今日は、田中貢太郎の「胡氏」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
これは不思議な伝奇で、田中貢太郎といえば怪談の名手だと思うんですが、今回のは怖さのない怪異を記していて、ちょっと日本昔話のような神秘的なもののけ譚でした。
狐の嫁入り、というと天気雨や燐火のことをいうんですけど、十六世紀あたりの中国は河北省の直隷に、胡という男がいて、富豪のすむ家を訪れた。これが賢いので家庭教師になってもらった。ところが胡は人ではなく狐で、これを目撃した主人は、胡の求めた、娘との求婚を断ってしまう。そこから争いが起きる、狐の大群が押しよせて、奇妙なことが起きる。妖しい美しい物語でした……。
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追記 日本のお見合い結婚の歴史はじつは武将の政略結婚からはじまった、というようなことをこのまえ知ったんですが、この「胡氏」ではまさに、争いを治めるにあたって、平和な結婚を実現する、という展開がありました。みごとな奇譚でした。