごとに思いました。与謝野晶子にとって文学とは「みんな漂泊者で/新世界を探し/蒙昧を開拓し」うるもののことなのでは、と思いました。
  

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岸辺 蔵原伸二郎

 今日は、蔵原伸二郎の「岸辺」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 あるはずのものが不在になっているという描写が印象深い詩集でした。 蔵原は、萩原朔太郎の『青猫』を愛読し、猫の小説から創作を始めた作家なのだそうです。
萩原朔太郎の詩にはこういうのがあります。
quomark03 - 岸辺 蔵原伸二郎
 ああ このおほきな都會の夜にねむれるものは
 ただ一疋の青い猫のかげだ
 かなしい人類の歴史を語る猫のかげだ
 われの求めてやまざる幸福の青い影だ。quomark end - 岸辺 蔵原伸二郎
 

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わが散文詩 芥川龍之介

 今日は、芥川龍之介の「わが散文詩」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは不思議な短編集で、六つの独立した掌編が並んでいます。筋のまったく無い、風景画か風刺画のようなごく短い作品なんです。「椎の木」という作品で芭蕉の文学性を論じています。季語を含む俳句の様式を借りて、この散文詩を書いたように思いました。
 芥川龍之介の文学論として、谷崎宛てのするどい文学批評に「話の筋というものが芸術的なものかどうか、非常に疑問だ」「筋の面白さが作品そのものの芸術的価値を強めるということはない」ということを述べているんです。句集や歌集には筋が無いわけで、筋の無い文学というのはそれはありえる、と思います。ただ芥川龍之介の著名な作品は、筋も重大になっているようにも思います。芥川が尊敬する夏目漱石の作品は、たしかに真ん中の章からいきなり読みはじめても、じゅうぶん読み応えがあるんです。いっぽうで谷崎作品は順々に読むとドラマが盛りあがってゆく。ただのストーリーものでは映画にならない、という話しをしていた映画監督のことを連想しました。
  

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野分(8) 夏目漱石

 今日は、夏目漱石の「野分」その(8)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 蛸薬師という謎の存在について、ぼくは気になったことがいちども無かったのですけれども、漱石がこの蛸寺のことをちょっと書いていたので、はじめて調べてみました。病におちいった母が蛸を食べたいというので、それを手に入れてきた。だが僧が蛸を食うとはどういうことだと問いつめられた。ところがそれがありがたい経典に変化したという……。分かるような分からないような逸話を発見しました。
 高柳君と道也先生でちがうのは、世間の事細かな事象に敏感であるかどうか、など、さまざまにあるんです。それを漱石が比較して書いてゆきます。道也先生は「かえりみるのいとま」がなくて本業だけに意識が集中しているんです。いっぽうで高柳君は、あらゆることを知ろうとしすぎている。
 今作の「野分」では、嵐や台風はとくに生じないのですが、やはり風が作中にあまたに描写されます。ここが漱石の散文詩なんだと思って読むこともできます。これを鑑賞するのも面白さのひとつだと思いました。それから漱石の病の描写は漱石の実体験も混じっているはずで、迫力のある描写に思いました。
「野分」がどういう小説か知りたいけれども、全文を読む時間がない場合は、とりあえずこの第八話だけを読んでみると、漱石文学がどういうものか、あるていど分かると思います。
 

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知らない人 太宰治

 今日は、太宰治の「知らない人」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 病床で偶然に読んだ、追悼記のいくつかについて太宰治が記しています。最後の一文が奇妙で、意味内容を知りたいと思ったのですが、この作中で語られている人物について調べてみると、1938年のバイアス湾上陸作戦に従軍している。1939年5月11日、日本史上でも有数の失策と言われるノモンハン事件が起きている。この先の六年間がもっとも小説家にとってつらい、特高と発禁と貧困と空爆の時代です。そういう時代に太宰治が小説を書いていました。この数十年ほど前に正岡子規も従軍したすぐあとに体調を崩して『病牀六尺』を記してゆくようになったのですが、どうも作中のK君も従軍後の病に苦しんだようなんです。この随筆のはじめに、新聞広告に載っている「高價の藥品」を試してみた太宰治なんですけれども、最新の薬が効くというのはどうもウソですねえということを太宰治が冗談のように描いている。そうして終盤に、K君のように優れた人間的な人物が死んだ理由を太宰治が知るんです。さいごに奇跡について太宰治は記しているのですけれども、なんだかものごとの必然について暗喩しているように思いました。
 

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二筋の血 石川啄木

 今日は、石川啄木の「二筋の血」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 勉強ができずに泣いてばかりいた幼いころの石川啄木の思い出が記されます。
 学ぶことの楽しさを教えてくれた、藤野さんという幼年期の友だちがいて……これはほんとうにあったことなんだろうなあ、と思いました。美しい子供時代の描写に思いました。
 後半で記される二人の死について考えたこと、貧しい老婆の話、それから幼い友を悼む描写に、平熱の文学とは異なる感動がありました。そのあとにこの初版本の編者が記す〔生前未発表〕という記載に衝撃を受けました。子どもたちに読ませるために書かれたような、やさしい童話のような文体でありながら、生前の啄木はこれを発表しないことに決めていた。原稿を封印した理由はなんだろう、啄木にとって文学はどういう意味を持っていたのだろうか、と思いました。
  

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