惑い(7) 伊藤野枝

 今日は、伊藤野枝の「惑い」その7を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この小説は逸子の家のことだけを描いてきたんですけれども、谷は逸子の夫であるにもかかわらずこの二者の交流はあまり記されてきませんでした。
 谷との会話が、全体の70%あたりからやっと記されてゆきます。二者の言い分は噛みあわない状態です。この小説には奇妙なところがあって、家族4人が居て同じところに住んできたはずなんですけれども、赤ん坊とのかかわりも単簡に記され、一人一人の生き方がそうとうかけ離れているんです。伊藤野枝の独立心が、このようにばらばらで一緒に生きるという、奇妙な人間関係に投影されているように思いました。
 老いた母親が息子を叱る言葉に考えさせられました。本文こうです。
『お前は懐手をしながら勝手なことばかし云っているんだもの、ちっとは、自分で手を出して御覧、それで世間が通ってゆくものだかどうか。』
 伊藤野枝は時代があと30年ちがっているだけで確実に長生きしたはずで、のちにはもっと面白い本を書いたのだろうと思いました。
 

0000 - 惑い(7) 伊藤野枝

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