今日は、伊藤左千夫の「奈々子」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
伊藤左千夫は正岡子規と深い関わりのあった歌人です。ぼくは伊藤左千夫の小説を読むのは初めてなんですが、序盤は朗らかな親子の物語で、遊びの描写が生き生きとしてすてきで引き込まれました。起承転結がみごとな家族小説で……読了後にもういちど読み直してみると、金魚の不幸が大人たちの不注意さを暗示していて、物語上で重大な伏線になっているのだと思いました。後半は厳しい状況が描かれ、いったい何が起きたのか事態の検証が行われるんです。長らく栄えるのは、こういう人々なのではと思いました。明治の終わりに書かれた小説です。
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