こころ 夏目漱石(中巻)

 今日は、夏目漱石の「こころ」中巻を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 漱石は明治元年に1歳で、明治晩年に45歳で、「こころ」を書いたのがその2年後で、それから数年後に寿命を迎えています。当時の平均寿命は43歳くらいなんです。漱石は今で言うと80歳くらいで亡くなった、という感じなんだと思います。漱石は明治時代をずーっと生きていって、明治天皇が亡くなったあとはもう老境という感じだったのではと思います。昔読んだときは、ほとんど気にならなかったのですけれども、この「こころ」では、「先生」が亡くなる、父が亡くなる、そういうことが描かれているのですけれども、明治天皇が亡くなるという話もここに記されているんです。登場人物にとって重大な人が亡くなる、ということが描かれています。
 父と古い家と新しい人がどうなるのか、重要人物が亡くなるときにどういうことが起きるか。この2つが物語の軸にあると思います。これはドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』でも描かれたことですけど、ずいぶん異なる考えで描かれていると思いました。
 「こころ」では父は長く生きてから寿命を迎える、いわば平和な大往生なんです。
 「カラマーゾフ」の父は強欲で敵が多く殺されて死んでしまう。高僧ゾシマ長老が亡くなるところに立ちあった主人公アリョーシャ青年は、その死があまりにあっけなく腐臭を伴って聖性を感じさせないことで思想上の激しい動揺にさらされます。ゾシマの願いどおりにアリョーシャは俗世間に帰るわけで、永眠者の思いを継ぐにはどうすべきか、ということが物語の重大な要素になっていると思います。
 現実の漱石は、正岡子規の没後すぐに生前子規がいちばんだいじにしていた「ほととぎす」に原稿を送ってくれと子規の弟子に依頼されて、それで作家になった。漱石は子規の遺志を継いでいるんです。「こころ」では、先生と父と天皇の死という3つが描かれます。主人公「私」は永眠者のどういう意志を重大視しているのか……というのに注目をして読んでみました。
 漱石は自身の重い病についても「こころ」の数年前に考えていたわけで、いわば作者自身の最晩年にかんしても小説に反映させているように、自分には思えます。極端に長すぎる先生の遺書というのが作中に載せられてゆくことになるんですけれども、これがそのまんま小説になっています。「先生」から数百ページくらいの遺書が「私」あてにとどいた、読んでみたら、そのまんま小説だった、この小説を書いたのは漱石で、だったらこれは漱石の、文学的な遺書……のようなものとして読めるはずで、そうなると主人公「私」というのはのちの時代に生まれてくる新しい読者、を代表している人物ということになるのでは、と思いました。先生はある事件に関わっています。先生の悔恨、その謎というのがだんだん現れてくる小説なんです。
  

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