夢 和辻哲郎

 今日は、和辻哲郎の「夢」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 和辻哲郎が、夜に見る夢の話しを書いています。夏目漱石の「夢十夜」を連想しました。賢人に夢の話しをする、という奇妙な話しから随筆がはじまります。
 「夢」というのだからいっけん幻想的な随筆が展開するのかと思っていたら、第二次大戦の空襲の惨禍を、和辻哲郎がほんとうに予知夢のように見てしまって、数年後に本物の空襲を受けて、悪夢が現実になってしまった、という話しからはじまったのです……が、そのあと戦後になって「シカゴで共和党の大統領候補者指名大会が開かれ、新聞にデカデカとその記事がのる」ようになったころ、つまり1952年ごろに、就寝中に見た、不思議な夢のことを、和辻哲郎が書いています。
 作中、夢の中では和辻哲郎が、選挙のための大会の宣言をするために演説しなければならなくなったんです。夢の中で、アメリカと日本がごっちゃになってしまっている。これは夢であっても自分は見たことがないです。ぼくはなぜか、監獄の中にいる夢や、逃走中の夢や、鳥のように中空を移動をする夢はよく見るんですけど、政治の夢はほぼまったく見たことがないです。
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 大会の宣言演説はテレヴィジョンで全世界に報道される。それはまことに花やかな役目であるかも知れないが…………quomark end - 夢 和辻哲郎
 
 ここから先の、ちょっとマヌケな旅路の描写がおもしろかったです。日本の古い習俗の描写と、とうとつな大統領選挙の様子とのミスマッチさが絶妙でした。勝手に解釈を試みてみると、戦中と戦後で、心理状態がガラッと変わった。その世相の奇妙さが、夢の中に立ち現れてきているんだと思いました。
 ところで、本文と関係が無いんですけど、つい先日アメリカ初の女性副大統領が誕生して、在米アジア人にとっては旧政権の退陣は非常に重要な問題で、今回の選挙結果は望まれていた事態が、辛くも実現に至ったのだと思いました。ちょっとwikipediaで調べてみるとアメリカの歴代の副大統領は将来的に大統領になる可能性もあるんですね。
 和辻哲郎が2020年に小説かエッセーを書いたら、どういうことを書くんだろうか……と思いました。もうなんというか、漱石の「夢十夜」の、第十一夜なんじゃないかと、思うような、不思議な随筆でした。
 

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