今日は、海野十三の「一坪館」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
戦争が終わったあと、源一という少年が、銀座で一坪の土地をもらいうけた、というところから物語が始まる小説です。
海野十三は、あらゆる建物が焼け跡になって無惨に壊れているなか、人びとがふつうに生きているところを描きだしています。近代にSF小説を多数書いた作家の、焼け跡と少年の描写が印象に残りました。本文こうです。
人影一つ見えない。みんなどこへ行ってしまったのだろうか。
「ほほう。ぼくが今ここに店を出したら、ぼくは戦災後、復興の一番のりをするわけだ。よし今日中に店を出そう」
銀座復興の店開きの第一番を、少年がひきうけるのはゆかいではないかと源一はいよいようれしくなった。
作中、花屋をやって花を売るのが良いだろうという案を出した老翁の描写がみごとでした。海野十三の敗戦日記と並べて読むと学ぶところがあるように思いました。実際に見たものと空想を混ぜて描写することの、力強さを感じる作品に思いました。
銀座も、バラック建ながらだいぶん復興した。
進駐軍の将校や、兵士たちがいきいきした表情で、ぶつかりそうな人通りをわけて歩いていく。
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