今日は、太宰治の「女生徒」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
主人公が朝めざめるところからはじまって、夜に眠るところで終わる物語で、学校帰りの「とうとう道傍の草原に、ペタリと坐ってしまった」とこから帰宅した家の中の描写が印象に残りました。ぼくは「新ちゃん」のことが語られはじめたところから、太宰治の物語世界に惹き付けられました。
昼すぎから夜になって星が見えるようになってくるにしたがって、神秘的な童話、のような感性にかたむいてゆくのが美しい物語展開に思いました。
けっこう謎めいた箇所があって「きっと、誰かが間違っている。わるいのは」……という箇所の「あなた」という言葉の示している先が、どうも作中にひとつも存在していなかったりするんです。「世間というのは、君じゃないか」という一文が太宰治の文学の中でとても有名だと思うんですけど、こんかいの作中に四回しるされている「あなた」を巡ることばの示しているものの先の存在感が、なんとも不思議で、終盤が魅力的な小説でした。
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