今日は、小川未明の「おかしいまちがい」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
近代文学の特徴のひとつに、貧乏の描写が現代より色濃い、というのがあると思います。こんな記述があります。
夜は寺の縁の下にガタガタと寒さに震えながら、寝たこともあります。
旅をして、危険な貧乏におちいる男が書かれています。本文と関係ないんですけど漱石はイギリスに留学して、そこでなんだかおかしくなってしまったらしく、その留学を終えてからすぐに処女作を書きはじめたという実話があるらしいのですけど、旅をすると、違う世界が見えるだけじゃなくって、ちがう自分というのが現れてくるんじゃなかろうか、と思いました。
赤い蝋燭と人魚 小川未明
今日は、小川未明の「赤い蝋燭と人魚」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
今回から童話を何作か読んでゆきたいと思います。これは小川未明の代表作で、西洋の人魚姫から着想を得て書いたのかと思ったのですが、読んでみると、日本の伝統的な「野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり」といったような竹取物語とよく似ている物語のはじまりかたで、日本昔話に出てくるような不気味な展開もあって、自然界と近代文明の相剋も描かれていて、公害を描いた文学と、どこか通底しているところがあるように思いました。作中に書きあらわされた「悲しい」という言葉が印象に残りました。
がちょうのたんじょうび 新美南吉
東京に生れて 芥川龍之介
今日は、芥川龍之介の「東京に生れて」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
芥川龍之介がおおよそ100年前の東京の、風景について語っているのですけれども、今の東京とぜんぜんまったくちがう街のことが描かれています。けれどもなんだか、関東全域とか、現代の東日本全体のことと比べてみると、なんだか今の時代と通底しているところがあるように思いました。
古い東京は、このさき二度と未来永劫出現しない都市なわけで、ずいぶん不思議な風物をちょっと見せてもらったような気がしました。芥川龍之介って、ふだんはこの随筆に書いているような話しを、友だちとしていたのかもなあ、と思う作品でした。
春と修羅 宮沢賢治
ダゴン HPラヴクラフト
今日は、HPラヴクラフトの「ダゴン」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
近代のホラー小説の最高峰というかもっとも有名な、ラヴクラフトの暗黒神話が記されているんですけれども、今回、ラヴクラフトが参照元とした美術のことが明記されています。ギュスターヴ・ドレの絵画みたような暗黒大陸を見た、という男の物語です。題名にもなっている「ダゴン」というのは旧約にも記されている、古代の神だそうです。wikipediaのPTSDのページと同時に読んでみました。