今日は、江戸川乱歩の「押絵と旅する男」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
これは乱歩の独特な怪奇小説で……化物は出てこないんですが、なんだか神秘的な怪異が語られつづける小説でした。蜃気楼を見るために旅をしていた「私」が人気のまったくない列車の中で「西洋の魔術師の様な風采の男」と出逢って、男が持ち運んでいた謎の絵画を見せてもらう。その絵画の中に、持ち主の男にそっくりな人間が描かれていて……この絵画の謎について、男が語ってゆくという物語でした。老いない少女と、老いてゆく男たちという対比が、なんだかカフカかポーの純文学のような迫力を感じさせるように思いました。
なにか妙な体験をしたあとに小説を読んでいて、物語の登場人物とほとんど同じことをしている人間が現実にいることにはじめて気が付く……ということがあると思うんですが、そういう物語の作用そのものを、絵画に閉じ込められた謎の人間として描いているように思えました。こんな怪しい小説は、昔も今もあまり無いのでは、と思う小説でした。
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