細雪(44)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その44を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 渋谷に引っ越した鶴子と雪子の家の暮らしぶりは、今まであまり記されてこなかったんです。
 日本中で疎開することが多かった時代に、あわただしく引っ越していった鶴子(姉さん)の、引越後の姿が描かれるのは、時代を反映した描写のように思いました。これはまだ空襲が起きる数年前の話しで……「戦争の被害が大きいのに、戦争の被害が見えない」という奇妙な描写になっているように思います。特別高等警察や帰還兵やGHQといったさまざまな集団が間近にいる状態で全篇が記されていて、そのなかで日本らしく、静かな小説を書いているというところに、迫力を感じる文学作品に思いました。
 鶴子の家では、幸子の家と異なっていて、厳しい躾をしていて幼子の梅子は、控えめで恐がりな性格になっているようです。本文こうです。
quomark03 - 細雪(44)谷崎潤一郎
  幸子は兄弟の味を知らない悦子が、歳下の女の児を珍しがるところから、こう云う機会に従妹いとこと親しませようと云う考もあったので、それも旅館を避けた理由の一つだったのであるが、生憎梅子はひどいお母さん児で、雪子にさえもなつかない……quomark end - 細雪(44)谷崎潤一郎
 
 家族の交流のために、姉の鶴子が幸子たちを、料理屋に連れてゆく描写があって、ふたたび東京の観光のことが記されています。そろそろ幸子は関西に帰る予定なんです。次回につづきます。
   

0000 - 細雪(44)谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。『中巻三十五』は通し番号で『六十四』と表記しています。
 
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)