メリイクリスマス 太宰治

 今日は、太宰治の「メリイクリスマス」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 太宰治といえば「女生徒」がおすすめです。
 この物語の序盤……雑踏の中で、ある女性から話しかけられる、誰だったかを思いだそうとして、正体が明らかになる場面があります。本文こうです。
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 緑色の帽子をかぶり、帽子のひもあごで結び、真赤なレンコオトを着ている。見る見るそのひとは若くなって、まるで十二、三の少女になり、私の思い出の中の或る影像とぴったり重って来た。quomark end - メリイクリスマス 太宰治
 
 この箇所が、物語のはじまりの部分だと思うんですが、みごとな美文に思いました。
 太宰治はユダについて独自の物語を編んでいましたが、キリストについてはどのように考えていたのだろうか、と思いました。
  

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追記  太宰治は、戦時中の大衆や文壇からの評価が高かっただけではなく、戦中の軍部からもいちおうの許可を得て作品を書きつづけた希有な作家で、さらに戦後にもあまたに愛読されました。驚くほど広範囲な読者に読まれた作家だと思います。いかなる状況でも恋を描いたりしていて、今回も中盤にそれが記されています。今回は戦時中に広島で生きた母と残された娘のことが描かれるんです。太宰治は、20世紀後半の中国大陸でもっとも読まれた日本人作家なんです。中国人は太宰治をよく読んだ、という視点から、太宰治の戦中戦後作品を読んでみると、世界文学として広まっていった近代の作品……ということが見えてくるように、思います。アメリカ文化や戦後すぐの社会についてどう描いたんだろうか、というのもちょっと見える作品に思いました。