細雪(2) 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その2を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 おもな登場人物は……蒔岡まきおか4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)です。
 これまでの展開は、三女の雪子がどのようなひとと結婚をするのか、というのから物語が始まっています。
 谷崎と言えば、美や乱調を描く作家なので、でたらめに読んでみてもきっと楽しいんだろうと思って読みはじめたんですけど、なんだか緊張する内容なんです。小説や物語は、自分と関係の無い他人のことをのんびり観てゆくことができるから、緊張しないで済むはずなんですけど、ホラー映画や大長編文学だとどうもそうはゆかないようです。他人ごとのはずなんですけれども、なんだか緊張して読んでいます。谷崎の筆致に迫力があるから、父の亡くなったのちの四姉妹がどうなるのか、妙に気になってくるのでした。良いところの家柄というのをぼくは体感的にまったく知らないのでそこは共感しにくいんですけど、なんだか衰えてゆく事態に対応しなくちゃいけない、という心理に注目して読んでゆきました。
 父が亡くなるまえに、父のもってきた縁談で結婚をした幸子はそれほど問題なく暮らしているようなんですけれども、雪子はころあいがあわずに、父の晩期に婚約者を紹介してもらえなかった。父の意思を継いでくれたはずの貞之助はどうも上手い縁談を持ちこめなかった。 
 雪子は、古い家柄のぜいたくさを忘れられずに縁談で行き詰まっているところなんです。
 細雪は漱石の文学と似たところがあって、武家や貴族が廃止されていって、結婚や恋愛の形態が変化をした、という感じのことも描いているように思います。本作では、主人公の蒔岡家は十数年以上むかしの大正時代に豪商のお金持ちで良い家柄だったそうです。作中で脇役の男性がこう述べるのが印象に残りました。
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  蒔岡さんと私とでは身分違いでもあり、薄給の身の上で、そう云う結構なお嬢様に来て戴けるものとも思えないし、来て戴いても貧乏所帯で苦労をさせるのがお気の毒のようだけれども、万一縁があって結婚出来るならこんな有難いことはないquomark end - 細雪(2) 谷崎潤一郎
 
 こういう縁談がどうも上手く進まず、雪子はちょっと時代に取り残されているような感じがあるんです。これは書かれた年代も舞台も十五年戦争が悪くなってゆくころで五年後には豊かさが世間から排除されてゆく時代なんです。ぼんやりとした理由で、幸福が遠のいてしまっているけれども、なんとか豊かに生きようとしている。そこは現代に読んでも響いてくるところに思いました。
 

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「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。

■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)