今日は、寺田寅彦の「方則について」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
寺田寅彦は百年前の物理学者なのに、わかりやすい言葉でものごとを論じてくれて、読みやすいところがあるのが特徴だと思うんですが、今回のは対象者が科学者にたいしてのものなのか、難しい文体で記されていました。カオス理論に近いことを論じていると思うんですが、宇宙や自然界は鴻大すぎるので、自然の世界で起きる法則を人間が読み解けないのでは、という問題提議でした。
引力は実際に存在していて、月の引力は海に影響を与えるわけだし、太陽の引力で地球が回転して昼夜が生じるし、春夏秋冬ができてくる。寺田寅彦は、もし引力が遠方にたいしてもっと強力な作用をもたらした場合は、どういうものになっただろうかという架空の世界を想定するんですけどSF的でした。
寺田寅彦はいっけん些細な問題のはずの、ものの長さを数字で規定することのむずかしさを論じています。一尺の竹というように記したとしても、翌日にはその竹の長さはすこし変化している。一定のものというのは存在しない、ということを述べています。
測定や方則にも、そういった細部のズレが必ず存在しているわけで、それを考えた上で、理論や統計や方則というのをとらえてみるようにと、寺田寅彦は述べています。本文こうです。
平たく云えば、方則というものを一種の平均の近似的の云い表わしと考えるのである。そうすれば方則というものはよほど現実的な意味を持つようになって来る。このような区別は甚だつまらぬ事のようであるが、自分はあながちそうとは思わない。
また、だからと言って方則や科学的考察がまったく役に立たないわけではなく「現在の知識の限界を」知り「方則を疑う前には先ずこれを熟知し適用の限界を窮めなければならぬ。その上で疑う事は止むを得ない」と記していて、天動説から地動説へと、科学的考察の土台もガラッと変化したことがあることを例示し、科学的な方則、あるいは道徳的な方則が、大きく変化してゆくことは今後もあるはずであることを記していました。
今回はポアンカレや「フックの法則」や「クーロンの法則」について論じていました。
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