器楽的幻覚 梶井基次郎

 今日は、梶井基次郎の「器楽的幻覚」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 フランスから来た若いピアニストが「豊富な数の楽曲を冬にかけて演奏して行ったことがあった」。
 梶井基次郎の代表作と言えば『檸檬』で、本屋の美しさと沈鬱とを描きだした作品なのですが、その梶井基次郎が音楽の演奏会を描いた作品です……。梶井基次郎が音楽のことを描くとこうなるのかという衝撃がありました。
 ただ心地のよい音色にひたった、というところで終わらず現代美術の鑑賞体験のような不可思議な感覚について記していて、ジョン・ケージの『4分33秒』を連想させる世界が描きだされます。梶井基次郎は数十年後にこういった作品が現れうる可能性について作中で思考しているように思いました。音の愉楽のみを描きだすのではなく、するどい批評の一文もあり短編とは思えない迫力がある小説でした。
 「私の耳は不意に音楽を離れて、息を凝らして聴き入っている会場の空気に触れたりした。」という文章の前後の展開がみごとで、印象に残りました。
 

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