群集の人 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「群集の人」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 仕事を退いて「銀座裏のアパアト」に引き越した斑猫という男が登場します。銀座裏という、最初の環境設定がみごとなんだなと思いました。二十世紀前半の銀座裏。大都会なのか田舎なのかよくわからない。映画のセットの裏側に迷い込んだみたいな、空間だったのかもしれないです。
 近代文学の魅力は、文字で異なる時代の都市空間を観察出来る、というところもあると思うんです。詳しい人なら平安時代の住まいの様相を克明にイメージ出来ると思うんですけど、普通はちょっと資料でも無いと分からない。近代なら現代と地続きなので、予備知識が無くてもいきなり読んでみてすんなり認識しやすいと思います。
 中盤から、不思議な夜の徘徊の場面が描かれます。赤い煉瓦の洋館が立ち現れてきたあたりから、妖しい気配が漂い始めます。
 主人公は老いた独身者で……なんだか「コーネルの箱」を連想しました。オチに蛇足みたいな一行があって、このちょっとした後日談みたいなはみ出した感じがなんだが好きだなあと思いました。
 

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