今日は、太宰治の「知らない人」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
病床で偶然に読んだ、追悼記のいくつかについて太宰治が記しています。最後の一文が奇妙で、意味内容を知りたいと思ったのですが、この作中で語られている人物について調べてみると、1938年のバイアス湾上陸作戦に従軍している。1939年5月11日、日本史上でも有数の失策と言われるノモンハン事件が起きている。この先の六年間がもっとも小説家にとってつらい、特高と発禁と貧困と空爆の時代です。そういう時代に太宰治が小説を書いていました。この数十年ほど前に正岡子規も従軍したすぐあとに体調を崩して『病牀六尺』を記してゆくようになったのですが、どうも作中のK君も従軍後の病に苦しんだようなんです。この随筆のはじめに、新聞広告に載っている「高價の藥品」を試してみた太宰治なんですけれども、最新の薬が効くというのはどうもウソですねえということを太宰治が冗談のように描いている。そうして終盤に、K君のように優れた人間的な人物が死んだ理由を太宰治が知るんです。さいごに奇跡について太宰治は記しているのですけれども、なんだかものごとの必然について暗喩しているように思いました。
装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約3秒)