道 石川啄木

 今日は、石川啄木の「道」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 啄木と言えば詩人であり歌人なので、小説をあまり書かないんだろうと思っていたのですが、これは石川啄木の中編小説で、読んでみると、なにかドキュメンタリー映像のような、作品でした。5人の教師の、山道の移動と、隣村での教育の会議と、その帰り道を描いた作品でした。間延びした小説なのですが、近代文学や明治末期の教育界の難点や閉塞感を、物語全体で描きだしていて、追体験させられる作品でした。
    

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追記  三十年間も教師をやって独身のままの男性教師が、不倫の醜聞の噂を立てられて真剣に悩んでしまっている、その涙ながらの訴えを聞いてなんだか滑稽で笑ってしまっている雀部という男がどうも偽の噂をたてた犯人ではないかという疑いを持つ女教師と、主人公の多吉という教師は、老いた教師たちのことを考えつつ、長い山道を往復し、自分の人生の行く末について空想を、するのでした。

虚子君へ 夏目漱石

 今日は、夏目漱石の「虚子君へ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは俳人の高浜虚子にたいして、近代の芝居の問題点について論じている随筆です。
 漱石は、芝居の筋が「のっぺらぼう」だったり「残酷」であると感じてしまうこともあり、どうも楽しめない、と記します。「色彩などははなはだ不調和」で「厭にな」ることが多い。
 いっぽうで美しくて楽しめるところはある。服飾の色彩を楽しめたり「体操術」や、役作りや演技が良いと思うところもある……。
 

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追記  夏目漱石は長い間ずっと先生をしていたので、小説でも随筆でも手紙でも、なにか先生の要素というのが色濃いように思います。近代でも現代でも漱石が読まれる主因のひとつに、この「先生の言っていることを聞いてみたい」という要素があるのでは、と思いました。学校や大学を卒業すると、もう先生というのは見当たらないところで、漱石がそこに居るのでよく読まれた、という構造があるのでは、と思いました。
 

細雪(90)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その90を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 物語の終盤に関する内容を書いていますので、こんご細雪の全巻を通読する予定がある方は、本文の第一章から読んで、以下の文章は読後に読むことをお薦めします。
 自由闊達な妙子には、これまでいろんな不幸が襲いかかってきて、啓坊の悪影響もあって、妙子はほとんど死にかけてしまったわけなのですが、ついにいろいろなところが快復して、やっと第一章のころの妙子の魅力が復活してきたのでした。
 当時の時代の不幸が襲いかかる小説なんだろうと思っていたのですが、ここに来てだんだん良い展開になりつつあって、いよいよ終盤に近づいてきたなと思って読んでいます。作家は既に敗戦後に到達しているのですが、作中の時代ではまだ戦争が激化する場面ですので、不穏な気配はいろいろあるのでした。啓坊の渡航計画もこの後の5年間の歴史を思うとずいぶん不味い内容なのでした。
 それから妙子が、不倫と窃盗をやっていた恋人啓坊に対して、どのように思っているのか、そのことが明確に書き記されていて、ちょっと驚く内容なのでした。
 3女の雪子が、ふだんはまったくものを言わない人柄であるのに、4女の妙子に対しては、しっかり大事なことを話すところも印象に残りました。
 人生の岐路について、いよいよ真剣に話しあわねばならず、やむを得ぬ姉妹喧嘩が起きてしまって、妙子が泣いてしまう場面もありました。本文こうでした。
quomark03 - 細雪(90)谷崎潤一郎
  妙子の眼にはいつの間にか涙が潸然さんぜんと浮かんでいた。それでも妙子は、相変らず無表情な顔つきをして、頬を流れる涙を意識していないかの如くであったが、やがて、突然立ち上ると、バタン! と、部屋じゅうが震動するほど荒々しくドーアを締めて廊下へ出て行った。quomark end - 細雪(90)谷崎潤一郎
 
 あと11回でこの長編文学は完結します。
 

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(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
  
追記  妙子が不幸になった原因について案じている雪子と幸子なのでした。「自分達にも一半の責任があることを思い、出来るだけ温かい愛情を以て、この変り種の妹の心を和げるように」という記載があって、姉妹の妙子に対する心情描写が印象に残る章でした。
 

手帳より 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「手帳より」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは、宮沢賢治の手帳に書き記された文学的メモや、詩の断片を電子書籍化したものです。判読しやすい、意味が理解しやすい箇所のみを収録してみました。
 紫式部もこの名を愛用した「末摘花」に関するメモや、おそらくウィリアム・ジョージ・アストンの「文語文典」に関するメモもありました。
 

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追記 「明かりの本」ではお正月期間のため、更新を数日間ほどお休みします。再開は1月7日からです。

オツベルと象 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「オツベルと象」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 白象の脱出を描きだす、宮沢賢治の代表的な童話です。「ありがとう。よく来てくれて、ほんとに僕はうれしいよ。」という言葉がなんだか印象に残る児童文学です。
 

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
  
明けましておめでとうございます。今年も、近代の作品を読み進め、童話や物語の魅力を再発見してゆきたいと思います。
 
追記  最後の一行に空白が残っているのは、宮沢賢治の本作への逡巡があって、偶然にもこのような形になって出現した箇所なのでは、というように思いました。原文の手書き文字の画像を見ていないので、正誤は不明です。
 

牧場の音楽師 北條民雄

 今日は、北條民雄の「牧場の音楽師」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはほんの数ページで未完となってしまった北条民雄の創作の、没後に公開された断片作品です。北条民雄は闘病中にあまたの作品を書いていますが、未完作もいくつか残っているのでした。
 これは随筆に近い闘病の描写で、作中では宮澤賢治の詩の一節を描きだし、アコーディオンとバイオリンを手にした病棟の仲間と語らいます。
 

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追記  この未完作は「いのちの初夜」のような、あるいは「セロ弾きとゴーシュ」のオマージュ作品のような、人間の物語が描きだされるはずの草稿だったのでは、と思いました。
 途中で引用している賢治の詩の言葉なのですが、これは宮沢賢治全集のどの本にも掲載されていないものでした。具体的には、賢治のいろんな詩を、リミックスした翻案、のようになっています。読んでいてこれはまさに賢治の詩だなと思って、詳細にどの箇所を引用したか調べてみると、「春と修羅」第二集のなかからいろんな言葉を抜き書きして詩のかたちにしたもの、でした。