廃墟から 原民喜

 今日は、原民喜の「廃墟から」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは原民喜「夏の花」の、その後の場面を描いた文学作品なんです。原民喜の「夏の花」における冒頭の詩は、 聖書の言葉からのものなんです。「ソロモンの雅歌」第八章十四節にこれが記されています。この雅歌を読んでゆくと、花の描写が印象深いんです。
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  もろもろの花は地にあらわれ、鳥のさえずる時がきた。山ばとの声がわれわれの地に聞える。
いちじくの木はその実を結び、ぶどうの木は花咲いて、かんばしいにおいを放つ。わが愛する者よ、わが麗しき者よ、立って、出てきなさい。quomark end - 廃墟から 原民喜
 
文語訳はこうなっています。
quomark03 - 廃墟から 原民喜
  もろもろの花は地にあらはれ 鳥のさへづる時すでに至り 班鳩の聲われらの地にきこゆ
無花果樹はその青き果を赤らめ 葡萄の樹は花さきてその馨はしき香氣をはなつ わが佳耦よ わが美しき者よ 起て出きたれquomark end - 廃墟から 原民喜
  
 この「雅歌」を、原爆の直撃を受けて生き残った原民喜は始めから終わりまで読んでいてこれを引用しつつ、自分たちの生をどのように描くのかを考えて、物語を編んでいったのが「夏の花」です。
 平和に毎日を生きられることの重大さ、というのを感じずにはいられない記述があまたにありました。爆風や原爆症によって広島で亡くなった人々が記されてゆきます。本文こうです。
quomark03 - 廃墟から 原民喜
  「惜しかったね、戦争は終ったのに……」と声をかけた。もう少し早く戦争が終ってくれたら——この言葉は、その後みんなで繰返された。quomark end - 廃墟から 原民喜
 
 戦後すぐの貧困による死者は日本中に多く、その困難が、さまざまに記されていました。この本の、終わりの三行の記載に唸りました。見知らぬ人に知己のおもかげをなぜだか重ねてしまって、つい挨拶をしてしまう。その事実を淡々と記していて、これが文学としての深い印象を残しているように思いました。
  

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