ゲーテ詩集(60)

 今日は「ゲーテ詩集」その60を配信します。縦書き表示で読めますよ。
 今回の詩では、ゲーテの中期から後期にかけての思念が垣間見られる描写があるように思いました。今回は、むつかしい状況が描きだされていて、貧者の嘆きと共に記される「天」という言葉が印象に残りました。
 

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嘘 新美南吉

 今日は、新美南吉の「嘘」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは現実を活写したような筆致の、小学校が舞台の童話なんですが、なんだか不思議な事態が描かれていて、夢で良く見るのはこういう話しだなと思いながら読みすすめました。転校生がやって来て、この少年と交流するという既視感のある始まりかたで、はじめは温和な子どもの物語かと思っていたんですが、この転校生の「太郎左衛門」という江戸の家臣みたいな名前の謎の少年の家を主人公の「久助君」が訪れたあたりから、ずいぶんくらい、暗黒童話になっていって、妙に引きつけられました。江戸や中世文化の不気味さが眼前に迫ってくる感じです。いっけん深い闇のように見えて、それがどうも奥行きの無い張りぼてのような存在である。太郎左衛門はいっけん不思議なことを言うんですが、実体はどうもつまらない嘘が混じっているんです。
 太郎左衛門のことをよく見ていると、片方は美しい表情で、片方は陰険な表情になっている。二人の人間が左右バラバラに合体したような顔つきになっている。ふつうとちがう少年なのではないか、とか思う。後半は、これはまさに新美南吉の作品だ、と思う童話らしい展開でした。
  

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追記  ここからはネタバレなので、近日中に読み終える予定のかたは、ご注意ください。後半で、太郎左衛門は多くの級友を連れて、遠くまで鯨を見にいこうと誘うのですが、この鯨が出たというのが嘘だった。みんな知らないところで迷子になってしまって、夜も更けてきて泣いてしまった。真夜中に惑っていると、下手をすると大怪我をしてしまうかもしれない。ここで嘘で塗り固められたペテン師のような太郎左衛門くんはまた、ありえないようなことを言うんです。みんな暗闇の中で、この太郎左衛門の言うことを聞くしかなかった。最後の最後では、じつは太郎左衛門くんは嘘を言わずに、みんなが助かるように、親戚の家に立ち寄って電車で帰ることができたのでした。危なくなってきたら、嘘でだましたりはせずに、真面目なことを言って、みんな助かった、というオチで、終わってみれば牧歌的な童話なのでした。
 

自分と詩との関係 高村光太郎

 今日は、高村光太郎の「自分と詩との関係」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 彫刻家で詩人の高村光太郎が、詩作する意味を記している随筆です。彫刻に物語性を持たせることを否定したく、本業の彫刻から、文学性を剥ぎ取ろうとして、詩を書いたというのがなんだか独特で驚く内容でした。硬いものを彫りつづけて、柔らかいものを表現する彫刻という仕事が、文と思索に多分な影響を与えているように思いました。自分の本業の芸術創作が「ほんとに物になるのは」晩期になってからだろうと、高村光太郎は記すのでした。

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細雪(36)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その36を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 洪水は終わりつつあるんですが、なぜだか妙子(こいさん)と貞之助が帰ってこない。妙子の恋人である奥畑は彼女を探しにゆくのでした。
 不安な状況でも、風雅な暮らしをしていたことを思いだしてみたり、隣家の幸福な気配が垣間見られたりしているうちに、妹の妙子をちゃんと奥畑と結婚させてあげようというように、姉の幸子は思うのでした。戦時中に男が不在になった世界で、一家を守る役割の幸子こそが、どうもこの物語の中心にあるようです。
 ずいぶん時間が経ってから、やっと泥まみれの貞之助と妙子が帰ってきた。妙子はどうも大変な思いをしたようで、家に帰りついてすぐに泣いてしまった。
「………えらい目に遭うたけど、板倉に助けて貰うてん」
ということで、いったいどういうことになったのかまだ分からないんですが、次章に続きます。
  

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当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。『中巻三十五』は通し番号で『六十四』と表記しています。
 
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 
 

黄金機会 若松賤子

 今日は、若松賤子の「黄金機会」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 本に記されていたgolden opportunityについて、母親に質問している女の子の話で、読んでいて普通におもしろい母子の会話からはじまり、それから「私」の誕生日に「絶好の機会」が訪れるんです。これは10代の女性に向けて書かれた小説だと思います。おじいさんが誕生日の祝いに、びっくりするような高価な金貨をくれる。これがあれば、しっかり勉強することもできる。「私」はいろいろ思案して……。
  

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追記  はじめての財産を手に入れて、浮かれてしまって、使えない楽器を買ってしまって、大金を無駄にしてしまう幼子なんでした。お金は得ることだけじゃなくて、どう使うかも重要な問題になるんだなあ、とか思いました。レンブラントが描いた「放蕩息子の帰還」を連想させる、なんだかリアルで気になる物語でした。手もとに残った、ほんのわずかな一銭銅貨の、すてきな使いかたを見つけて喜んでいる「私」の姿がけなげで印象に残りました。ぐうぜんまのあたりにした貧しい人に寄付をした少女なんですが、このちょっとした善意が、妙に上手く展開して、おばあさんは一銭でロウソクを買って、そのおかげでちょうど忘れかけていた手紙が手に入って、そこから生活費と借金の問題が解決していったという、何の役にも立たないはずのごく少ない一銭銅貨が、ちゃんと人の役に立ったということがあとから明らかになるのでした。

思案の敗北 太宰治

 今日は、太宰治の「思案の敗北」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
quomark03 - 思案の敗北 太宰治
  ほんとうのことは、あの世で言え、という言葉がある。まことの愛の実証は、この世の、人と人との仲に於いては、ついに、それと指定できないものなのかもしれない。quomark end - 思案の敗北 太宰治
 
 という一文から始まる、太宰の5頁の私小説です。未来の事態であるとか、言いえないことであるとか、略すしかない部分であるとか、沈黙するしかない言葉で表現ができない箇所がどうしてもあって、言葉の背後に記されないことがらが数多く眠っていて、言語はそれと共に機能している、という哲学上の議論があるんです。太宰の言語論も今回ちょっと記されていました。饒舌な太宰は、妙なことも書くのでした。ダンディズムとダンテは関連性があるんじゃないかとか、哲学者ジャン=ジャック・ルソーの告白における被害妄想の箇所について批判していたり、ゲッセマネの祈りについてや、聖書や西洋思想についていろんなことを書いていました。
 
 太宰は後半で、友人の不幸と、自己の恥ずかしさについて書くのでした。太宰は最後のほうで「ことしの春、妻とわかれて、私は、それから、いちど恋をした」と書くんですが、じっさいには妻と別れてないというこの、太宰の大きな嘘のところが、これが妙に印象に残りました。ルソーの沈黙と哲学に対峙する、「思案の敗北」にいたる小説家の饒舌さが立ち現れてくる私小説に思いました。
  

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