赤い牛 田中貢太郎

 今日は、田中貢太郎の「赤い牛」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 現実とは思えないことをかつて父から聞いた、そのことについて、作家の田中貢太郎が語っています。父の性格から言って、意図的なウソは含まれていないわけで、そうなるとこの赤い牛がとつぜん現れた、という話は、現実にはいったいどういう状態だったのか。分からないまま終わって、謎が謎のまま提示されているのがなんだかおもしろいと思いました。
   

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夜店ばなし 久保田万太郎

 今日は、久保田万太郎の「夜店ばなし」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 コロナ禍が起きた現代では、夜店の屋台の飯を食って歩く人もずいぶん減ってしまった。時代がちがう本は、今の悩みと異なる世界を描いているので、これがなんだかありがたいように思いました……。
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 すしやの屋台、天麩羅やの屋台、おでんやの屋台。……夜店へ出るそれぞれの屋台が誓願寺の地中から一トしきりそこにつづいた。quomark end - 夜店ばなし 久保田万太郎

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追記
ところで作中に記されていた東京の蝙蝠。これこの、コウモリというのがいま日本で減っているようです。

ネクタイとステッキ 佐藤春夫

 今日は、佐藤春夫の「ネクタイとステッキ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 現代人で、機能性を逸脱した洒脱なステッキをついている若者は見たことが無いんですが、日傘はふつうに存在します。ファッションショーにはたしてステッキは存在するのか、調べてみると、海外ではかなりメジャーなアイテムのようで、いろんな写真が出てきました。日本にはほとんど無いようです。ただ、近代小説にはステッキを持っている登場人物が描かれているんです。漱石の『彼岸過迄』では洋杖が出てきます。たぶん昔は荒れた場をどんどん歩きまわることの象徴がステッキだったわけで、ステッキにワンダーを感じた。今ではインスタ映えする写真が100年前のステッキの意味を継承しているんだろう、と思いました。

 

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どんぐり 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「どんぐり」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 寺田寅彦と言えば、動物や自然界について物理学の知見を用いながら論理的に推論を深めてゆく、知的な随筆が魅力だと思うのですが、今回は、家族とのことを記していて、子の妻と似ているところを述べてゆきます。ちょうど夏目漱石が小説家になる寸前で、正岡子規が闘病の文学を記しているころ、寺田寅彦はこのころの妻との思い出を記しています。寺田寅彦のことは、ここに詳しく記してありました。どうしてこんなに理系で知的な人が、文学的作品を書きつづけていったんだろうか、ということの謎が、この随筆ですこし解けたように思いました。文芸誌ホトトギスに掲載された随筆です。
  

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日本の全ての方々へ マハトマ・ガンジー

 今日は、マハトマ・ガンジーの「日本の全ての方々へ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは十五年戦争中の近代日本文学を読む人にとっては、必読の書になると思うんですが、「非暴力不服従」を説き「剣の教義」も記したガンジーが、日中戦争と日米戦争に関して批判を行っています。この時期の大日本帝国軍がいったい何を行っていたのかを、理解できる本になっています。
 作中でガンジーはエドウィン・アーノルドの日本研究「ヤポニカ」で読み解かれた日本人の良いところを語り、それからナチスと表だって手を組んだことや、帝国の非道についての批判を記しています。「あなた方の冷酷さを模倣しない」というガンジーの言葉が印象に残りました。こののち数十年経って、ガンジーの思想を深く学び公民権運動を成功に導いたキング牧師と、同時代のマルコムXの人生について想起させられる内容でした。厳しい条件下では、ミイラ取りがミイラになりかねない、そこでどう考えるべきかということを、ガンジーの本を通して学んでいったのだと思います。wikipediaの1942年の年表と並べて読みました。
 

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にぎり飯 永井荷風

 今日は、永井荷風の「にぎり飯」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 戦争中の焼け跡を歩く佐藤という男。家族を失った男女2人が出会って、炊き出しのにぎり飯をもらい、のちに再会して恋愛が生じている……ということが永井荷風の精妙な描写で自然に描きだされていて、すごい小説でした。
 1944年の戦時中とかは、このあとどういうことになるのかさっぱり分からないわけで、それが事後に見ると、オチが分かっているわけで、そうするとその渦中の時代になにが重大だったのかが見えてくるわけで、永井荷風が戦後数年たったあとに、戦中のことを書く、というのがなんだが興味深かったです。オチが分かると、渦中の時代の意味が見えてくるというのか、文学は結末が判ってからでも、かえって興味深い作品があるように、思いました。安産の祈願をするシーンがほんの少し挿入されているんです。永井荷風はそこに感動をもたらそうとは思っていないはずなんですけれども、鎮魂と慰霊の描写がどうも、感慨深かったです。
 

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