恐ろしい東京 夢野久作

 今日は、夢野久作の「恐ろしい東京」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  これは夢野久作にしては珍しく、実話っぽい、ごくふつうの随筆でした。近代小説の魅力の1つに、誰一人たどりつけない百年前の都市である東京を、文章で観察できて、ちょっと絵本の中の世界のような幻視的な都市空間を垣間見られる、というのがあると思いました。たんに未踏の地へのノスタルジアなんですけど。現代の廃墟とはまるで異なる魅力を感じる、森に包まれた東京が描写されるのでした。夢野久作は東京のど真ん中の銀座を描きだしています。
 

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約3秒)
 
追記   中盤から終盤にかけて、田舎に帰る「筆者」の心境と状況が語られるのですが、その中で奇妙な挿話がある。不幸話をして「畳の上に両手を突いて男泣きに泣く」人間が現れて、やむなく「先生」は一筆書いてその男に渡すのを「筆者」は目撃します。後日になって「某クラブの連中」にこの話をすると、それは詐欺師が嘘を言っているのだと指摘されて笑われる。
 じっさいには、笑った連中が嘘つきなのか、泣いている男が嘘つきなのかは、ちょっとどちらに判定するか迷うところなんです……。夢野久作は、あざ笑った連中との縁を切る決意を描写するのでした。ぼくはたぶん、実話っぽい話だと思って読んだんですが、謎の短編でした。本文とちっとも関係が無いんですが、京都には縁切り神社というのがあるんです。何回か立ち寄ったことがあります。